『月影のシミュラクル 解放の羽』は2016年にWIN用として、あっぷりけから発売されました。
オダワラハコネ&桐月コンビということで、今回も安定した面白さでした。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・
――その館には、生きた人形が棲んでいる。
からくり師の一族である、如月家。
その分家である主人公――卯月誠一は、夏休みに合わせ故郷の街へをする事になった。
この一族には、ひとつの秘密がある。
『如月の生き人形』と言われる、一族の開祖が使役していた、少女の人形<ヒトガタ>
涙を流し、笑い、そして主人が亡くなる時に眠るように動きを止めたという。
そして誠一が帰郷する理由も、この『生き人形』と、それにまつわる『儀式』のためだった。
久しぶりに帰ってきた故郷で出会うのは、幼馴染の少女達と妖<あやかし>の世界
辿り着く先は、果たして人の世か、それとも……。
<感想>
あっぷりけのオダワラハコネ&桐月コンビによる作品ですね。
『コンチェルトノート』や『黄昏のシンセミア』が面白かったものの、その後は少し停滞していたこと、今作はミドルプライスであったことから、発売前は期待はしつつも過度には期待していませんでした。
結論としては予想通りであり、無難に手堅く楽しめる作品だったかなと。
物語のジャンルとしては伝奇モノになります。
近年の一般的なエロゲのように、何気ない日常シーンや、ヒロインとの恋愛話の先に個別のシナリオがあるのではなく、終始ストーリー主導でありつつ、その中にキャラの魅力を織り交ぜた作品になっています。
まぁ、ある意味PC98時代のノベルゲーっぽい構造とも言えますし、桐月さんらしい作品とも言えるように思います。
本作は最初からストーリー主導で始まることから、物語に入っていきやすかったですし、何か久しぶりにスーっと入って物語を堪能できました。
その点では非常に満足できたのですが、桐月さんは一瞬のキレで勝負するタイプではなくて、積み重ねで良さが発揮されるタイプだと思うんですよね。
それもストーリー主導でありつつ、ストーリーそのものの良さではなく、その中でキャラの魅力が積み重なっていくところに、良さがあるのだと思っています。
過去の代表作も、どちらかというとストーリー主導で、露骨にキャラを重視した作品ではないのだけれど、ボリュームを積み重ねることによって、キャラの魅力が増していった作品だと思いますし。
だから本作も面白くはあるのだけれど、シンセミアのような過去の代表作と比べると、ミドルプライスになった分だけのもの足りなさも感じてしまうと。
基本的に私は、今のエロゲは無駄に長い、もっと短くしろと思うタイプなのですが、桐月さんに関しては上記の様なタイプだと思っていますので、この作品もミドルプライスではなく、フルプライス作品としての規模で見てみたかったように思います。
まぁ、本作は本作でキッチリまとまっているので、無理に規模を大きくして、それで面白くなるとは限らないので、無茶な要望かもしれませんけどね。
とりあえず、無駄を省いてスッキリ纏まっているので、その意味ではミドルプライスで上手くいったと言えるのでしょう。
他方で、確かに読んでいて面白いのだけれど、ストーリー重視とかキャラ重視とかスパッと分かれる類ではないので、突き抜けた何かがあるわけではないわけでして。
基本的にミドルやロープライスの作品は、私は一点特化型の方が向いていると思いますので、その考えとは少し方向性の異なった作品とも言えるのでしょう。
ストーリー以外については、フローチャート完備など、相変わらずシステム周りは充実して遊びやすいですし、グラフィックもサウンドも適度な分岐によるやり応えも、どれも高水準に纏まっていました。
個人的には、主題歌も好きでしたね。
しいていえば、若干CG枚数が少ないかなとは思いますが、まぁほぼ全ての要素で高水準にまとめ上げた、欠点のない作品と言えるでしょう。
<評価>
ほぼ全ての面で高水準に纏まった良作ですね。
ただ、その一方で、これはと言えるような、突き抜けた部分もなかったわけでして。
ボリュームも価格相当ということも踏まえると、名作として過度の期待をすると、少しもの足りなく感じてしまうように思います。
とりあえず、過去の代表作のファンは遊んで損はしないでしょう。
このブランドの良さを分かりきっているファンならば、無駄が省かれ洗練された分、過去作より良く感じる人もいると思います。
逆に未経験者には、本作に強烈なアピールポイントがないため、良さが伝わりきらないおそれもあります。
そう考えると、本作は、ブランドのファン向けとは言えるかもしれませんね。
いずれにしろ、最近は読んだ気になる作品って減りましたからね。
だから最近、読んだ~って思えるストーリー重視作品をプレイしてないな、またそういうのプレイしたいなって思う人には、本作はオススメできる作品だと思いますね。
Last Updated on 2024-08-14 by katan
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