『闇の壱与伝説 -女王塚殺人事件-』は1989年にPC88用として、HOT・Bから発売されました。
この時期の作品らしい雰囲気の、バランスの良い作品でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。
商品紹介・・・
邪馬台国の伝説をベースにしたホラーAVGです。
島根県の八雲で全ての血液が抜き取られた死体が発見され、京都の荒神塚と天狗山でも少女の惨殺死体が発見されました。
主人公の霊能探偵・不動修羅は警視庁かの郷田警部から、この事件の捜査を依頼されます。
<感想>
元々はPC88用のゲームなのですが、上記商品紹介を引用させてもらったように、現在はプロジェクトEGGでも発売されています。
当時は年齢制限というものはなかったのですが、現在の基準などから考えた場合、HOT・Bの過去作の中には、アダルトゲームに属するであろう作品も幾つかあります。
本作にもアダルトな内容のシーンがありますし、またストーリーのジャンルや雰囲気的な観点からも、過去作からのイメージは継承されていると言えるのでしょう。
もっとも、本作の場合は大分薄めに描写されていますので、今だったら精々15禁とか、その程度の扱いになるように思います。
まぁ、例えるなら鍵とか型月とかもエロゲの後に一般作を出していますが、そういう感じの位置付けとなりますかね。
さて、本作を製作したHOT・Bの過去作というと、一方で重厚な優れたストーリー重視の作品もあったのですが、どっちかと言うと完成度よりインパクト重視の作品が多いイメージがあり、長所と短所のハッキリした凸凹した印象があります。
もし私と同じように、そのイメージが強い人だと、本作をプレイした時に少し驚くというか、意外にしっかりと纏まっていて面白いぞという印象になるのかなと。
もっとも、本作のあらすじは上記のとおりであり、密教や伝奇をベースにしたホラータッチの作品となります。
題材的には90年代前半には激減したジャンルのように思うのですが、80年代のこの頃にはわりと旬のジャンルだったような・・・
ゲームだけでなく、漫画とかでも熱い作品が生まれていたように思いますし。
そのため、題材的には決して珍しいものではなく、上記のように旬で素晴らしい作品が生まれてきていた時期だけに、他媒体で同系統の凄い作品に触れていたような人だと、少しインパクトが劣るとか、本作に薄いような印象を抱いたかなと。
まぁ結論としては、しっかりと良く纏まった良いシナリオなのだけれど、過去作に時折見られるような強烈なインパクトはなかったとなるのでしょう。
それと、萌え重視というと語弊が生じてしまうかもしれませんが、最近のノベルゲーというのは、シナリオ重視と呼ばれるものであっても、その前にキャラ重視を前提にしており、ヒロインとの恋愛の上にシナリオが成り立ち展開されています。
その顕著な構造が、個別ルートや個別ENDなのでしょうね。
そういう最近の作品と比べると本作は、多くのキャラが登場しつつ、何よりもストーリーの展開が最優先されていまして。
言い方を変えれば、キャラが従的な扱いなのです。
それは当時の伝奇とかSFとかの一般小説的とも言えるのですが、まぁこの辺は究極的には好みの問題なのでしょうね。
だから私個人は楽しめたものの、今のキャラ重視の作品を当然のものとして考える人がプレイすると、キャラが薄く感じてしまうかもしれませんね。
<ゲームデザイン>
同ブランドの作品に対して、個人的にはグラフィックやシナリオは良いとしても、ゲームデザイン部分で難がある印象がありました。
本作は基本的にコマンド選択式のADVであり、コマンド選択部分に関しては、ストーリー重視作品らしさを考慮した、適度な難易度になっていたように思います。
そこにプラスアルファとして、例えばストーリーの展開に応じてコマンド選択式の戦闘が加わります。
また本作には、もう一つ特徴がありました。
本作のテキスト中には、時々《 》で囲まれた文章が登場します。
これをメモすることで、違う人に、そのメモした内容を聞くことができ、そのシステムがゲーム性を向上させています。
まぁ必ずしも斬新なシステムでもなかったし、作り込まれているわけでもなかったので、長所と呼べるほどの特徴でもないのかもしれませんが、これまでゲーム部分が弱点になることの多かったブランドだけに、その弱点が克服された点は大きかったように思います。
<評価>
以上のように、全体的には同ブランドの過去作の雰囲気を継承しつつ、派手なインパクトや特徴は少し失われたものの、逆に全体のバランスは良くなり完成度は増しました。
したがって、過去作のような長短の凸凹はなくなり、全ての面で一定以上の配慮や工夫のなされた作品となったのです。
強烈な特徴に欠けるということで、私の普段の基準からは良作止まりとなるのですが、
ゲーム全体の、つまりはトータルでの作品作り、完成度を重視する人ならば、より一層楽しめるように思いますね。
Last Updated on 2025-05-18 by katan
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