徒花異譚

2020

『徒花異譚』は2020年にWIN用として、ANIPLEX.EXEから発売されました。

大石竜子&海原望による、おとぎ話をモチーフにした作品になります。
当初の期待値を超えた、良い意味で驚かされた作品でした。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・
少女が気づくと、そこはどことも知れない暗い森の中だった。
突如として現れた怪物に襲われた彼女は、筆を刀のように操ってものを斬る、謎の少年に救われる。
彼は「黒筆」(くろふで)と名乗り、慣れた声音で少女を「白姫」(しろひめ)と呼んだ。
しかし少女には、少年の顔にも呼ばれた名にも覚えはない。
というのも、彼女の頭からはすべての記憶が失われていたからだ。
黒筆いわく、ここは絵草子の中の世界である「徒花郷」(あだばなきょう)。
ありとあらゆる「おはなし」は、夢と同じように、どれほど深く溺れていても、覚めてしまえば何も残らない。
故にこの世界は、徒花──咲いても実を結ばない花に喩えて名づけられたのだという。
そしてふたりの役目は、ここにあるお伽話の世界を渡り歩き、話の筋に歪みが生まれていないかを見張ることらしい。
操り人形のように頼りない風情の白姫は、言われるがまま、手渡された一冊を開いた。
表題は――「花さかじいさん」。
虫食いが進み、朽ちる寸前のようなその絵草子が開かれると、紙面から眩い光が放たれ、
少年少女はお伽話の世界へと連れ去られていった――。

<感想>

大石竜子&海原望のコンビは、ライアーソフトで、フェアリーテイルシリーズという、おとぎ話をモチーフにした作品を作っています。

ここ数年でエロゲを始めた人には新鮮に見えたかもしれませんが、おとぎ話をモチーフにしたエロゲというのは、80年代からわりとよく見かけたジャンルでもあり、私には新鮮には見えませんでした。
もちろん、過去の作品を超えてくれれば、プレイするこちらとしては何の問題もありません。
しかし、フェアリーテイルシリーズに関していうならば、単にエロゲにおとぎ話を落とし込んだだけであり、独自性を感じることのできない作品という印象であり、少なくともストーリーに関しては、私の評価は低いものでした。

まぁ、同時期におとぎ話を題材にしつつも、独自の世界観に昇華した作品があったので、余計にも、このシリーズの弱さが浮き彫りになってしまった感は否めませんけどね。

さて、とあるエロゲがあり、その制作陣が、似たような方向性の一般作を作るとなると、しかも価格も下がるとなると、どうしても過去作からエロとボリュームだけが減った、面白みが更に減った作品になると考えがちです。
私もその一人で、あのシリーズからエロとボリュームが減ったら、更につまらなくなるのかなと思い、それで本作への興味も低かったのです。

ただ本作は、当初はSteamからの発売であり、低価格であるために比較的手を出しやすいこと、大石竜子さんのグラフィックは独特で、魅力的に感じていることから、プレイしてみた次第です。

というわけで、あまり期待せずに始めた本作ですが、これが当初の予想に反してとても面白かったわけでして。
確かに、総プレイ時間は減っていますが、その減った時間というのは、過去作の余計な部分が削ぎ落されたものであり、本作の方が作品として洗練されたように思います。

フェアリーテイルシリーズのエロゲ的な部分、それはHシーンがあるかないかというだけでなく、
もっと根本的な作品の構造部分を指します。
冗長になりがちな今のエロゲの構造というものが、私には凄く邪魔に見えていて、フェアリーテイルシリーズにおいても、その魅力を半減させていたのです。
しかし本作の場合、一般作として発売することにより、その今のエロゲのしがらみというか、上記シリーズの問題点から解放されたという印象を受けました。
不味い部分がなくなり、美味しいところだけ残ったのだから、そりゃ全体としても美味しいとなるのは、当然といえば当然なのでしょう。

グラフィックについても、その絵柄という意味では、大石竜子さんは以前から唯一無二の存在だったところ、その魅力は本作でも健在です。
あまりエロゲ向きっぽくはなかったので、本作のような一般作の方が力が発揮できるでしょうね。
絵柄以外の部分についても、その構図とか画面の使い方とかが、過去作よりも洗練されていて、グラフィック全体が良くなったと思います。

<評価>

普段から訪れてくれている方だと気付いたかもしれませんが、私は普段、洗練されたという言葉はほとんど使いません。
便利な言葉ではあるのですが、主観に依存する言葉なので、誤魔化したような表現になりがちですから。
ただ、この作品に関しては、端的にこの言葉が思い浮かんだのです。
過去作と同系統の作品で、ボリュームもエロもなくなったけど、それ以上に、これまで足枷になっていたものが削ぎ落され、魅力的な部分だけを残して出てきたわけですから、これを洗練されたと言わずに何と言うのかって感じなのです。

まぁ、小粒な作品であることにかわりはないですし、過去作と同系統の作品ということもあり、新鮮さやもう一つ突き抜けた何かもないということで、名作には及ばず、総合では良作とします。

とはいえ、小難しい理屈を抜きに、本作は良かったです。
このコンビで、もう少し独自色を出した作品が出てくるようなら、十分名作になると思いますので、次回作は今から非常に楽しみですね。

ランク:B(良作)

Last Updated on 2024-08-08 by katan

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