『楽園行』は2003年にWIN用として、Alice Blueから発売されました。
ゼロ年代に入ってからのアリスが行った二つの試み。
本作は、その二つの流れを汲む作品でした。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・
どこにでもいるような普通の若者の一人、日々のんべんだらりと暮らしている主人公の大成。
ある日近所のたまり場でいつものメンバーと暇つぶしをしていると、雀荘で働く玄が妙なアタッシュケースを持ってやってきた。
一同が注目する中淡々と開け放たれたケースの中には、一生でお目にかかることは普通ないであろう札束の山。
聞けば、賭け麻雀で勝ち分を払ってくれなかったから適当に持ってきた、と言う。
見るからに出所の怪しすぎる大金を囲み、呆気にとられる一同。
その金で南の島へ行くと言う玄の話を聞いてるうちにも、いかにもな黒塗りの車が金を追ってやって来る。
思わず逃げ出した大成達は、オンボロワゴンに乗り込み南の島を目指す。
<感想>
本作は、アリスソフトの女性向けブランドである、アリスブルーの作品になります。
ゼロ年代に入る頃、当時のアリスは今以上に人気がありましたが、それでも危機感を募らせており、新たな試みに挑み始めました。
その一つの挑戦が、アリスブルーを中心とした女性向けのBL路線になります。
そしてもう一つの挑戦が、2002年から始まるロープライスのオリジナルゲームの発売でした。
今でこそ、そのどちらも一つの路線として定着しています。
しかし当時はほとんどなく、新たな試みと言えたのです。
そして本作はBLゲーであり、同時に定価2800円のロープライスですので、当時のアリスの二つの試みの両方の流れを受け継いだとも言え、ある意味一つの合流点とも言える作品なのでしょう。
まぁ実際のところ、アダルトゲーマーの大半は男性ですし、当時はボリュームの多い作品が好まれた時代でした。
そのため、ロープライスゲームが定着しておらず、フルプライスでないともの足りないみたいな風潮もありましたからね。
BLゲーで、なおかつロープライスなんていうのは、一般的なアダルトゲーマーからは最も縁遠い分野だったのでしょうし、そのために本作を知らない人も多かったかもしれません。
また、アリスファン的に考えても、ブランド前作の『俺の下であがけ』はSLGなので、SLG好きの多いアリスファンが、ちょっと手を出してみるかということもあるでしょう。
でも、本作はノベルゲーですからね。
ノベルゲーはアダルトゲーム全体では主流ではあるものの、アリスファン的にはむしろ敬遠される要因にもなりかねないわけでして。
そのため、アリス的に大きな意義のある本作も、アリスファン的には少し遠い作品とも言えるわけで、何とも皮肉な作品と言えるのかもしれません。
以上のように、本作をエロゲの歴史みたいな観点から考えると、なかなかに興味深い位置付けの作品ではあります。
そもそも、アリスはあえて主流と異なる路線を選ぶ傾向があり、つまりアリスの反対を考えれば歴史が振り返られるとも言えるわけで、本作もそれを示したとも言えるかもしれません。
かように今振り返ると位置付けが興味深いよなということで、それで前置きが長くなってしまいましたが、上記のように本作はBLのノベルゲーになります。
ライターは、その後も現在に至るまでBLゲーを作り続けていますし、どれも評判は良いですからね。
読んでいてすんなり入っていけるし、何よりスピード感があって良かったです。
ゼロ年代前半の男性向けノベルゲーというと、どうも無駄に長大になり、フルコンプしなければ良さが理解できないのに、序盤がくだらない日常で苦痛を感じやすいというイメージの作品が増え、面白いと感じるまでの時間が長いという物が多かったわけでして。
そんな中で本作は、最初からぐいぐい引き込まれますので、その点は非常に好印象でした。
ただ、いかにも低価格商品らしく、ボリュームは少なかったですね。
分岐は一応あるものの、実質的に一本道ですし。
そういうこともあってか、ストーリー全体としても少しあっけないというか、もう少し掘り下げて欲しいなと思ったものでした。
余談ですが、無駄をそぎ落とした純粋なストーリー重視作品というのは、ある意味一番ボリュームが少なくても大丈夫なジャンルとも言えます。
最近の低価格商品は、それでも当初よりボリュームが増えてきていますし、あるテーマに絞ったストーリー重視作品としては十分な量を有しています。
だから「今」の私は、良いストーリー重視作品を探す場合には、フルプライスではなくむしろロープライスや同人に注目します。
そうすると、たまに凄い掘り出し物にめぐり会えるのですよ。
でも、その考えに至るのは、本当に最近の話でして。
ゼロ年代後半に入るまでは、ロープライスのストーリー重視作品には、もの足りなく感じることばかりで、低価格商品に良質なストーリー重視作品を求めるという発想はなかったです。
いまだにロープライスにはストーリーを期待できないという人もいますが、そういう人は過去に痛い目にあって、それで最近の良質な作品もそうとは知らずに敬遠しているんじゃないかなって、個人的には思うのですが、どうでしょうか?
本題に戻りまして、本作はグラフィックの上に、画面全体を覆うようにテキストが表示される、いわゆるビジュアルノベルスタイルを採っています。
そのシステム自体には特に言うことはないのですが、全体的に作り慣れていないというか、野暮ったいというか、洗練されていない印象がありまして。
これは同人のノベルゲーでわりと多く感じるのと一緒ですね。
具体的には、地の文は良いけど会話文になると、誰が話しているのか分かりにくいなど、あちこちに作りの甘さが見受けられるのです。
同人やフリーのノベルゲーばかりプレイする人もいますし、そういう人を見ているとシナリオしか興味ない人も多いように感じます。
同人やフリーのノベルゲーでシナリオが良いと評判の作品をプレイすると、どうにも洗練されていないような妙なチープさがあり、ゲームデザインとか全体的な観点から違和感のある物も多く、それで私は楽しみきれなかったということも多々あります。
私と同じようなことを経験したことがある人であれば、本作にも似たような印象を抱きやすいでしょう。
逆に、お前何言ってんの、シナリオが良ければそれで十分じゃん、同人ノベル最高って人だと、私の感じた違和感も気にならないでしょうし、本作も十分に楽しめるように思います。
<評価>
本作はノベルゲーではあるものの、当時の一般的なノベルゲーと言われて連想される物と比べると、非常に多くの点で対極的な存在と言えるのでしょう。
上述した点以外にも、比較するとそういう部分がいろいろ出てきますから。
あとはそれをどう捉えるかは、人それぞれなのでしょうね。
対極的な存在ゆえに、当時のテンプレな学園恋愛ゲーが好きな人には、本作は全く楽しめないでしょうし。
逆にその異質さに関心を抱ける人もいるでしょうから、様々な感想がありえると思います。
総合では佳作としますが、ミドルプライスにしてもう少し作り込んでいれば、格段に面白くなったんじゃないかなと、ちょっと勿体ないなという印象でしたね。
Last Updated on 2025-08-25 by katan


