『判決』は1998年にWIN用として、SPEEDから発売されました。
おそらくアダルトゲームでは、最初の法廷ものになるでしょうか。
<概要>
検事である主人公は、あるドラッグを追いかけていたところ、今度担当する連続強姦事件にそのドラッグが関わっている様子。
そこで、事件の真相に迫っていくことになります。
法廷ものであり、こういう舞台はアダルトゲームでは初だったかと。
もっとも法廷闘争そのものというよりも、それを通じてヒロインらの心の傷を癒すことに重点が置かれています。
<ゲームデザイン>
基本ジャンルとしてはノベル系のADVになります。
したがって、読み進めつつ出てくる選択肢を選ぶことになります。
もっとも、細かく見ると更に分かれており、具体的には事件に関する情報を得る通常パートと、容疑者と対峙する法廷闘争パートに分かれます。
まず良い点から書きますと、通常パートでの行動により証言者との関係も変わりますので、それが後の法廷闘争にも影響していくことです。
つまり二つのパートが連動しているのです。
例えば、後発の法廷ものとして2001年の『逆転裁判』が有名ですが、通常パートと法廷パートが分断されて別個のものになっています。
私にはそれが非常に不満だったわけでして。
その点では、本作の方が優れているのです。
とは言え、本作における基本的なゲームデザインは、例えば96年の『殺意の証明』と同じようなものと言えます。
したがって、一般ゲーを含めるならば、決して斬新と言い切れない点が若干ややこしいのですけれど。
<感想>
本当は、あまり他作品と比べるのは良くないことだと思うので、ファンの方がいれば事前に謝っておきます。
ただ、本作に関しては似たような題材を比較した方が、知らない人には分かりやすいかなと思ったものですから。
さて、かようにゲームデザインとしては『逆転裁判』より優れている本作ですが、問題は狭義のゲーム性なんですね。
『殺意の証明』と同じような構造と言いつつも、本作は展開の幅も少なかったためにゲームの幅にも限りがありましたし、法廷闘争の面白みを追求するのではなく心理面とかを重視していましたので、必ずしもゲームとして面白いとは言い切れなかったのです。
『殺意の証明』や『逆転裁判』は法廷闘争ものとしての、ゲームとしての面白さを追求する方向性でしたので、ゲーム性という観点からは本作は物足りなさもあったのです。
その代わりに重視したのがストーリー、具体的には人間関係なのでしょうが、この時期のフルボイスの作品ということもあり、全体のボリュームが少なくなっています。
そのため、全体的にあっさりしており、長所にはなりえませんでした。
まぁ人間関係にも力を入れたい、法廷闘争も描かなければならない、アダルトゲームなのでHシーンも描かなければならない、でも分量は限られていますとなると、大抵はあっさりしてしまいますよね。
<グラフィック・サウンド>
CGのレベル自体は高かったのですが、癖がありますし、うける萌え路線とはかけ離れています。
個人的にもあまり好きではなかったかな。
この時期の新作としては珍しくフルボイスであり、しかも有名声優ということで、ここは長所と言えるでしょう。
<評価>
意欲は買いたいものの、まだまだ荒削りな作品でした。
『逆転裁判』ですら初の法廷ものとか言い出す人がいるくらいですから、ジャンルとしてもまだ馴染みがなく、98年の本作なら多くの人に新鮮さを感じさせられたと思います。
とはいえ、私はアダルトゲームだからという考えはしませんので、これより先に優れた法廷闘争ものをプレイしていると、新鮮さより物足りなさの方が勝ってしまったのかなと。
そのため、総合でも佳作としておきますが、恋愛ゲーと陵辱ゲーが目だって増えだしたこの時期に、あえてこういう作品で挑んだ姿勢は好ましいものでしたね。
ランク:C(佳作)
Last Updated on 2024-12-29 by katan
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