『東脳』は1994年にMAC用として、ソニー・ミュージックエンタテインメントから発売されました。
今だと奇ゲーとして有名なPS版『LSD』の作者である佐藤理さんが、デジタル・エンタテインメント・プログラムで作品部門最優秀賞を受賞したのが、この作品でした。
<概要>
ゲームジャンルはFMV系ADV(インタラクティブムービー)になります。
マルチメディアアーティストである佐藤理さんが作ったこの作品、完全に人を選びます。
大丈夫かこれと思いたくなるような、常人では考えつかないようなセンスの映像が繰り広げられるわけで、動画を見てこれはと惹かれる人は絶対に楽しめるし、そうでない人はまず楽しめないでしょう。
っていうか、うかつに子供に見せたらトラウマになりかねないですね。
<感想>
ストーリーとしましては、まずプレイ開始時に、主人公は魂を奪われてしまいます。
主人公は、その魂を取り戻すために、魔の島トンノウへと旅に出ます。
この島、何とも気味の悪い人間の顔の形をしているわけですが、どうやら作者の顔を元にしたそうです。
もう、この顔だけで夢に出てきそうですよ。
この顔の一部をクリックすると、そこが剥げ落ちて中に入ることができます。
つまり新しい世界が待ち構えているわけですが、生命の国であるとか欲望の国であるとか珍妙なものばかりです。
ただ、後の『LSD』なんかでは曖昧で形容のしにくい光景が並ぶのですが、『東脳』ではハッキリと東洋を意識したことが見て取れますし、しっかりと設計されています。
まぁ、そうは言っても佐藤理さんのデザインだけあって、他にはないような異様な空間が表現されていますけどね。
この手のゲームは、当時、海外では増えだしていましたし、単に綺麗だったり纏まっているだけのゲームであれば、少なくとも私の記憶にはあまり残らなかったかもしれません。
しかし、東洋を意識した作品で、しかもここまで異常な世界となると、探しても他にはないわけで、このグラフィック・世界観は大きなプラスポイントとなりえるでしょう。
ゲームはFull Motion Video系のADVになります。
当時ならインタラクティブムービーという表現になるのでしょうか。
基本的には動画と音声が主となるADVなのですが、画面は主人公視点で進行します。
プレイヤーは、あちこち移動して画面内の怪しい所をクリックし、アイテムを入手したりフラグを立てながら進むわけですね。
ゲーム部分は、ストレスに感じたり大きなマイナスにもならないかもですが、まだMYST系ほどの歯応えもないですし、「ゲーム部分だけ」を求めると物足りなさを感じてしまうでしょうね。
まぁ、このゲームにそこだけを求めるような人なんて、まずいないと思いますけどね。
<評価>
総合では、短所も幾つかあるものの、長所が完全にそれを上回っているので、文句なしに名作なのでしょう。
唯一無二のオンリー1な作品ですからね。
心底魅了されたって人もいるでしょう。
サウンドも独特でしたし、とにかく中毒性の高いゲームでしたからね。
如何せん人によってはキモイと思われないゲームだけに、万人にオススメとは決して言えない作品だとは思います。
でも逆に、珍ゲーであるとか奇ゲーが好きな人には、一見の価値がある作品だと思いますね。
ランク:A(名作)
Last Updated on 2024-10-01 by katan
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