『横浜エレジィ』は1994年にPC98用として、FMCから発売されました。
フェアリーテールやカクテルソフトで有名なアイデスの新ブランドであり、この作品がデビュー作でした。
ある意味、初の「寝取られ」専門ブランドと言えるのかもしれませんね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
主人公はクレー射撃の元日本代表選手で、神緒という国民的アイドルの彼女がいました。
その彼女である神緒こと愛音は、ゲーム冒頭で何者かにレイプされ、自殺してしまいます。
それから舞台は、2年後に移ります。
今度は相次ぐアイドルの引退という現象が起こり、その一方でアイドルの裏ビデオが流出するという噂が飛び交っています。
再び繰り返される悲劇に主人公が挑むということで、全体としてはサスペンスものの復讐物語となるでしょうか。
<FMC>
まずはじめに、FMCというブランドは馴染みのない人も多いと思います。
まぁ正確にはブランド内の一つのレーベルであり、今でいうならブラックサイクとか、そんな感じでしょうか。
フェアリーテールやカクテルソフトなどの名前ならば、PC98のゲームを知っている人なら誰でも知っているでしょう。
それらを有するアイデス(後のF&C)の新レーベルとして作られたのが、FMCだったのです。
そのため、本作のサウンドは、アイデス系の作品の多くを手がけ、当時人気の高かったMUSEさんが担当しています。
FMCの知名度が低い理由としては作品数の少なさにあるのでしょう。
如何せん本作と次の『ガラスの運命』の2作品しか出していませんからね。
アイデスのブランドないしレーベル名には、どれもきちんと意味があったんはずなんですけどね。
調べれば分るのかもしれないけれど、それも面倒だし。
ただ、作品を通して方向性を感じることはできるのでしょう。
暗いサスペンス風の『横浜エレジィ』と、レディコミ風の『ガラスの運命』というのは、一見すると全然似ていないようでもあります。
後述するように、両者はゲームシステムも異なりますし。
ただ、『ガラスの運命』って、主人公の大事な人(姉)がレイプされ、ある意味そこが起点となって物語が始まっています。
『横浜エレジィ』は、もっと露骨でして。
主人公の彼女がレイプされる場面からゲームが始まります。
そもそも寝取られ(NTR)に関しては、定義次第で対象も異なってきます。
最近は寝取られる過程を重視する傾向にあり、最近始めたような人なんかだと、その過程が描かれていない作品は寝取られゲーとして認識しないかもしれません。
他方で、最初に寝取られゲーという言葉ができた頃には、彼女や大事な人が犯される作品を意味していました。
この初期の定義からするならば、FMCの作品は全て寝取られものに属することになります。
NTRという言葉の初期の使い方と最近の使い方は、一概にどちらが良いというものでもないのでしょう。
確かに、寝取られるまでの過程であるとか、寝取られている現在をしっかり描けというのは一理あるのでしょう。
しかし、この点ばかり意識することで、最近の寝取られゲーは似たような構造の作品ばかりであり、どれもテンプレ化してきています。
私は、もっと広義に、いろんな形の物語があっても良いと思います。
今の寝取られゲーは、大抵は寝取られが発覚したところでゲームが終わってしまっています。
でも、普通なら寝取られが全て完了した後も、キャラたちの人生は続くのであり、過去の寝取られに由来する苦悩との闘いは続いているのです。
そうした「事後の物語」があっても良いと思うし、実際にその「事後の物語」ばかりを作っていたのが、このFMCと言えるのでしょう。
FMCというのは、いわば最初の寝取られ専門ブランドなのです。
<ゲームデザイン>
ゲームジャンルはノベルゲ系ADVになります。
移動場所を選ぶタイプの作品ではありますが、汎用のコマンドはないですし、たまに出てくる選択肢を選びつつも、基本はクリックだけで進行しますから。
次作である『ガラスの運命』では面倒なコマンド選択式になっていただけに、『ガラスの運命』も本作のようなサクサク進められるシステムだったら、もっと快適に楽しめたのになと思ってしまいます。
他に変わっている点としては、主人公にエネルギーという概念がありまして。
最初は100%なのですが、女の子とHすると減っていき、数値が十分でないとHができません。
まぁ、エネルギーは補充できますし、あまり機能しているシステムではなかったと思いますけどね。
<グラフィック>
目パチ口パクもあり、基本的に良好です。
アイドルものということで、コンサートで歌うシーンが幾つかありまして。
その場面がアニメーションで動きます。
このアニメーションが本作のウリでもあったようですし、人によっては長所に感じられたと思います。
<感想>
本作は、まず設定がややこしいのですよ。
愛音は神緒としてアイドル活動をしていたのですが、冒頭で自殺してしまいます。
しかし表向きには自殺したのは妹の栞ということになっているのです。
そして栞は愛音の代わりに神緒として活動し始めます。
ストーリーとしては、愛音を襲った悲劇と同様の事件が頻発し、アイドルの裏ビデオが流出、またアイドルの相次ぐ引退が続く中、主人公は神緒の後輩の護衛を頼まれます。
しかし、その後輩が拉致され、主人公の目の前でレイプされてしまいます。
2年前と同じ悲劇を、今度は自分の目の前で繰り返されたことで、主人公は復讐を決意。
事件の真相を追うことになります。
本作は、途中までは面白かったんですよね。
途中というか、ラスト直前までですが。
一番盛り上がって然るべきラストで、つまり黒幕を前にして、アッサリと撃ち殺してしまったので、ちょっと拍子抜けした感じでして。
撃たれた黒幕が橋から川に落ちるシーンがアニメーションで処理され、手間はかかっているんでしょうけどね。
あまりにサクッと事が進むものだから、復讐をやり遂げた感動よりも笑いの方が出てきそうになりましたから。
あれですね、2時間もののミステリードラマとかで、なぜか犯人は崖に行って妙に語りたがりますが、あんなの現実的にはありえねぇ~って思っても、ああいう演出って大事なんですね。
しみじみ思いました。
<評価>
途中までは名作並に面白かったのだけれど、終盤のあっけなさの印象が強いことから、総合ではギリギリ良作としておきます。
もっとも、良くも悪くも記憶に残る作品ではありました。
上記のように初の寝取られ専門ブランドのデビュー作でもありますし、他所とは少し雰囲気の異なる作品でしたね。
ランク:B-(良作)
Last Updated on 2024-10-08 by katan
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