『黒の断章 THE LITERARY FRAGMENT』は1995年にPC98用として、アボガドパワーズから発売されました。
95年というのは、ストーリーの優れた探偵物が多かった気がします。
そして、その中の1本が本作でありました。
<概要>
ゲームジャンルはポイント&クリック式ADVになります。
本作は、探偵物ではあるのですが、どちらかというと別の側面、当時としては珍しいクトゥルー神話を扱ったホラーとしての要素に、猟奇的殺人事件を扱ったサスペンスとしての要素、これらが上手く融合し濃密なストーリーになったことで評価された作品でした。
イメージ的な話になりますが、『EVE バーストエラー』は幅広い層に支持され、もっと暗めでコアな作品を好む人には本作が支持された感じですかね。
他方、ゲーム性も求める人は『猟奇の檻』にいくと。
三者三様で、1995年はアダルトゲームの探偵物ADVファンとしては良い年でしたよ。
(まぁ、厳密な意味での推理物でないのがややネックではありますけど・・・)
<感想>
ストーリーは上記のように基本的には探偵物になるのですが、後半でクトゥルー色が非常に強くなっていきます。
そのため、純粋な推理物を期待した人には、少し求めたものと違ったものになってしまうかもしれませんが、1つの物語としては非常に良く出来ていたかと思います。
全てが絡み合っている感じで、無駄な要素がほとんどないんですね。
この辺は非常に上手かったです。
98時代でも、かなり上位の方にくるのではないでしょうか。
グラフィックやサウンドもストーリーの雰囲気と非常にマッチしていましたし、どんどん物語に引き込まれていく作品でしたね。
ただ、問題があるとすればシステムでしょうか。
本作のゲームジャンルは、ポイント&クリック(P&C)式のADVでした。
基本的に私はP&C式は好きだし、また質が高いのが多いから褒めることが多いのですが、P&Cだからといって全てを褒めているわけではありません。
当然、P&C式にだって良し悪しはあります。
そして、残念ながら本作はこの部分が弱かったんです。
例えば同じ年に出た『遺作』もP&C式ですが、反応の多彩さ、謎解きの要素、クリック箇所の分かりやすさ等、全ての面で『遺作』が上回っていました。
本作はクリックできるポイントがどこなのか、またどこをクリックすれば先にすすむのかとか、いろいろ分かりにくかったわけでして。
もう少しゲーム部分にも配慮されていたらと思うと、ちょっと勿体無かったですね。
もっとも、P&C式としては出来は悪い方ですが、それでもただ読むだけのゲームよりは十分やりがいはあります。
そのため、長所にはなりえないけれど、決して致命的な欠点でもないと言えるでしょう。
<評価>
結局ゲーム部分は及第点で、ストーリーで大きくポイントを稼ぐタイプのゲームってとこでしょうね。
特にホラーと猟奇的な雰囲気が好きな人には、今でもオススメの1本と言えるかと思いますね。
まぁ、でもこれはP&C式に慣れた私の感想ですので、この手のゲームに慣れてない人にはつらいかもしれません。
これでP&C式が初体験だと、システムに悪い印象を抱きかねません。
そういう点では、少なくともP&C式の初心者向けではないんですよね。
そもそもこれ、サターンでも出ていますが、画面クリックタイプを家庭用ゲーム機でやるってこと自体、私には抵抗がありますね。
こういう類のゲームはマウスでプレイするから良いのであって、コントローラーでやるものじゃないと思いますし。
YU-NOもそれ程でもないっていう人に限ってサターンでやったりしてますが、画面クリックを堪能するのにゲーム機は向いてないんですよ。
ゲームとしての楽しさが伝わりにくいから、どうしてもストーリーだけの評価になりがちなわけで、それでも楽しめれば良いですが、やっぱり面白さをかなり見落としてしまうと思います。
本作のように基本的なシステムに難があると、更にゲーム機では苦痛になるわけで、私もサターンで初めてやってたら評価していなかったかもしれません。
とはいえ、それでも世間では結構サターン版も評価されているので、裏を返せばそれだけストーリーが良かったことの証明にもなるんですかね。
最後に、本作は三部作の最初の作品なわけで、実は最後の『人口失楽園』はまだ出ていません。
もう無理なのかもしれないけれど、いつの日か出てくれることを望みたいものですね。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2024-11-02 by katan
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