アンラベル・トリガー

2024

『アンラベル・トリガー』は2024年にWIN用として、Archiveから発売されました。

丁寧に作られた作品でしたね。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・
カージ合衆国とヴィルカール帝国という大国の緩衝地帯に設定されたフロスト中立特区。
観光地として成功を収めている反面、様々な種族が移住してきたことから事件や衝突が絶えない場所でもあった。
その中立特区に事務所を構えるトリガー探偵事務所の調査員として働く主人公・榊カイ。
彼の目的は先の大戦で行方不明となった幼馴染・楪紗衣奈の行方を捜すこと――
この地で紗衣奈の目撃情報はいくつかあるものの、その足取りは掴めない状態が続いていた。
――そんな中、街を見下ろす高台で空に手を伸ばすミリィという少女と出会う。
かつての紗衣奈と同じく、争いが絶えない世界を憂い、平和を望むミリィ。
この出会いが、カイの、中立特区の、そして世界の運命を大きく変えていく。
失くした過去を乗り越え、未来へと歩む物語――ここに開幕。

<感想>

最近は、女性でも言葉遣いの荒い人を見かけることが多くなったように思います。
それもあってか、ゲームで言葉遣いの丁寧な女の子を見ると、何だかそれだけで心が洗われるような気になってきます。
敬語キャラであるとか、言葉遣いの丁寧なキャラについては、昔より今の方が、年々好きになっていくように思います。

いきなり個人的な話から始めてしまいましたが、本作に対するイメージとしては、「丁寧」というのが率直なところでしょうか。
それは、後述するように作品全体の作りが丁寧であるとか、個別のヒロインをみても丁寧な言葉遣いのキャラが多いとか、そういう印象なのです。
まぁ、あくまでも私の印象でしかありませんが、少なくともそういうヒロインがいるというのは間違いないので、自分の好きな属性とマッチしているのであれば、好印象になりやすいと思います。

本作には多数のキャラが登場します。
キャラ数を減らしてコストカットを図るような作品も多いなか、多くのキャラを、単なるモブではなく、きちんと存在感のある形で描いているのは、それだけでも丁寧な仕事をしているなと思います。

また、本作では、キャラに目パチ口パクがついています。
立ち絵では完備で、1枚絵では部分的にというところでしょうか。
上記のとおり、本作には多数のキャラが登場するところ、1画面内に複数のキャラが登場することもあります。
本作の凄いところは、そのような場面で、話していないキャラの立ち絵も変化するので、より自然な雰囲気作りができており、物語への没入感を高めてくれるのです。
この辺は、一つ一つは画期的とまでは言えるものではないし、決して目立つものでもありません。
かかる労力のわりには地味な効果しか生まれないので、軽視されがちなところでもあるでしょう。
だからこそ、そういう細部まで考えて作られた作品は、丁寧で良い仕事をしているなと感じるのです。

問題があるとすれば、ストーリーというか、これはプロット段階で難があるということになるのでしょうか。
本作はファンタジーをベースにしつつも、種族の異なる国家間の争いが描かれています。
ただ、何だかいろんな要素を全部詰め込んでみたけれど、それを消化しきれていない感じなんですよね。
様々な要素を詰め込み、ごちゃごちゃになっていたとしても、本作ならではの雰囲気を作り出せていたならば、それはそれで一つの形としてありなのでしょう。
本作の問題は、何かいろいろ詰め込まれているのに、どこか既視感が漂うというか、新鮮味を感じないところなのでしょう。
個々のエピソードにしても、過去の様々な作品の人気のありそうなエピソードを入れてみましたみたいな印象を受けてしまいます。

まぁ、この辺は捉え方次第でもあるでしょうけどね。
というのも、人気のありそうな展開を丁寧な演出でやっているわけですから、人によっては、これこれ、こういうのでいいんだよって思うでしょう。
ただ、そういう部分が本作には多いことから、逆に、あざとくて嫌と感じる人もいるでしょう。
どちらに感じるかはプレイヤー次第かなとも思いますが、いずれにしても言えることは、新鮮味には欠けるというところなのでしょう。

<評価>

ストーリーだけであれば、凡作相当の作品だと思います。
ただ、何かが致命的に悪いというよりは、新鮮味に欠けるということですし、これが本作のライターの作風なのだとしたら、個性を求める私の評価の方向性とは異なるだけともいえるのでしょう。
そうであれば、私自身は、本作のライターの作品は今後はプレイしなくて良いかなと思います。
ただ、作品はストーリーやテキストだけで決まるわけではなく、本作の丁寧な作りは、それだけで1ランク以上あげて良いものといえるでしょう。
その点も考慮し、総合では佳作とします。

ランク:C(佳作)

DL版

Last Updated on 2025-04-09 by katan

コメント

  1. 地味ながらも立ち絵の演出面の良さは同意します。

    言葉遣いはとても丁寧とは思えませんでした。
    >「力づくで聞きださないと」 力ずく
    >「将棋を打つ」 将棋を指す
    >「絡め手は使えません」 搦め手
    >「明るみになってしまえば」 明るみに出て
    >「足下すくわれるぞ」 足すくわれるぞ

    のようにシナリオライターの覚え間違えであろう言い回しが多数見られ、
    文章校正を怠ったように感じました。

    • >匿名さん

      細かいところまでは覚えていないのですが、そうであるならば、結局のところ、本作はストーリーやテキストがウィークポイントの作品といえそうですね

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