『雫』は1996年にPC98用として、leafから発売されました。
同人界隈で話題になった、電波系の作品になります。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
また、リーフのビジュアルノベルシリーズの1作目でした。
あらすじ・・・
ここ数日の間、僕は不思議などろりとした時間の中を漂っていた。
毎日同じ時間が同じ映像で繰り返されているような…そんな奇妙な錯覚を覚えている。
代わり映えのないくだらない毎日の連続。
やがていつの頃からか、僕はこの退屈な世界から、すべての音と色彩が失われてしまっていることに気付く。
僕はつまらない現実を離れ、徐々に狂気の世界へ足を踏み入れようとしていた…。
そんな僕のクラスで、ある日の授業中、ひとりの女生徒がおかしくなった。
彼女は機械のようなまっすぐな姿勢で席から立ち上がると、突然、大きな声で淫猥な言葉を叫びだし、教師が無理矢理その口を押さえる頃には、彼女の顔は自らの爪が刻んだ生傷で血だらけになっていた。
クラス中の生徒達が息を飲んで見守るなか、鮮血の赤を見つめていた僕は、現実世界がゆっくりと色を取り戻していくのを感じていた…。
<ビジュアルノベル>
いつの時代にも、「にわか」とか初心者はいますし、作品としても初心者受けしやすい作品というものがありますが、本作もそういう作品だったのでしょうね。
だからなのか、過去のアダルトゲームの知識が皆無なのに、本作の知識だけで本作を特別視して権威付けしようとする人がいて、作品というよりも信者に疑問を持ってしまう作品でもあります。
まずゲームデザインに対してなのですが、近年はノベルゲーム=ビジュアルノベルみたいに勘違いする人がいて、それでビジュアルノベルという言葉を最初に用いた本作を、アダルトゲームにおけるノベルゲーの元祖と勘違いする人がいます。
しかし、ジャンル名にノベルと用いた作品、紙芝居みたいだとか、ゲームブック風だと評された作品、実質的に今のノベルゲームと同じ構造の作品などは、実際には80年代から幾つも発売されているのです。
もっとも、当時はPCを持っている人は少なかったので、ノベルゲーへの理解度・知名度は低く、国民機であるSFCで『弟切草』が出ることで、ようやくノベルゲーという存在が浸透し始めたという感じなんですけどね。
いずれにしろ、ノベルゲームは80年代から存在しており、アダルトゲームでも何本も存在しており、本作が元祖ということは絶対にありえません。
本作を元祖と評するのは、ポケモンをRPGの元祖と言い出すくらいナンセンスであり、あまりに知識がなさすぎです。
なお、ノベルゲームというジャンルの中でも、細かく見れば幾つかに細分化することができます。
そこで、画面全体をテキストで覆うビジュアルノベルを、ノベルゲームの中の一つのジャンルとして挙げることはできるのでしょう。
まぁ、実際に発売当時も、ノベルゲームはいろいろあるけれど、その中で画面全体を文字で覆うタイプがVNであるという風に説明されていたはずなんですけどね。
それが論壇だか何だか、シナリオしか興味のない輩が出てきて、ノベルゲームとビジュアルノベルの区別もできずにごっちゃに扱い、それで後に勘違いする人を生み出していったと。
何とも、迷惑な話です。
さて、そのビジュアルノベルとしてなのですが、画面の上部から下部までテキストで覆うという、ビジュアルノベルの思想を具現化した作品としては、パッと思いつくものとしては、『メッセンジャーフロムダークナイト』(1995)が先でして。
他にも、画面を文字で覆う表現形式を用いた作品はもっと前からありますし。
だから内容的に、ビジュアルノベルとしても最初と呼べないのでしょう。
それこそ、PC88時代にも似たようなのはあるのです。
それとね、高橋さんのシナリオが凄かった、その影響を受けてライターになった人もいた、だから『雫』の影響力を認めるべきという方向性で語りたいのであれば、私は一概には否定しません。
もちろん、その内容にもよりますけどね。
ただ、『雫』から派生してビジュアルノベルの時代へみたいに語る人もいますが、ゲームジャンルとしてのビジュアルノベルの時代なんて、一度も存在しないのですよ。
そんなの、当時のゲーム画面を並べるだけでも一目瞭然でしょうに。
高橋さんの影響を受けたと述べるライターの作品にしても、葉鍵の一角であるKeyの作品にしても、ほとんどはノベルゲームではあってもビジュアルノベルではないです。
それにビジュアルノベルとその後に普及したノベルとでは、設計思想が異なります。
だからリーフによってノベルゲーが普及したという事実はないのです。
ちょうど古参が去りつつ他方でリーフに勢いがあったときに、ネットも普及し始めましたからね。
それで信者が好き勝手に歴史を改竄して嘘をでっち上げ、それを後の若者が真に受けて信じ込んだりもしているようですけどね。
それから、サウンドノベルからビジュアルノベルという、ゲームデザイン上の影響の話をしていたはずなのに、いつの間にかシナリオ上の影響の話に論点をすり替えたり、高橋さんのシナリオ上の影響の話をしていたのに、そこからゲームデザイン上の影響力の話に論点をすり替えたりするから、私は葉信者の論理が破綻した権威付けが嫌いなのです。
まぁ、それもこれも、シナリオやキャラにしか興味がなく、ゲームジャンルに対する理解が乏しく、ごっちゃに混ぜて考えていることが原因なのでしょうね。
少し話がそれてしまいましたが、そもそも、クリックで読み進めながら選択肢で分岐するという構造の作品であっても、その中でテキストや絵の表示方法は幾つも考えることができます。
80年代から90年代半ばにかけて各社がいろいろ工夫する中で、安易にサウンドノベルを模倣し、テキストとキャラの絵を重ねてきたのがビジュアルノベルでして。
もう少しかみ砕いて書きますと、画面内のテキスト量を増やした方が、情報量は増えます。
だから、ストーリー性を増していきたいのであれば、画面内の情報量を増やすべく、テキストの表示量を増やしていった方が良いのでしょう。
例えば『Dr. STOP!』(1992)などは、できる限りグラフィックを抑えて、その分だけ表示されるテキスト量を増やそうとした作品でした。
しかし、テキストの表示枠を増やしてしまうと、その分だけ、キャラ等のグラフィックが表示される範囲が狭くなってしまいます。
グラフィックが大事になる作品ほど、これは致命的な欠点につながりかねません。
だから様々なブランドが、テキストの表示量を調整したり、あるいはテキスト欄の位置を可変式にして、グラフィックの中で見えなくても支障のない場所に表示させたり等、工夫をしていたわけですね。
ビジュアルノベルというのは、単にグラフィックのうえにテキストを表示させただけであり、他社の苦労や工夫を何もわかっていないかのような、安易な手法でしかないのです。
もちろん、後のビジュアルノベル形式の作品の中には、ビジュアルノベルの持つ構造的欠点を克服し、長所だけを活かそうと試みた作品もありますので、私はそういう作品は評価しています。
しかし、本作には、そういう工夫は見られないことから、評価できないのです。
当時流行っていたサウンドノベルに似ているということで、それで注目度は上がったのだけれど、キャラ絵が大事なアダルトゲームで、キャラを文字が隠してしまうこの形式はマヌケとしか思えません。
結局のところ、画面全体をテキストで覆う形式(ビジュアルノベル)は、エロゲ市場において、一度も主流になることなく、すぐに廃れましたからね。
つまり形式面では奇をてらっただけで、何も新しいことはないですし、効果の面でも全然優れていないのです。
<感想>
内容的には、電波物という点はこの当時珍しかったので、その点は一応評価に値するかとは思います。
ただ、エロゲ的に珍しいだけで、根本的にあまり面白いとも思えませんでした。
そもそも、このゲームにはパクリ疑惑もあったわけでして。
信者に言わせれば細部は異なるということなので、パクリではないとしましょう。
でも、異なる部分は独自に評価なされるべきだとしても、流用部分は評価に値しないでしょう。
そして電波な内容としてユーザーにインパクトを与えた肝心な部分は、他からの流用なのです。
となると、良かった部分は流用部分であり、肝心な部分が評価できないのですから、全体としての評価も伸びようがありません。
というわけで、個人的にはどうしても辛く評価せざるをえません。
何というか、シナリオ重視と称しつつ、ライター独自の世界観や設定などは皆無であり、その実態はアダルトゲーマーに馴染みのなさそうな、あまり知られていなそうな分野から設定を借用してくる程度のもの。
それをちょこっと弄れば、後はそれを知らないユーザーが支持してくれる。
一時期、シナリオ重視という名の幻想がまかり通った時期がありましたが、その実態は他所からの単なる流用だったりするわけで、そんなのが支持された時代でもあったんですよね。
そうした悪い流れ生み出した元凶はこの作品辺りからなのかもしれませんね。
まぁ内容に関しては、個人によって印象も変わりますからね。
仮に内容は良かったのだとしても、褒めるのはシナリオが良かったのだと、その内容だけを褒めるべきなのでしょう。
ゲームデザインに関しては、上記のように既に実質的なノベルゲーはあり、また「ノベル」と名付けた作品もあるわけで、本作によってノベルが誕生したというのは明らかな間違いでしかありません。
本作により新ジャンルが誕生したように言う人って皆、それ以前の過去の作品を全く知らないような人ばかりですからね。
そういう当時のニワカ初心者ゲーマーが支持したのが、リーフ作品ということなのでしょうね。
<評価>
好みは人それぞれで、例えば『TO HEART』は私には合いませんでしたが、それでも売上という客観的な実績が伴った作品ではあったのでしょう。
シナリオ面の質の担保というか、リーフへの信頼の根拠としては『痕』があります。
売れたのは『TO HEART』だしライト層は『TO HEART』を支持するけど、コアなファンは『痕』を高く評価してましたからね。
でも、『雫』には何もないですね。
リーフの場合1年の間にノベルを3作品だしたから3作品セットで扱われ、先駆けたる『雫』に先例的価値を認めたくなるんでしょうけどね。
もし『痕』と『TO HEART』がなければ、『MFD』同様にすぐに忘れ去られたでしょう。
まぁ、二次創作関連の人には早くから支持されていたので、現代的萌えゲーの始祖的な観点から、キャラゲーの元祖みたいな感じで位置付けるのであれば、その趣旨で書かれた文章に対しては、私は賛同するように思います。
しかし、過去の優れたストーリーの作品を知らないくせに、本作だけをプレイして、それでここからシナリオゲーが始まったみたいに語るのに対してだけは、断じて認められません。
仮に本作を褒めることは構わないとしても、だからと言って勝手に過去の作品まで知らずに貶すなよと、どうしても反発してしまいたくなりますね。
その手の信者が好む書籍の中で、過去の作品は知らないけれど、どうせ糞に違いないみたいに勝手に決めつけるコラムがありましたが、それを書く人にも、それを読んで違和感を覚えない人にも、私は全く信用ができないです。
ランク:D-(凡作)

Last Updated on 2024-11-17 by katan


コメント
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ここ最近は、ToHeartがようやく正当な評価をされるようになってきました。ここからノベルゲーが増えたとか、恋愛系・学園物が広まったとか、ストーリー重視になったなんかは叫ばれなくなり、アダルトゲーム業界において属性萌えを推し進め新規層を開拓した作品という立ち位置になっています。
ノベルゲー化に関しては、90年代後半のアダルトゲーム業界及びLeafの流れの研究が進んだのか、Windowsの開発環境によって齎されたものという認識になっています。
恋愛系や学園物の増加は天午後や同級生が元祖だと勘違いされているので、あまり喜ばしくはないです。ただそのおかげか、間に発売された恋愛系や学園物のアダルトゲームの研究が進んだのは悪くないのかなと。
ストーリー重視にしても、これが所謂シナリオゲーなら今のキャラゲーも全部所謂シナリオゲーになっちゃうよみたいな話になってきたので、今ではキャラゲーという評価に落ち着いてます。
他方で、雫に関しては未だに色々勘違いされていることが多いです。この差は何なんですかね?ライト層のファンが少ないから、信者の声も未だにデカいってことなのでしょうか。
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>桃の天然水さん
Leafはゲームデザインを毎回変えてますし、今なんてノベルゲームすら作ってませんしね
それと、はっちゃけあやよさんが紙芝居というジャンルでリメイクされたのも大きいと思います
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> 桃の天然水さん
『ToHeart』から~と語るのは、そもそもポケモンをRPGの元祖として語りだすくらいナンセンスなものだったので、私はそういう人に近付くことすらお断りしたいくらいだったのですが、ようやくまともに判断されるようになってきたんですかね。
『ToHeart』云々を言い出すのは、当時初めて触れた人たちが言っていただけなのでしょうから、時間が経てば次第になくなっていくのでしょう。
他方で、『雫』の場合、某学者とかが書籍として出していたりするので、そういう本を読んだ人たちが真に受けてしまうのが大きいのかもしれません。
どの分野でもそうですが、知らない分野の知識を深めるために、関連書籍を読むということは基本的なことです。しかし、残念なことにアダルトゲームに関しては、その書籍が嘘偽りに満ちた酷いものばかりで、かえって間違った認識を植え付けられてしまうというのが、大きな問題だと思います。『美少女ゲームの臨界点』とか、以前に酷評した記事を書いたことがありますが、ああいうものを信じてしまう読者がいる限り、勘違いする人はなくならないでしょう。
田所さんの『田所広成の反省記』のような良質な本がもっと出れば、状況は変わってくるかもしれませんね。
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> からあげクン(チーズ)さん
いろんな記事で書いていることでもあるのですが、Leafは『痕』が一番ゲーム性が低くて、その後は次第にゲーム性を増していき、脱ノベルゲーを進めていたわけで。
エロゲにおけるノベルゲーの増加と連動して語ること自体、無理がありすぎなんですよね。