『華アワセ 蛟編』は2012年にWIN用として、エンターブレインから発売されました。
この価格で、この内容を実現されてしまうとは驚きですね。
ボリュームだけでなく、それ以上にセンスの光る作品でした。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
もっとも、合間に花札をアレンジしたカードバトルがありますので、ノベル+カードと考えた方が良いかもしれません。
あらすじ・・・乙女の祈りで華が咲く――
“華札”を用いた札遊び、”華遷”
その特殊な”華”の力を引き出せるのは、一部の能力者”華詠”のみ。
彼らの多くは男性であり、学園内に限り唯一の力を持つ五人は”五光”と呼ばれ、崇められている。
本作は、稀有な才能・人材を輩出する華遷国立学園を舞台に繰り広げられる、”五光”を目指す男性たちと、彼らに身を捧げる乙女の物語である――
<感想>
本作は『B’s-LOG』創刊10周年企画として制作された作品であり、「本屋さんで買える本格乙女ゲーム」として、ゲーム付きムックとして売られています。
したがって、本屋で買えますし、価格も1512円で非常に安価になっています。
『B’s-LOG』は2002年に創刊された、女性向けの乙女ゲーやBLゲーを扱っている雑誌だそうです。
もうその頃からゲーム系雑誌を読まなくなり始めていたので、私は存在自体知りませんでした。
何でも、『E-LOGIN』の増刊として始まったとか。
関係ないけど、友人が「エログイン」って呼んでいたので、私もしばらくの間、『E-LOGIN』を「エログイン」だと思っていましたw
さて、低価格商品って数時間で終わる作品も多いですし、ましてや本作はムック扱いですからね。
体験版に毛の生えた程度の物も十分に予想されたのだけれど、実際には良い意味で完全に裏切られたわけでして。
花札をアレンジしたカードバトルがかなり遊べることから、人によっては数十時間楽しむことすらできます。
ここも、私は最初誤解していたのですが、私はストーリーの合間に花札をするゲームだと思っていたんですね。
でもそうではなくて、花札をアレンジしたカードバトルなのです。
カードバトルの楽しいADVって、いつ以来だろ。
昔は『ザップザマジック』とか『スタープラチナ』とかあって、好きだったんですけどね。
咄嗟に出てくるのがどっちも96年の作品な時点で、しばらく楽しめた作品がなかったことが浮き彫りになってしまいます。
それくらい、このカードバトルは秀逸でした。
もちろん、本作の中心はADV部分ですし、ストーリーやキャラも良かったです。
専門誌の記念作品だけあり、攻略対象も個性的でしっかり揃っていますしね。
また主人公が可愛いと、個人的には嬉しいですし。
ちなみに、攻略対象は複数いるものの、「蛟編」とあるようにハッピーENDになるのは蛟ルートだけです。
どうもループものっぽくて、全巻揃うと一つの物語になるようですね。
そして、本作は始まりのルートになると。
そのため、他のキャラのハッピーENDが見たい場合は、その巻が出るまで辛抱となります。
また本作は、全年齢対象作品となっています。
もっとも、全年齢対象にしては過激な方なので、過激なのが苦手な人には合わないおそれはあるものの、個人的にはむしろありがたかったりします。
というわけで、ここまででもボリュームや満足感を重視する人ならば、十分名作と感じられると思うのですが、個人的にはボリュームだけなら名作とはしません。
そしてここまでなら、基本を押さえた良質な乙女ゲームでしかないのでしょう。
そこで本作の長所・特徴となるのですが、やっぱりこれはグラフィックでしょうね。
キャラデザは由良さんで、とても良い感じです。
独特の塗りも個性として好印象ですし。
個人的には、由良さんの作品の絵の中でも1・2を争うほど好きかも。
ここまでは、由良さんが何か作品を出すって分かった時点で十分予想できたのですが、こちらの期待を超えて驚かせてくれたのが、OPとUIでした。
OPやUIでセンスが良いな~って感じた作品は、本当に久しぶりです。
男性向けノベルでも今はどれもOPムービーがありますが、ここ何年かは心に響く物がなかったですからね。
まぁここは好みの問題と言ってしまえばそれまでかもしれないけれど、少なくとも作品の雰囲気に合わせたUI作りは客観的に見ても、褒められるところだと思います。
<評価>
総合でも名作といえるでしょう。
なお、本作は乙女ゲーとして、蛟との物語という意味では完結しているものの、作品全体としてはまだ始まったばかりでして。
そのために個人的な点数は抑え目になっていますが、完結した時には乙女ゲーの最高傑作と評される可能性も秘めた、それくらい秀逸な作品でした。
基本CGもミドルプライス作品くらいありますし、この内容をこの価格でやってしまって利益はあるのだろうかと、そんな心配をしてしまいたくなる作品であり、これと比べられたら他所はたまったものじゃないなと。
また、ノベルゲーの数が一番多いのは男性向けのアダルトゲームですが、一般向けとしての発売も、書籍扱いでの発売も、これまで何度も跳ね返されてきた壁ですからね。
その壁をあっさり超えて支持されている本作は、それだけでも凄いことなのでしょう。
女性が楽しめるのはもちろんのこと、全年齢向けの乙女ゲームですし、カードゲームも楽しめるので、女性主人公不可な人以外は男性でもハマれる作品であり、幅広い層におすすめの作品だと思いますね。
ランク:A-(名作)
Last Updated on 2024-12-01 by katan