『プライベートアイドル』は、1995年にPCEのスーパーCDROM用としてNECホームエレクトロニクスから発売されました。
PCEの性能を最大限まで活かしきったゲームでしたね。
<総論>
ハードの性能を最大限に利用したゲームを今やってみると、何だか妙に懐かしくありませんか?
ああ~、この時代はこういうもんだったなって。
そのハードによって出来たこと、そしてできなかった限界、そのハードの歩んだ道のりというものが、一本のゲームを通じて全部伝わってくるような気がするのです。
まぁ、そういう作品がアクション系であることも多く、アクション系をあまりやらない自分には、縁がない場合も多いですけどね。
PSやSSと言ったいわゆる次世代機に時代が移る前、PCエンジンとスーパーCD-ROMなる物がありました。
PCEはファミコンと同じ8ビットながらも、CD-ROMを採用したことで、豊富なアニメーションと音声を使うことが出来ました。
既にPSもSSもPCEの後継のPC-FXも発売されていた95年。
その年に、PCEから発売された『プライベートアイドル』もまた、そんなハードの性能を最大限まで活かしきった一本なのでしょう。
<感想>
豊富なアニメーションに、フルボイス。
いかにもPCEのゲームらしいゲームであり、『プライベートアイドル』はPCEの持つ魅力を、存分に発揮していました。
今でも一枚絵で口パクのない作品も多いだけに、この時点で一枚絵も含めて音声と口パクがあることは、かなり大きいですよね。
それから、本作の主人公であるメイ・スターの声は、小野寺麻理子さんが担当しています。
この方、わずかに2年間だけしか声優活動を行っておりません。
そのため、若いユーザーとかだと、知らない方も多いかと思います。
他方、そのわずか2年という活動期間のわりには、当時のPCEユーザーからは、高い確率で名前が出てくるように思いますし、そのあまりに早い引退を惜しむ声も、よく聞いたものです。
その小野寺さんの代表作が、PCE版『同級生』の人気ナンバーワンヒロインだった田中美沙と、本作の主人公であるメイ・スターになります。
どちらも95年の作品なので、私としては、95年に一躍注目声優になったと思ったら、その矢先に引退してしまったようなもので、だからこそ、もっと他の作品でみてみたかったと、余計にももったいなく思ってしまうわけですね。
ただ、様々なものを取り込んだのは良いのですが、如何せんハードの性能が低いですからね、あまりに多く詰め込んだために、少し重くもあったり。
そこで、アーケードカードという拡張機器を使うと軽くなり、アーケードカードの存在意義を激しく実感することになります。
これがPCEの能力を最大限まで活かしきった瞬間だったんでしょうね。
また本作には、セーブデータを保管するメモリーベース128の管理ツールも付属し、これが非常に役立ちました。
そもそも、これがないとセーブデータの管理が出来ないから、もはや必需品でしたね。
PCE末期の作品で知名度は高くないのに、出来は良いし、管理ツールもあって手放せない作品ということもあり、一時期はプレミアだったり入手困難な作品でもありました。
『プライベートアイドル』。
それはPCEを象徴する一本であり、同時に絶対に手放すことの出来ない一本だったのです。
<ゲームデザイン>
というわけで、演出面がまず優れた作品なのですが、基本となるゲームジャンルはADVで、内容的には推理ものになります。
ADVとしての細かい内容についてですが、本作はRPGのように、マップをうろつきまわるタイプの移動式ADVになります。
もっとも、画面クリックの要素がありませんで、『同級生』よりも『下級生』の方が近いと言えるでしょう。
あるいは今の3DADVを2Dでやったような感じですかね。
ただ、本作には明確な時間軸はありません。
「明確な」と言ったのは、プレイヤーの行動で細かく時間は経過しないけれど、NPCらは一定時間によってそれぞれが自由に動き回っているからです。
基本システムはこんなところですが、このゲームでは、むしろミニゲームが良い味を出しています。
地図を作成したり、迷路があったり。
また、選択肢を選んでいくことで相手を追い詰めていく所なんかは、推理ゲームらしくて凄く盛り上がりましたね。
どれも推理の過程に必要なミニゲームであり、シナリオとゲームが上手く融合しているからこそ、感情移入して楽しむことができるのです。
推理ADVとしてぜひ知っておいてもらいたい要素が豊富でしたし、推理物好きには本作と『悪逆の季節』は必修科目でしょう。
<ストーリー>
ストーリーは推理もので、章仕立てになっており、全3話の計4部という構成となっています。
舞台が街外れの洋館に、孤島に、豪華客船だったりしますからね。
推理物の定番中の定番をしっかりと押さえています。
横溝作品とか、古い推理小説とかも好きだよって人には、ツボにくるかもしれません。
ちなみに、主人公の「メイ・スター」はいわゆるボクっ子です。
前年に『闘神都市2』をクリアしたこともあり、すっかりボクっ子の魅力に取り付かれていましたので、これまた私にはとても刺さりました。
<評価>
推理ものとしてのお約束をきっちりと押さえた上で、その上に新たなシステムや魅力的なキャラが加わり、なおかつ管理ツールというオマケまでついてくる。
PCEの限界に挑んだPCE末期の傑作であると同時に、推理ADVの新たな方向性・可能性にも挑んだ意欲作でもあったと言えるでしょう。
総合でも名作であることは間違いなく、実にお見事な作品でしたね。
ランク:AA(傑作)
Last Updated on 2024-11-02 by katan
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