『お嬢様を狙え!! Get Lady!!』は1997年にWIN用として、ScooPから発売されました。
今になって、いろいろ言いたいことがでてきたゲームですね。
keyの麻枝さんも密かに参加していたということで、ファンなら見逃せないかも。
<概要>
こういうのは、状況から話した方が分かりやすいのかもしれませんね。
本作の場合は、後にサターンにも移植されています。
それで知った人やプレイした人とは、たぶん見え方が違っていると思いますので。
というのも、本作は恋愛系のノベルゲーであり(まぁ恋愛ないしナンパと思っていたら、終盤にはサスペンス風になり、当時の認識的には少し変化球ではあったんですけどね)、悪くもないけれど、いたって普通の内容なんですよね。
今ならこういう内容の作品は他にもいろいろありますので、おそらく購入しないでしょう。
じゃあ、何で購入したのか。
それは簡潔に言えば、時代が違ったからです。
恋愛ゲームブームは元年とも呼ばれたように95年から始まり、PCでもゲーム機でも96年時には既に絶頂期を迎えていましたが、PCゲーだと96年まではPC98がメインであり、そのため若干の例外を除き音声がありません。
逆にゲーム機のギャルゲーには音声はありましたが、エロがありません。
一応サターンは18禁だか18推だったかがありましたが、結局見掛け倒しでエロは大幅に削除されていましたからね。
PCゲーを知らない少年には刺激的に見えたかもしれませんが、PCゲーのエロを知った人にはとても満足できる代物ではありません。
しかも、18推のほとんどがPCからの移植で、オリジナルはほとんどありませんし。
この時に必要だった、っていうか単に私が望んでいただけかもしれませんが、求めていた物は「音声とエロの両方があるオリジナルの恋愛ゲー」だったのですよ。
音声とエロの両方ある恋愛ゲーとなると、希望が持てるのはwindow95用のゲームです。
WIN95は文字通り95年末に出たのですが、OSが出たからといってWIN95用のゲームがすぐ普及するわけではありません。
上記のように96年の時点ではPC98用が主流であり、数少ないWIN用の作品も音声がなかったりしました。
97年というと、音声のない『ToHeart』がありますが、発売されたのは5月です。
『ToHeart』の登場により恋愛ゲーが登場・・・みたいな頓珍漢な勘違いを最近でも見かけるくらいですからね。
恋愛ゲーが~という勘違いは論外だとしても、「WIN用の恋愛ゲー」が「この時点」では、それだけ「乏しかった」ということは言えるのでしょう。
『お嬢様を狙え!!』が発売されたのは97年の3月。
フルボイスのWIN用の恋愛ゲーです。
何も知らないで今プレイすると、何の変哲もない普通の作品に見えるかもしれません。
しかし、発売された時期を考えれば、私が購入したくなった理由も分かるのではないでしょうか。
今では失われた特徴も、発売時には個性・独自性として存在していたのですから。
サターンに移植しても、「この時期における音声付エロ付恋愛ゲー」という、本作の最大の特徴は失われてしまいます。
サターンだと、ただのギャルゲーにしか見えないのも分かりますし、何でこれ移植されたんだって不思議に思う人もいるでしょう。
でも、オリジナルの状況を考えるならば、納得できるのではないでしょうか。
同じようなことを考えていた人、つまり本作のような存在を待ち望んでいた人というのは、何も私に限った話ではなく、当時は他にもたくさんいたのでしょう。
本作は、雑誌における97年の上半期の売り上げランキングの15位に入っています。
15位というと、それ程でもないように感じるかもしれません。
しかし上位には、化け物じみた96年の年末組(『YU-NO』とか『鬼畜王ランス』とか)が、まだ大量に入っています。
加えて、WIN95により音声付きの移植版が活発に発売された時期でもありましたので、それら過去の名作のWIN用の移植版も含まれていますしね。
それらを取り除き、純粋に97年に発売された新作に限ってみるならば、つまり「97年発売のオリジナルアダルトゲーム」という範囲では、実は『ToHeart』『メイド物語』に次ぐ3位にまで躍進するのです。
もちろんエロと音声があるというだけではなく、半ば絵買いでもあったように原画は可愛かったし、WIN95専用ということでグラフィックも綺麗でした。
WIN95専用としては、ScooPにとっても初の作品でしたしね。
ScooPは、PC98時代には「インモラルスタディシリーズ」という、アニメーションをウリにした作品を作っていたブランドでした。
それだけにアニメーションへの期待もありましたしね。
まぁアニメーション自体は本作ではオマケ程度でしたが、それでもCGはやっぱり良かったです。
他にも、初回版に上質なマウスパッドが付いていました。
今はマウスパッドが特典になることはあまりないかもしれませんが、当時のおそらく一番人気の高い特典はマウスパッドで、私も幾つも集めていたものでした。
本作では、そのマウスパッドの「質」までもウリにされていたので、ついつい気になってしまうのですよ。
※特典がない時代なら、特典を付けるだけで差別化を図れます。
しかし同じような特典を他所もつけるのであれば、特典の質も良くしないと他所との差別化は図れません。
オマケでマウスパッドが付属し、その質が特徴とされるだけでも、当時を知らなくとも状況を推測できるのではないでしょうか。
ストーリーは普通だったのですが、ここは捉え方次第かもしれません。
後のいわゆるシナリオ重視作品と呼ばれるようなタイプの作品は、結局のところ、恋愛系をベースにしつつも、個別ルートで伝奇なりサスペンスなどの、恋愛以外の読ませるシナリオも用意するものです。
本作も、端的に言うならば、そういう構造なんですよね。
途中までは恋愛ないしナンパゲーのように進行しながら、最後でサスペンスっぽくなると。
だから、これは恋愛ゲーだと狭く決めつけてしまうユーザーの場合、プレイしていて面喰ってしまうのかもしれません。
特にナンパゲー的視点でヒロインを攻略するという認識が強い人ほど、その感覚は強くなるのでしょう。
何せ攻略していった女の子の励ましを得て、捕らわれたメインヒロインを救出するって流れですから。
しかし、そういった固定観念がなければ、もう少し素直に楽しめるかもしれません。
私もナンパゲー的なイメージでプレイしていたので、それで最初は少し戸惑った感じですね。
まぁ、ストーリー自体は特別面白いというものでもなかったかもしれませんが、戸惑うということは少なくとも多少の新鮮さは感じられたということなのでしょう。
15年以上も前の作品になりますし、今やって面白いものでもないかもしれません。
でも、あの時期に求められたものにいち早く応じた点、そして私の欲求を満たしてくれたことは間違いないのです。
古いと想像しにくい人もいるかもしれないので最近の例で言いますと、2011年に『カミカゼ☆エクスプローラー!』がありますよね。
あと数年たって、ワイド画面の萌えエロゲーが完全に標準になると、新規で始めた人には発売当時の位置付けは分らず凡作に見えてしまうでしょう。
でも、2011年の発売時にプレイした人ならば、ワイド画面を活かした萌えエロはまだ普及していないために、そこにオンリーワンの魅力や独自性を見いだせ、楽しさにもつながったと思うのです。
数年後に業界標準になったりテンプレな構造になったからと言って、発売当時のインパクトや独自性は忘れてはいけません。
と言うわけで、グラフィックやキャラの良さに加え、これしかなかったのだよというオンリーワンに近い部分も含め、個人的には良作としておきます。
ランク:B-(良作)
<むしろ本題かもしれない余談>
作品に関する思いは、上記の通り。
だからここからは余談でもあるのですが。
どうもね、この作品にkeyの麻枝さんが参加していたとのこと。
私は知らなかったし、そもそもクレジットされていないようにも思うのですけどね。
それで後に知って驚いたのが一つ。
もう一つはね、私は以前「美少女ゲームの臨界点」という本に対し、少しばかり苦言を呈したことがあります。
90年代半ばからの美少女ゲームを振り返る趣旨だったかもしれませんが、メンバーの知識があまりになさすぎて、全く話ならないですから。
その本の中に、本作の名前が出てきます。
麻枝さんが本作に参加していたと更科氏が言うのですが、他のメンバーは作品自体を知らないから、「ありふれた鬼畜ゲームのようだ」と発言し、そのまま進行しているわけでして。
本作を知らない人が読んだら、この作品は鬼畜ゲームだと思うでしょう。
タイトルだけなら、そういう風にも捉えられますし。
そもそも上記のように、本作の売り上げは相対的には非常に良いのです。
ぶっちゃけ、あの連中が必死に持ち上げている、96年時における『雫』や『痕』よりも売上順位は良いのですよ。
本作をプレイして面白くないって言うのなら理解もできますが、これだけ売れ『雫』や『痕』よりも売上ランキング上位の作品の存在すら知らず、それよりも売れていない作品を持ち上げて「~の時代」なんて語るのは、あまりにも滑稽で無知すぎるのです。
話を振った更科氏は分かっているようにみえるのですが、話の論調的に訂正しない方が都合が良いからか、そのままにしています。
ゼロ年代前半の評論には疎かったので知らなかったのですが、この人は当時、それなりに有名だったのかな。
読んでいて、この人は一応知識があるのだなとは感じられたのですが、自分の都合の良いようにあえて黙って、ミスリードさせようとする場面が幾つかありました。
知らない人は勘違いしてしまうような話の持っていきように、知識はあるかもしれないけれど評論家としては汚いなと思ったものです。
知らない人の勘違い発言と、それを利用したミスリードが随所にあるから、あぁ駄目だこの本はと思ったのだし、これを違和感なく読めてしまう人も信用できないなと思ったんですよね。
この連中の発言を信じ込んでいる人は今は減っているでしょうが、昔はそれなりにいたんでしょ。
初の猟奇ゲーも『雫』だとか言い出す人も見かけましたから。
RPGの元祖はポケモンだと言い出すくらい、意味不明な発言ですよ。
そういう誤った知識を植え付けられた人が増え、それで本作が鬼畜ゲームなんだとか思われているのであれば、それはちょっと残念な話だなと思ったものです。
あの本を読んで、PC98時代を軽視したから私が不愉快に感じたのだと、そう思った人もいるかもしれないですけどね。
実際、あの本の感想の記事では、若干そういう書き方もしていますし。
でもね、それだけだったらWIN以降の本だと割り切って読みますよ。
PC98を無視したとかではなく、実は一番、私の逆鱗に触れたりしたのは、本作の扱いであるとか、そういう部分の適当さだったんですよね。
Last Updated on 2024-12-09 by katan
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