Rookies (ルーキーズ)

1997

『Rookies (ルーキーズ)』は1997年にPC98用として、海月製作所から発売されました。

いつになっても忘れられない作品があります。
斬新なシステムがあるわけでもなく、派手な演出があるわけでもありません。
でも、私はこのゲームが好きなのです。

<概要>

ゲームジャンルはマルチエンディングのコマンド選択式ADVになります。
なお、ノベルゲームとの中間的な構造でもあり、同じコマンドを何度も試す必要はなく、サクサク進んでいきます。

ストーリーは、いわゆる探偵物になります。
主人公は全く依頼の来ない探偵であり、30歳の誕生日の際に彼女から将来について諭されます。
今度失敗したら探偵を辞めるという条件の下、主人公は、ある女子校に蔓延する麻薬の調査をするため、用務員として、その女子校に潜入することになります。

<感想>

探偵物ではありますが、謎解きに対する比重は少ないでしょう。
派手なトリックとかもありませんしね。

むしろ、主人公の心理描写等に比重が置かれています。
30歳にはなったものの、仕事が全く上手くいっていない主人公。
彼の挫折と、そこから這い上がろうと努力する姿が、丁寧に描かれています。

また、女子校ということで、当然可愛いヒロインらが登場します。
彼女らと主人公の掛け合いも十分楽しいのですが、それ以上に男性キャラが良い味を出していましたね。
主人公とライバルのやり取りの方が熱くて、凄く楽しかった記憶があります。
ギャルゲーやアダルトゲームには魅力的なヒロインが必須でしょうが、本当に良い作品の多くは、男性キャラも魅力的なんですよね。
そう再認識させてくれる作品でもありました。

このゲームがマイナーな感じがするのは、ある意味仕方ないのかもしれません。
そもそも97年のPC98の作品なので、その時点でプレイできる対象が限られてしまうのですが、それ以外にも、いわゆる売れ線とは明らかに違いますからね。
強烈な萌えもなく、派手な仕掛けもない。
バトル要素とかもないし、王道な学園物でもない。
主人公はさえない三十路男でしかなく、近年多い俺ってつぇ~な格好良い主人公でもありませんし。
そのため、最近の主流路線が好きな人が本作をプレイして楽しめるかは、正直私にはわかりません。
今の売れ線に含まれている要素は、本作にはあまりないですからね。
地味なゲームだな~って思う人も、きっと出てくるでしょう。

でも逆に、最近の売れ線にはない魅力が、この『ルーキーズ』にはあると思うのです。
丁寧に描きつつも途中はテンポ良く進み、最後は盛り上がる。
本作は決して派手ではないけれど、とても纏まっているんですよ。
起承転結がしっかりしているんですよね。
だから安心して楽しむことができるのです。
これがしっかりと構成されているゲームって、ありそうでいて案外少ないと思います。

そこに三十路男の葛藤の描写や、魅力的なサブの男性キャラ陣も加わるとなると、本当に少ない気がするのです。
一見するとありがちなゲームではあるのだけれど、よくよくみると代替が利かない稀有な存在なのかなとも思ったり。
最近のノベルに飽きてきたよって人や、自分に合わないって人には、むしろこのゲームから得られるものの方が多いのではないでしょうか。
私がいつまでも忘れないでいるっていうのも、そうした所に理由があるのかと思いますね。

また、ゲーム内で「夢はいつでも未来形」という言葉が出てきますが、その言葉がとても印象的でしたね。
その言葉は、三十路の主人公を支えてくれる恋人の言葉として出てきます。
最近は内助の功って言葉があまり使われなくなりましたが、男性を影から支えてくれる女性って良いですよね。

<グラフィック>

海月製作所は、「ジェリーフィッシュ」の旧称です。
海月製作所としては、豊富なアニメーションの使用と、98最後の大作ゲームとして話題を集めた『ラブエスカレーター』が有名です。
ジェリーフィッシュとしては、『GREEN』や『LOVERS』の印象が強いでしょうか。

ちなみに、海月製作所の「海月」は「うみつき」と読みます。
普通は「海月」と書いて「くらげ」と読みますので、そうすると「くらげせいさくしょ」となりそうなのですが、このブランドに関しては「うみつきせいさくしょ」で良かったはず。
裏の裏をかいたみたいで、何だかややこしいですね。

総じてブランドイメージとしては、アニメーションにこだわっているという印象ですが、本作は珍しく(というか、唯一?)アニメーションを使っていません。
そういう意味では、ブランド的には異端だったのでしょうね。
ただ、アニメーションという魅せることを意識したブランドだからでしょうか、一枚絵においても、奥行きであるとか、空間的な位置取りであるとか、シーンを意識したCGが多かったように思います。

また、アニメこそ使っていませんが、原画には当時とても人気が高かった「たくま朋正」さんを起用しており、それが本作のうりとして紹介されていました。
そもそも私も、原画目当てで購入したんですよね。
当時の購入者の多くも、たぶんそうだったんじゃないでしょうか。

実際に購入し、グラフィックにはとても満足できたわけですが、予想外にと言ったら失礼かもだけど、前述のとおり、むしろストーリーの方が良かったわけでして。
これは思わぬ拾い物というか、当たりを引いたな~って思ったものです。
ここのブランドでは、この『ルーキーズ』が一番好きですですね。

<評価>

本当に、地味だけど良く出来た作品でした。
総合でも、十分名作といえるでしょう。
主観的には、かなり大好きな作品でしたし、この作品のライターの作品は、もっとプレイしてみたかったですね。

前述のように、ありそうでないタイプの作品ですので、今でも楽しめる人って結構いると思うのですよ。
刺さる人には刺さるというか、学生のうちだと良さが分かりにくいかもしれないけれど、主人公と同じくらいの年になると凄く刺さってくるタイプの作品だと思います。
PC98時代のゲームが好きなのに、時期的なものがあって本作を見落としていたのなら、検討してみる価値はあると思いますね。
※追記になりますが、実はこの作品が好きだったとか、プレイしてみたら凄く良かったという声が一番多いのがこの作品だったりします。

ランク:A(名作)


ルーキーズ

Last Updated on 2024-12-06 by katan

コメント

  1. SECRET: 0
    PASS: 08e8c551aca4da1d8f68e704ba4ad00d
    ご無沙汰してます、あやちだいちです。
    最近まで忙しくてほとんど家のパソコンにすら
    向かってませんでした。
    遅いコメントで申し訳ないのですが…汗
    久しぶりに時間ができたんで98のADVをやろうと
    katanさんの記事読んでRookiesに決めて、無事ED、笑
    なんか探偵物がやりたかったんです。
    このゲーム初プレイだったんですが
    ストーリーよかった… 特に主人公の心情、すーっと入ってくる流れ
    温度感、どれをとっても楽しめました。
    katanさんの高評価ものは安心してプレイできますね。
    次はどれにしようか… 検討中
    そう言えばゲームの記事はほとんどこちらに移られたんですね。
    もしよかったらこちらの方も相互リンクを
    してもよろしいでしょうか…

  2. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    お久しぶりです。
    私もPCが故障していて、2月はほとんどブログには触れられませんでした。
    『Rookies』はお気に召したようで良かったです。主人公の年齢が高いゲームってそれだけで冷遇されがちなので、いつも残念に思ってしまいます。個人的にはこういうゲームがもっと増えて欲しいものです。
    >特に主人公の心情、すーっと入ってくる流れ  温度感
    そうなんですよね。雰囲気がとても良くて、本当に好きな作品でした。
    ブログはほとんどこちらに移転しました。よろしいのでしたら、こちらこそ相互リンクをお願いします(そもそも、こちらからお願いしようとしたら休眠期に入られてしまったので、お願いできずにいたんです…)。

  3. SECRET: 1
    PASS: 49a4cf478dc45c75a37d85027642e517
    突然コメントすいません。
    まずは、ありがとうございますを言わせてください。
    かれこれ20年前に遊んだこの作品。
    もう一度プレイしたいと思い、
    ずっと名前が思い出せず。
    ついにこれかも?とRookiesにたどり着き
    検索してここへたどり着きました。
    今まで様々なゲームを色々なハードで遊んできましたが。私の1番すきなゲームはこの作品です。
    どれだけ探しても既に購入することはできないみたいで。
    このページの記事を読みながら、共に当時を振り返り、よいひとときを過ごすことができました。
    夢はいつでも未来形!
    20年たってもそう思える。
    ありがとうございました。

  4. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    コメントありがとうございます。
    いろんなハードでゲームをやってきて、それでもこの作品が一番好きという人が増えて、私も嬉しいです。
    この作品は、PC98末期の作品なので、知っている人が少ないです。
    でも、最近になって知ってプレイした人でも、皆絶賛しているようでして。
    20年も前の作品ですし、斬新なシステムがあるわけでもないのですが、ストーリー・テキストに魅力のある作品ですからね。
    時代を超えて、プレイした人の心にいつまでも残り続けることのできるような、そんな作品なのでしょうね。
    主観的には非常に大好きな、出会えてよかった作品ですし、また再評価し直したいと思います。

タイトルとURLをコピーしました