神樹の館

2004

『神樹の館』は2004年にWIN用として、Meteorから発売されました。

田中ロミオ&希の館モノということで期待したのですが・・・

<概要>

ゲームジャンルは移動先をマップ上から選択するタイプの、ノベル系ADVになります。

あらすじは以下の通り。
卒業論文の資料を集めていた主人公・工月秋成は、大学の友人の麻子と共に山奥にそびえ立つ洋館にたどり着く。
その巨大な館にはメイドの紫織、双子の少女・斎と伊美、姿を見せない館の主人。
たった4人しか住んでいなかった…。
二人は研究の資料を探すため、しばらく留まることを決意するが、徐々に引き返せない領域へと近づいていくのだった…。

<ストーリー>

本作は田中ロミオさんの『CROSS†CHANNEL』の次の作品ということで、当時はそれで注目した人もいたのでしょう。
ただ私は、『クロスチャンネル』をプレイして、むしろもうダメかなと見限りつつあったところに、本作では監修という話を聞いたので、当初これはスルーだなと思ったものでした。
私の場合、ロミオさんのテキスト自体は基本的に好きなのですよ。
単に設定やストーリーの粗や製作姿勢が気になるだけで。
だから別の人の企画でロミオさんが書くのなら、今でも発売日に即買いますよ。
でも、その逆でしょ、そんなもん意味ねぇ~って思いましたから。
※まぁ実際には、一部のルートは担当したとのことですが。
加えて、発売後の評判も特に高いというほどでもなかったので、当初は完全に見送る予定でした。

事情が変わったのは数年後で、『霞外籠逗留記』(2008)をはじめとする、raiLsoftの希さんの作品を知ったことにありました。
希さんのテキストは文学風のテキストであり、人によっては読み辛いと感じるだろうし、自分も必ずしも好きというほどでもないのですが、自分の好みとは関係なしに、業界にこういう人がいても良いよなと思ったわけでして。
文体という観点からは、オンリーワンのような存在でもありますからね。
絵や音やその他の要素との組み合わせ次第では、いつか大化けするのではと思い、これまでにも何本もプレイしてきています。
その希さんが本作のテキストを担当していると知り、それで本作のテキストが当時から賛否あったことに合点がいくと共に、ここに来てようやく興味が沸いてきたというわけです。

というわけで、希さんのテキストがどういうものか事前に知っていたので、私はプレイしながら、あぁ~なるほどなって思ったのですが、ロミオテイスト目当てで初めて触れた人は少し面喰ったかもしれませんね。
泉鏡花を意識した雰囲気に、希さんらしい文学風のテキストで、これは読みにくいと感じる人もいるのかもしれません。
逆に、こんな雰囲気のテキストを書くライターは業界にいなかったと驚き、それで希さんのファンになる人もいるでしょうけどね。
ただ、今現在の観点、すなわち、後から振り返る結果論になってしまいますが、その後のraiLsoftでの個性を全面に押し出した作品よりも、本作の方が数段読みやすくなっています。
もっとも、その代わりに希さんの個性も少し消されていますので、raiLsoftの作品ほどの濃さやインパクトもないので、ファン視点からは、ものたりないかもしれません。

したがって、思ったより大人しいなとは感じたものの、テキストに関しては概ね予想通りでもありましたし、良好だと思います。
まぁraiLsoftの作品になると、ちょっと合わない人も増えそうですが、本作程度なら文学小説を読んだことのない人は別として、大概は大丈夫だと思います。

ただ、本作は館モノです。
PC98時代後期には館モノが流行ったりもしましたが、その時の館モノとは淫靡なものだったのです。
また、文学とは、えてしてエロいものです。
館モノってだけならば、別にエロをすぐに連想することもなかったかもしれません。
もちろん、文学から即エロにつながるわけでもありません。
しかし、館モノに文学テイストと、二つも間接証拠を並べられるとね、どうしてもエロを連想してしまうのですよ。
しかし、本作のエロは薄く、全然もの足りません。
普段ならエロくなくても気にしない場合もありますが、この題材でこの雰囲気で、散々エロ方面への期待を煽っておいて、それでこの仕打ちなの?と思うと、アダルトゲームとしては失格ですよね。

それと、プレイをしていて、これはシステム面も絡んでいるかもですが、妙に『夢幻夜想曲』が頭に浮かんできました。
とにかくプレイ中は、それが凄く引っかかっていまして。
そして、クリア後に知ったのですが、どうも本作は『夢幻夜想曲』を下敷きにしたようで、言わばオマージュみたいなものだったんですね。
となると、プレイ中に感じたことは間違っていなかったということでしょうか。

この業界におけるオマージュには、基本的に否定的ではあるものの、それでも面白ければ今回は例外とか言っていたのでしょうが・・・
全体的に酷く劣化しているような。
館であることを物語と密接に結びつけた『夢幻夜想曲』に対し、本作は単に舞台にしただけって感じでもありますし。
設定をパクった・・・と言うと聞こえが悪いから、オマージュでも下敷きでも何でも良いけれど、せめて何年も前の作品は超えようよとか思ってしまうわけで、本作のあっさりしすぎた内容にガッカリしてしまいました。
何かもう過去の大傑作の表面だけなぞりましたみたいな、単なる劣化版って感じで。
泣きゲーブーム時にはkey作品もどきが増えましたが、そんな感じですね。
言うなれば、key作品やった後の『SNOW』みたいな、そんなガッカリ感。
それとね、例えば、エロの薄い泣きゲーが支持されえたのは泣けたからであり、泣けもしないエロ薄ゲーはただのゴミです。
同様に、エロくもない、代わりとなる独自性も生み出せていない館モノなんて、一体どれほどの価値があるのかと。

ちなみに、ストーリーはバトルのない伝奇・ホラーであり、トゥルーシナリオはそれなりに楽しめるのですが、そこに辿り着くまでが薄くもの足りなかったです。
まぁ、その薄さが結果的には、ラストの厚みを生み出さないことにもつながるのでしょうが。

<ゲームデザイン>

上記の様に、本作はマップ上から移動先を選ぶタイプです。
移動先に何もないとすぐ戻されるし、移動しても大した意味がなかったりで、今更このシステムにした理由が伝わってきません。
何で今頃こんなシステムにしたのかなと、プレイ中は不思議に思っていたのですが、『夢幻夜想曲』がベースにあるなら、それも納得というもの。

ただ、『夢幻夜想曲』の場合には物語の内容から、まだこのシステムをシナリオとの関連性で好意的に解釈しえたのであって、物語を変えればシステムの必要性も変わってくるのです。
館との結びつきが弱くなっている本作には必要とは思えず、もっと違った形もありえたでしょうに。
表面的にシステムをなぞるだけでなく、その使われている意味を少しは考えようよと思うわけで。
仮に必要性があるのだとしても、もう少し工夫のしようもあったでしょうに。
10年近くも後の作品なのですから、改善方法だってあるでしょう。

今回は表面的に真似ただけということかもしれませんが、結果的にロミオさん絡みの作品は、いつもゲームデザイン面で不満を持ってしまいます。
繰り返しますようにテキスト自体は好きなのでね、アニメの脚本でも任されれば今でも喜んで見ると思います。
でも、ゲームクリエイターとしては根本的なところが欠如しているようで、ラノベなり何なりに行ったのは正解なのだと思ってしまいます。

<評価>

何でこうなったのかな~最低でもハズレはないと思ったんだけどな~
ロミオさんの作品で名作としたのもあるし、希さんの作品も好きでプレイしているし、館モノというジャンルも好きだし、元となった作品も大好きなのだけれど、そして本作自体も部分的には悪くないのだけれど、全体として組み合わせを見るとチグハグだし、それぞれが本来有する魅力すらも薄まってしまったようでして。
総じて、とにかく薄っぺらい作品だったなと。
それぞれのライターの信者ならそれなりに楽しめるかもだけれど、とりあえずPC98以前からの館モノファンには薦める気にはなれないし、個人的にも非常に残念な作品でした。

結局のところ、この辺がロミオさんの欠点なのだろうなと。
クロスチャンネルにしても、あの当時に新規に入ってきたユーザーにうけたのであり、古参のユーザーは過去の名作の寄せ集めと厳しく評している人が多かったです。
クロスチャンネルを褒めるか否か、というか新鮮に感じるか否かでも、古参かそうでないか分かりますし。
本作にしてもそれ以外にしても、ロミオ作品は何かの上に乗っかったものばかりで、オリジナリティや個性を感じられないのです。
一部で人気が高いわりに売れないライターでもありますが、ファンからすれば何でこのシナリオで売れないのかと思うかもしれませんが、そうでない人からすれば2番煎じばっかのライターなんですよね。
だから次への興味も持てないから、売り上げにもつながらないと。
また上っ面だけつなぎ合わせているから、どれも根の無い軽い作品になるのでしょう。
どっかで挑戦ができないとか書いてたらしいですが、挑戦ってパクリのことなのですかと聞きたくなるようでもあり、そんなの認められる方がおかしいでしょと思ってしまいます。
まぁゼロ年代前半に活躍したライターには、そんな人多かったですけどね。
何も知らない人はファンになり、そうでない人にはそっぽを向かれる。
だから信者を生みつつも売り上げが伸びないのも当然なのでしょう。
本作をプレイしたのは『Rewrite』の後だったのですが、改めて誰かの原作の作品の脚本なら楽しめるだろうけれど、そうでなければ楽しめないのだろうなと再認識したものでした。

ランク:D(凡作)

Last Updated on 2026-02-07 by katan

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