西村京太郎トラベルミステリー 悪逆の季節

1994

『西村京太郎トラベルミステリー 悪逆の季節 東京~南紀白浜連続殺人事件』は、1994年に3DO用としてパックインビデオから発売されました。

国産の実写系ADVの中で最も好きなゲームになりますね。

<総論>

発売されている作品数の関係上、どうも二次元のキャラを使用したゲームの紹介が多くなってますが・・・
それが自分の一番好きなタイプの作品かというと、必ずしもそうでもないわけでして。
むしろ個人的には、幻想的で綺麗なCGと、実写を駆使したADVの方が好みなんですよね。

しかし国内では、実写ゲーの作品自体が非常に少ない上に、安易に有名俳優を使っただけの中身がスカスカな作品多かったりと、非常におそまつな状況が続いています。
単に俳優の人気頼みってだけなく、実際問題としても制作費の多くをそっちに取られますからね。
そのためにゲームの作り込みが甘くなってしまうのも、ある程度は仕方ないのかもしれません。
でも、それは分っていても、やっぱり面白い物を期待したくなりますし、いざプレイして中身が伴っていないと残念ですよね。

もっともそんな中でも例外は存在するのであり、特にこの『悪逆の季節』は、まぎれもなく傑作と言い切れる数少ない作品だったように思います。

<グラフィック>

本作は豪華俳優陣を使い、全編がムービーで進行します。
出演者は十津川警部に松方弘樹、亀井刑事に荒井注、西本刑事に宮川一朗太。
他にも、喜多嶋舞、立花理沙、大澄賢也、倉田てつを、見栄晴・・・
誰でも知っている人が多いですし、何だか異常に豪華です。
監督も遠山の金さんの監督も務めたことのある、津島勝さんですしね。
これらのメンバーを揃えてゲームを作ったこと自体が驚きです。

それまでのADVは、主にテキストで進行していました。
でも、本作は全て俳優さんらの演技で表現されるのです。
その演技を見ているだけで、コマンド選択式ADVにありがちな、ダレるなんて問題は吹き飛んでしまいます。
もちろん、こっちの選んだ行動によって、キャラの動きが違ってくるわけですからね。
安易にスキップするなんて、もってのほかです。

また、演技がどうのというところまで踏み込まずとも、単純に立ち絵の動きという観点からも大きいわけでして。
例えば、今は一時期よりはかなり進歩していますけれど、それでも2次元のキャラの立ち絵の動きは、実写ムービーのキャラの動きより乏しいです。
一概に比べられるものでもないのかもしれませんが、常に動きがあり見ているだけで単純に楽しめるということで、実写ムービーは優れているよなと思ってしまいます。

※ちなみに、本作は後に、携帯ゲーム機版も発売されています。
しかし、携帯ゲーム機版のキャラは、立ち絵が実写ムービーではなくて、昔のサウンドノベルみたいなシルエットになっています。
後述するように、本作は単なるグラフィックの枠の留まらず、ゲームデザインレベルで実写ムービーありきの構造になっており、その実写の動きという根幹的特徴が損なわれることは、大幅な演出面の退化になりますし、実写の動きを前提としたゲーム性そのものに悪影響を及ぼします。
そのため、携帯ゲーム機のリメイク版は、劣化されたどころか、もはや完全に別物の作品だと思っています。

また本作は、画質に関しても文句なしで、綺麗でしたね。
当時は次世代機が幾つも登場しましたが、その中でも動画処理に関して最高の機能を持っていたのが3DOであり、本作は3DOの特徴を最大限に活かした、3DOらしい作品と言えるのでしょう。
今はなくなりましたが、まさに火サスをプレイするって感覚でしたよ。
確か、堀井雄二さんも絶賛していたはずです。

<感想>

本作は、グラフィックが優れているだけではありません。
『悪逆の季節』には推理ADV好きにはぜひとも知っておいてもらいたい、数多くのシステムが導入されています。
指紋照合、モンタージュ作成、時刻表トリック、尾行システム、張り込み、行動結果に対する点数表示・・・と。

具体的には、まず基本的なゲームシステムは、コマンド選択式のADVになります。
ただし、全てのコマンドを試すという、いわゆる総当たり的な事はできず、一定数のコマンド選択により次の場面に移ります。
そうなるとコマンド選択式と言えども、人により行動が変わりますし、本作はマルチエンドであることから、この途中の行動次第で展開も変わってきます。
また、マルチエンドであるだけでなく、最後には自身の行動した結果が点数で評価されます。

本作は西村京太郎ミステリーということで、これまでの西村京太郎関連のゲームに出たシステムも再度出てきます。
それが上記の、指紋照合やモンタージュ作成、時刻表トリックになります。
これらは幾つかのパターンを組み合わせるだけの、いわばちょっとしたミニゲームっぽいことなのだけれど、少なくとも推理ゲームにおいては効果的でしたね。
特に時刻表トリックは、何度やっても最高です。
TVで単に見ているだけと違って、自分で解かなければ駄目ですからね。
それだけに、自分でトリックを見破った時の快感は、なにものにも代えられないのです。

本作では他にも、推理ゲームらしいシステムが出てきます。
具体的には、対象の動きをずっと観察し続ける張り込みシステムや、適度な間合いを取りながら尾行する尾行システムが該当します。
どちらも、単純なミニゲームではあります。
でも、これらは推理ゲームには必要で有効な要素といえるでしょう。
時間稼ぎで無理やり入れられたミニゲームとは異なり、作品を盛り上げ、作品世界に入っていくことに大きく貢献します。
しかも、これらのミニゲームは、実写ムービーが流れながらのプレイですからね。
絶えず画面が動いてる中でのプレイは臨場感が抜群でしたし、やっていてとても楽しかったです。

以上のように、こと推理ADVにおけるシステムとしては、非常に有効な物ばかりがたくさん詰め込まれていました。
だからこそ、推理ADV好きにはやってもらいたいのです。
推理ADVを盛り上げる要素っていうのは、いくらでもあるんだなって、そのちょっとしたアイデアにきっと驚かされるでしょうから。

<評価>

西村京太郎原作の内容が保障されたストーリーに、豪華俳優陣。
さらには推理ゲームには効果的な斬新なアイデアが随所に用いられている。
総じて、名作といえることは間違いないでしょう。
今となっては、ちょっと考えられないくらいの作りですね。

ただね、本作は動きまくりのしゃべりまくりですから。
当然のごとく、ボリュームは少ないです。
その点だけが少し残念でした。
(あとは、3DO自体の問題が少しあるでしょうか・・・)
まぁ、仕方ないと言えば仕方ないのでしょう。
もっとも、1プレイは短めであっても、本作には分岐要素がありますので、完全なクリアを目指すと結構遊べました。

そもそも本作が発売された94年というのは、マルチメディアという言葉が流行し、新しい時代を模索していた時期でした。
新しい可能性に挑みたいという野望を持った人たちも多かったでしょう。
また松下は、マルチメディアマシンたる3DOで、家庭用ゲーム機業界に参入したばかりでした。
本作の販売元は、その松下です。
本作には、マルチメディアマシンたる3DOの本領を見せ付けるという、そんな思惑もあったのでしょうね。

松下の本気が注ぎ込まれたからこそ、本作はここまで徹底的にやることができたのでしょう。
『悪逆の季節』は、そういう時代だったからこそなしえた、一つの奇跡だったのかもしれません。
残念ではあるけど、もうこういう贅沢な作品は出てこないんでしょうね。

将来は本作のようなADVが普通に遊べる時代が来るんだろうな~って、淡い夢を見て期待していたあの時代。
今となっては、そのことがとても懐かしく思われますね。

ランク:AA(名作)


3DOソフト 西村京太郎 悪逆の季節

Last Updated on 2024-10-12 by katan

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