セイレムの魔女たち

2003

『セイレムの魔女たち』は2003年にWIN用として、rufから発売されました。

菅沼恭司さんの歴史ものということで期待した作品でした。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

本作の舞台となるのは1699年の現在のアメリカであり、具体的には「セイラム魔女裁判」の後日談的な感じで、史実をストーリーに織り込んだ作品となります。

1699年の五月、一人の青年が新大陸へ、英国植民地へと旅立った。
太平洋を越え、爛熟の都ロンドンからセイレムと呼ばれる小さな街へと辿り着いたその青年
――彼の名はケヴィン・バーレス。
ピューリタンの牧師、ケヴィンは、自分の生まれ故郷でもあるセイレムに赴任、その小さな村を教区として牧師の仕事に励むのだが・・・・・・。

<感想>

本作は複数ライターであるものの、メインのライターが菅沼恭司さんであり、本作の前の『奴隷市場』と同じような系統の作品になりますね。
作品の特徴としては、基本的にどれも事前にきちんと調べており、しっかりとした土台の上に物語が積み重ねられていきます。

アダルトゲームのライターには、テキストが自分に合う人はそれなりにいますが、土台作りがしっかりしていると感じる人は、ほとんどいません。
まぁ、それができていれば、プロの小説家(ラノベ除く)としてやっていけるでしょうし、そこが小説家との違いなのかもしれませんけどね。
それだけに、この部分がしっかりしている菅沼さんの作品は、それだけで相対的に良く見えるというものです。

また、単純に史実を織り交ぜた歴史ものは少ないですからね。
その希少性と個性を以て評価することもできるのでしょう。
個人的には、実は歴史ものって好きではないんですよね。
私の場合、直接専門書の類にあたった方が良いと考えてしまいますから。
でも、こういうアダルトゲームがもっとあっても良いと思いますので、その意味では非常に応援したいところでもあります。

他方で、ここが菅沼作品の弱点でもあるのですが、他所の作品が5の設定から水増しして10を書こうとしているのに対し、菅沼作品は10の設定で5しか書かないように見えてしまう傾向があります。
もっと書けただろうにとか、勿体ないなといつも思わされますから。
その弱点が、悪い方向で強調されたのが今作なのかもしれません。
例えば盛り上がれるところをあっさり済ましてしまうというのなら、勿体ないなと思いつつも普通には楽しめるのですけどね。
それが過去の作品の傾向でしたし。
しかし本作の場合は、土台は良いものの、そこに積み重ねる実際の物語、キャラの関係性において、伏線とかがほったらかしになったところがあり、結果として未完成のような作品になってしまいました。

それと、これは複数ライターの弊害なのかもしれませんが、古い時代を扱っているにもかかわらず妙に現代的だったり、変に浮いているキャラがいたりして、せっかくの雰囲気がぶち壊しになりかねない印象も受けました。
この辺は好みもあって、ただ真面目で古臭いより、ちょっと現代的に噛み砕いた方が入っていきやすい人もいるかもしれません。
ただ、ライターのファンが求めていた方向とは異なると思いますし、新規層の獲得も狙ってどっちつかずになったという印象を抱きました。

<評価>

総合では佳作といったところでしょうか。

珍しい分野ではありますし、これがデビュー作なら即代表作になりますから、良作扱いにしていたのでしょうけどね。
過去にも既に同じ方向性の作品があって、その過去作の方が優れていると思ったことから、どうしても1ランク劣って見えてしまうものですから。

個人的には、まずは『奴隷市場』を先にプレイしてもらって、それで同系統の作品をプレイしたいとなった方には、本作もプレイしてもらいたいですね。

ランク:C(佳作)

XPソフトセイレムの魔女たち

Last Updated on 2025-08-25 by katan

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