『Dr. STOP!』は1992年にPC98用として、アリスソフトから発売されました。
アダルトゲームのグラフィック偏重時代に抗うかのように、あえてアリスがストーリー重視で勝負した、意欲的な作品でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。
主人公は医者で、勤め先の病院には院長の娘で看護師でもある、主人公の婚約者もいます。
もっとも、主人公は婚約者の目を気にせず女の子の患者にちょっかいをかけたり、愉快な病人らと戯れてばかり。
ということで、序盤はコメディータッチで明るく楽しく進むものの、その後、同僚への疑惑について調べることになり、終盤はシリアスなサスペンスものになっていきます。
<グラフィック>
俺が楽しめれば良いのだというのも、一つの真理ではあるのでしょう。
しかし、その作品の持つ本当の価値を知るためには、その作品が発売された当時の状況を理解することは不可欠であり、かかる理解を抜きに語っても検討外れとなってしまいます。
本作が発売されたのは92年の4月でした。
90年頃まではPC88のゲームも多かったのですが、91年にはほとんどのアダルトゲームもPC98での発売となりました。
大雑把に説明すると、PC88はデジタル8色の200ラインだったのに対し、PC98ではアナログ16色の400ラインで描くことができるようになりました。
つまり、グラフィックでやれることが大幅に拡がったわけですね。
そうなると、当然のことながら、美麗なグラフィックを特徴にした作品が増えます。
WIN95の出始めの時期なんかもそうでしたよね。
グラフィックの可能性が拡がると、グラフィックを特徴とした作品が増えるのです。
だからこの時期にも、CG枚数何枚だとか、アニメーションがあるだとか、そういう点も含めてグラフィックを前面に押し出す作品が増え、それが当時の一つの流行ないし傾向と言えたのでしょう。
ところで、ある時期の傾向を分析する場合には、その時期の代表作を検討するのは定石のように思います。
しかし、アダルトゲームに関しては、その年の代表作は一般的な傾向から離れた異端なケースも多いわけでして。
特に厄介なのがアリスソフトの存在で、PC98時代のアリスソフトは西の横綱と呼ばれる程に成長していくのですが、決して流行・王道路線を作り上げる存在ではありませんでした。
今何かが流行っているとしたら、他所ならその流行に乗ろうとするでしょう。
しかし当時のアリスの場合、他所が作っているならうちでは作らない、あえて違う道を進もうってブランドでした。
ある意味、アリスの作った作品の反対方向の作品が当時の流行とも言えたわけで、その辺がちょっと特殊なのです。
本作の場合、上記のようにグラフィックを特徴とした、グラフィック偏重の作品が増えた時期でもありました。
だからこそ、グラフィック偏重の作品が増えているからこそ、逆にグラフィックを極力控えめにして、その代わりにテキストの分量を増やして、ストーリーで勝負しようとして作られたのが本作なのです。
何も知らずに今になって本作をプレイすると、テキストがだけが画面に表示される場面も多いことから、なんだこれは、古い作品だからCG少ないし、もの足りないなと感じる人もいるかもしれません。
しかし、上記のような本作の発売された経緯を理解すれば、また違った印象にもなるのではないでしょうか。
私はグラフィックの優れたゲームは好きですが、だからといって絵だけ良くて中身のないゲームばかりでも困りますしね。
こういう他所とは違うことをしてやろうって心意気は大歓迎です。
余談ですが、ゲームに対する姿勢というか、ADVの方向性の在り方1つにしても、アリスはエルフと異なる方向性を選んでいたように思うわけで、両者を比較するといろいろ面白い面が見えてくるように思います。
さて、もう少し具体的に見てみますと、本作はストーリー重視ということで、画面構成も絵は控えめになっており、画面内に占めるテキストの量が多めになっています。
絵に頼らないストーリー重視路線もありだとは思うのですが、幸か不幸か、本作の原画はラッシャーヴェラクさんでして。
そして私は、ラッシャーヴェラクさんの絵がモロにツボだったのですよ。
私の内心の葛藤はお分かりでしょうか。
確かに、テキストの分量を増やすストーリー重視は一般論としては歓迎なのだけど、今回に関しては裏目に出てしまったように思うわけで、もっとグラフィックが見たかったとか、ラッシャーヴェラクさんはもっとグラフィック重視のゲームに使えよって、内心歯がゆかったりもしましたね。
まぁ翌年には『あゆみちゃん物語』が出ましたので、それで満足した分はありますけれど。
そういや結局『さやかちゃん物語』は出ないのかな。一時期最も欲しいゲームだったのに・・・
<感想>
肝心のストーリーは病院を舞台にしたサスペンスモノだったのですが、普通には面白かったし楽しかったのも確かなんですけどね。
ストーリー重視なわりには、ストーリーだけで名作と言い切れるほどには突出してなかったのが、残念といや残念だったのかなと。
シナリオ担当のとりさんは、時にあえて淡泊に進行させますが、それが上手くかみ合っていなかったようにも思いますし。
だからストーリーそのものよりも、むしろ病室にいる奇天烈なキャラたち方が印象的でした。
どの患者も、見事に変人ばかりでしたからね。
どうも私は、最近のアリスのゲームでは笑えなくなっているのだけれど、この頃はギャグとかの方向性が自分に合っていたようで、プレイしていて、とても楽しかったです。
今はどのエロゲも序盤にギャグ中心の日常パートがあるけれど、当時は笑える要素のある作品は少なかっただけに、波長の合う本作をはじめとしたアリス作品は貴重だったのです。
<評価>
そういうわけで個人的には好きな作品ではあったものの、テキストないしストーリーという制作側の心意気と、キャラないしグラフィックという、実際に長所となりえた部分がチグハグだった作品でもありまして。
作ろうとしたコンセプトも良かったし、用いる材料も良かったけれど、コンセプトと材料の噛み合わせがいまいちだったということなのであり、それが名作足りえない所以でもあるのでしょう。
そのため、総合でも良作とします。
良い部分や共感できるところもあっただけに、本当に勿体無い作品でしたね。
※ちなみに、本作単独のWIN移植版はないのですが、1997年に発売された『アリスの館4・5・6』に収録されています。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2024-08-29 by katan




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