ストーンウォーカーズ

1996

『ストーンウォーカーズ』は1996年にPS用として、サンソフトから発売されました。

ゲームというのは様々な形式を取っており、例え素晴らしい作品であっても、発売時のユーザーの流行やハードによって埋もれる事も多々あります。
本作もまた、そんな不遇な作品の1本と言えるのではないでしょうか。

<概要>

ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。

あらすじ・・・
大学講師の主人公ランディはゴールデンウィークを利用して、中米グアテマラに発掘調査へ行く事になっていた。
真の目的は、ヒスイの仮面の盗掘である。
ただし今回はお荷物つき・・・
受講生の女子大生2人が一方的についてきてしまったのだ。
ランディ達は調査を進めるうちに石棺を発見する。
強引に蓋を開けると・・・
死後あまり時間が経過していないように見える少女の遺体とお目当てのヒスイの仮面があった。
早速、遺体から仮面を引き剥がすのだが・・・。

<感想>

ストーリーはマヤ文明を題材にした冒険ものです。
私なんかは『DE・JA2』とか大好きだったし、MYST系のようなファンタジーものも良くプレイします。
基本的に、冒険ものって大好きなんですよね。
昔はそれなりに冒険ものもあったとは思うのですが、90年代も中頃になるとMYST系以外の冒険ものはほとんどなくなりました。
つまり、ストーリー重視の冒険ものが壊滅状態になったわけです。
ですので、本作のようなゲームは存在自体が嬉しかったですね。

問題は中身の出来ですが、次々と予想できないトラップが作動したり、ありえないようなアクシデントが発生するわけでして。
破天荒な冒険ものとしては、結構良く出来ていたかと思います。
リアリティという面では難もありましたが、次に何が来るんだろうって緊張感は常にありましたからね。
でも、冒険ものについては、それで良いのだと思います。
現実にはありえないと分かってはいても、もしかしたらと、非日常に夢を見る。
そういうのがあったって良いのではないでしょうか。
人によっては理不尽に感じるかもしれないけれど、次が分らないワクワク感があるということで、何となく80年代のADVを思い出しました。
そのためか、本作をプレイすると妙に落ち着きますし、近年のノベルゲームは日常シーンが多くて緊張感に欠けるので、私には本作の様な作品の方が合っているのでしょうね。

かように、ストーリー面でも楽しめたし、私なんかは設定の段階で惹かれるんですけどね。
本作が発売された96年には、この類の作品は好まれなくなっていたんですよね。
決定的に風向きが変わったのは95年以降で、つまりはエヴァやら同級生2やらがあった年ですね。
以降、ストーリーの面では恋愛ものが好まれ、冒険ものは流行らなくなりました。
また中途半端にリアリティ重視になったので、変なトラップとかが出てくると、リアリティがないってダメ出しされるようになりました。
加えて心理描写とかが珍重される時代になっていきますので、そうなってくると、本作のような作品の立場はますます辛くなってくるわけです。

でも、80年代のADVにはそんな細かい心理描写とかなかったですし、結構めちゃくちゃな展開も多かったです。
それでも楽しんだ人は多かったわけでして。
それは決して未熟だったのではなく、次に何が来るか分からないという部分にワクワクしたり、心理描写なんて主人公がプレイヤーなのですから、いちいち書かれなくたって構わないという思いだったのでしょう。
だから本作も当時のADVファンとかなら抵抗ないとも思いますが、ちょっと時代の流れとズレてしまいましたね。

<グラフィック>

本作のキャラは結構良く描けていると思いますし、グラフィック全般のレベルは高かったです。
部分的にではありますが声も入っていますし、ムービーもありました。
96年はPCはまだPC98が主でしたし、SFCとか前世代の機種では、本作のグラフィックは実現できませんから。
PSでオリジナルの2DのADVも少なかったですしね。
そういう意味でも、本作は貴重でした。

もっとも、この頃にはキャラに萌えが求められる時代になっていましたからね、
しかも当初の萌えと違って、年々萌えはロリ化が進んでいきましたし。
そうなると、絵も声もレベルは高かったのですが、時代が求めていた萌えとは方向性が違うんですよね。
これまた時代の観点からは辛かったかなと。

私なんかは凄く好きだし、一部では高く評価もされているのですが、ストーリー・キャラ的には少々発売が遅かったのでしょう。
これがもう少し早い時期で、機種もPC98あたりで発売されていれば、もっと高く評価されていたかと思います。
そう考えると、非常に勿体無い作品でしたね。

<ゲームデザイン>

そして、時代と合っていなかったことはシステムにもあてはまります。
『ストーンウォーカーズ』はコマンド選択式のADVです。
ノベル系しかプレイしない人は、当然コマンド選択式のゲームってだけで敬遠する人も出てくるでしょう。
今では、この手の形式自体を嫌がる人は多いですからね。
しかも実際には知りもしないのに、知識だけでどれも総当りと言い出す人もいますし。
過去のものは悪いに違いないという思い込みって、結構酷いです。

では本作は、コマンド選択式に慣れた人には歓迎されたかというと、必ずしもそうでないわけでして。
というのも、本作にはちょっとした時間概念があって、コマンド選択に回数制限があるのです。
つまりは、全部のコマンドを試すって手段が取れない、総当たり不可能なシステムだったんですね。
そのため、どのコマンドを選択するかを、きちんと考えなければならなかったのです。
更に選択結果でゲームオーバーになったり、EDが分岐(本作はマルチエンドでした)したりするので、余計にもきちんと考える必要がありました。

この選択に制限があるって要素が、一部の人には受け入れられなかったみたいです。
コマンド選択式にもいろいろあり、PCにおける初期のコマンド選択式(以下「初期型」といいます。)と、PC後期やゲーム機のコマンド選択式(以下「後期型」といいます。)とでは、設計理念が異なります。
初期型は、適切なコマンドを選べば次に進めますし、総当たりを防ぐために、何かしらの制限を加えることもありました。
逆に後期型では、全部のコマンドが試せる、いいかえると全部のコマンドを試さなくてはいけないってのが前提な作品も多かったです。
つまり、その後期型が、嫌いな人には総当りと揶揄されるシステムなのですが、当時はこの形式が好きな人もいたわけで、好きな人はそのコマンドを全部試すってのも楽しんでもいたんです。
だから、いざ制限されてゲーム性を高められると、逆に反発してしまう人も出てくるんですね。
逆に、本作のシステムは80年代のPCゲー的発想の初期型になるので、そちらが好きな人であれば、楽しめるといえるでしょう。

この点に関しては、逆に時期が早すぎたのかもしれません。
コマンド選択式を基本としつつも、時間による選択の制限やEDの分岐ってのは、近年で言えば『ミッシングパーツ』シリーズがありますよね。
そしてMPシリーズでは、高く評価されています。
選択に制限を加える手法も、時に総当りと揶揄される全部試す方法を不可能とさせることでゲーム性を増し、他方で総当りする煩わしさから開放されたということで、むしろ積極的に評価されていました。

つまり、80年代的な初期型が再評価される時代が到来したわけですが、単純なコマンド選択式に否定的な人が多い今だからこそ、こういう手法は歓迎されたのでしょう。
ここにきて、ようやくユーザーの認識がゲームに追い付いてきたのです。
そう考えると、やっぱり『ストーンウォーカーズ』のシステムは、時期的に古いようでいて実は早すぎたのかもしれませんね。
いや、当時でも後期型のコマンド選択式に懐疑的な人なら褒めたかもしれませんが、この頃に手を出す人は後期型の選択式が好きな人でしょうし、ノベル好きは手を出さないでしょうから、そこでミスマッチが生じてしまったのでしょうね。

<評価>

個人的には優れた要素の多い良い作品だと思うのですけどね。
やっぱり、時期の問題なんだろうな~
そもそも、『ストーンウォーカーズ』が出たのは96年でも後半の10月です。
私だってあの頃は、「ルリルリ、最高~!!」って感じでしたしね。
ましてや96年当時は、まだPS本体を持っていなかった人も多かったです。
急激にPSのシェアが伸びたのは97年からですからね、
FF7に併せて購入しましたよって人も多いでしょうし、多くの人がプレイできる機会を得たのもまた97年以降なわけです。
97年以降ってなると、ADVの流行は完全に恋愛系の時代ですよね。
また同じADVでも、SFCから流れてきた人は、ノベルゲーを好んでいましたし。
そうなると、非恋愛・非ノベルの本作は、何か古くさそうって感じで敬遠されてしまう事もあるわけでして。
ハード初期のゲーム全般に当てはまることでもありますが、そういう点からも不遇な作品でしたね。

ランク:A-(名作)


ストーンウォーカーズ

Last Updated on 2024-11-18 by katan

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