『彩花 ~誓い~』は、2007年にWIN用として、華子鹿から発売されました。
当初、彩花三部作として予定されていた作品の1作目であり、演出が非常に優れた作品でした。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・穏やかな風が吹き清廉な水が溢れ、実り豊かな彩華国。
この地は神の花――彩花の恵みによって護られている。
白・金・銀・翠・蒼・紫・赤・黒。
八色の恵みを湛えて、花は咲き誇り満ちていく。
一年に渡って咲き続ける彩花が、唯一散りゆく年の瀬のこと。
彩華国の長、黒氏の妹・葉月は年越しの『花宴』で、彩花に感謝を捧げる『花乙女』の任に抜擢される。
花を散らした彩花の恵みを宿す依代となり、年明けには感謝と共に花へと恵みを還す。
純粋なる乙女だけに許される巫女は、彩華国の少女にとっては憧れの的だった。
葉月も例外ではなく『花乙女』の大役に選ばれたことを誇り嬉しく思っていた。
若くして国を支える黒氏であり、優しい兄でもある深影。
深影の親友であり、神職である色理師達を束ねる白氏の白。
明るく元気でいつでも側で見守っていてくれる従者の紗茶。
初めて降りた街で出会う、不器用な優しさを見せてくれた少年。
笑顔が眩しい少女。
『花乙女』になって、世間知らずの箱入り娘だった葉月の世界は驚くほどに広がっていく。
しかし、希望の光に満ちていた彼女の前途に、闇が忍び寄る。
――国中の彩花が花をつけない。
必ず咲くはずの、永遠の恵みの花。
彩花が咲かないということは、彩華国から神の恵みが失われたことを意味していた。
黒氏深影は『花乙女』に勅命を下す。
――花を咲かせるために、色の恵みを持つ者を集めよ。
葉月は花を咲かせられなかった責任を負い、街へと降りる。
色の加護を強く受け、特異な力を持つ者達の協力を得て、再び花の恵みを取り戻すために。
咲かない花、恵みの失われた大地、不安に揺れる人々。
裏で絡まり行くのは思惑の糸。
めくるめく運命の花は咲くのか、それとも散ってしまうのか――。
<ストーリー・感想>
本作は、彩花三部作として予定されていたようです。
なお、予定されていた2作目が『彩花 ~想い~』であり、『彩花 ~想い~』は、「彩花~誓い~」の時間軸で進む、葉月の知らない隠れた2つの物語が収録予定でした。
3作目は『彩花 ~願い~』で、当初は2008年に発売予定でしたが、結局、本作だけで終わってしまいました。
本作のあらすじは上記のとおりで、ファンタジーもの、かつ、女性主人公の、一般向け同人ノベルになります。
最近はあまり読まなくなったのですが、ゼロ年代前半から後半にかけて、コバルト文庫とかの女性向けのラノベ、その中でも特に、ファンタジー作品を読み耽っていた時期がありました。
雰囲気的には、本作は、それらに近いでしょうか。
女性主人公ではありますが、純粋にファンタジー作品であり、恋愛要素とかは全然ありませんので、男女関係なく楽しめる内容になっています。
面白い作品だとは思いますが、エロなしの一般向けの同人PCゲーで、BLとかでもないとなると、どうしても注目されにくいでしょうね。
これでは、埋もれてしまっても仕方ないのかもしれません。
<グラフィック・演出>
ただ、本作をこのまま埋もれさせるのは惜しいわけでして。
というのも、本作は演出が抜群に優れているのです。
演出・・・といっても、ド派手な演出があるというのではなく、カメラワークが巧みというか、画面の使い方が非常に上手いのです。
まずプレイを開始した直後から違っていました。
冒頭のシーンからOPムービーにつながる場面でのカメラワーク。
ここがもう秀逸で、最初から心を鷲掴みされたような気持ちになりました。
OPが終わり、本編が始まりますが、本作は、画面全体にテキストが表示されるタイプの、いわゆるビジュアルノベルという構造になっています。
この手のタイプは、大量のテキストを読ませることには向いていますが、きちんと考えて作らないと、作品としての質が著しく損なわれてしまいます。
特に初期のビジュアルノベルは酷い作品も多く、私も辛口になりがちだったりします。
しかし本作は、テキスト表示と演出が被らないように配慮されており、その点も好印象でした。
また、この頃の商業ノベルゲーだと、例えば下校シーンとかで、キャラが横向きに動くだけでも評価されがちでした。
本作は、横向きにキャラが動くシーンもありますが、2人並んで奥から手前に動くという、縦の動きもあり、プレイしていて、おぉっと驚かされたものです。
他にも、例えば下のイベントCGにしても、ここから画像が横に動きます。
そうした横のひろがりがあるだけでなく、画面の奥行きを意識した構図や動きも多く、カメラワークが抜群で、とにかく良く動く作品といえるでしょう。
ただ、ここで勘違いしてほしくないのは、単に動き回ってるから良いとか、そういう話ではないということです。
ゼロ年代後半のノベルゲーの中には、立ち絵をピョンピョンさせ、動き自体は増えてきたという作品もありました。
動かないよりは動いた方が良いのでしょうが、無意味に動いても、ストーリーとの相乗効果は生み出せませんし、それでは高い評価はできません。
ストーリーに沿った演出がなされてこそ、グラフィックとストーリーとの間に相乗効果が生まれるのです。
本作をプレイしていて感じたのは、ストーリーを効果的に表現するために、とにかく画面全体を意識していること、それは単に画面内の表面的なものではなく、画面の外や奥までも意識したものであり、それだけ丁寧に作られたという印象が強いのです。
プレイをしていて、なるほど~と唸るしかないといった作品なのです。
<評価>
総合でも名作といえるでしょう。
演出、特に画面の使い方という点では、当時最高峰の作品だと思います。
うん、これは本当に凄かった。脱帽です。
できれば、続編も見てみたかったものですね。
ランク:A-(名作)
Last Updated on 2024-04-19 by katan
コメント