廃村少女 ~妖し惑ひの籠の郷~

2022

『廃村少女 ~妖し惑ひの籠の郷~』は2022年にWIN用として、Escu:deから発売されました。
クローズドサークルの伝奇ものであり、90年代的な構造のストーリー重視作品でしたね。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・小さな地方都市に伝わる、隠れ里の伝説。
自分たちが暮らす街に残る古い伝承を調べるため、主人公・八雲一樹は、部活仲間の少女たちと、噂の山に足を踏み入れる。
それはどこにでもある、青春の一ページ的な小旅行……の、はずだった。
「……ここは、どこだ?」気がつくと、一樹たちは見知らぬ場所にいた。
薄霧の中に建つ朽ちた家屋。時が止まったように澱んだ空気。
自分たち以外に人の気配はないが、あちこちに暮らしの痕跡が残っている。
そこは人々に捨てられた、山奥の小さな廃村……伝説の隠れ里『姫香村』。
いったいどうやってたどり着いたのか誰も覚えておらず、さらには村から出ようとしても、霧にまかれていつの間にか戻ってきてしまう。
自分たちが得体の知れない『何か』に閉じ込められている気配を感じつつ、出られる時を信じて、一樹たちは村でのサバイバル生活を始める。

<感想>

本作はクローズドサークルの伝奇ものになります。
主人公らは学生なのですが、学園での日常パートや共通パートがなく、最初から目的に向かってストーリーが進んでいきます。
そのため、読んでいて話に入っていきやすかったです。
日常パートや共通パートがだるくてノベルゲーが苦手という人でも、本作なら楽しむことができるでしょう。

また、本作は、最近のエロゲにありがちな、ヒロインとの恋愛や関係性を重視したキャラゲーではありません。
ヒロインごとの個別ルートはあるのですが、核となるストーリーがあって、その解決として複数のENDがあり、それぞれのENDにヒロインが割り当てられているだけなのです。
つまり本作は、構造的にストーリー重視のノベルゲーになっているのです。
だからストーリー重視の作品と考えれば特に問題はないのですが、キャラゲーを期待してプレイすると、もの足りなく感じやすいと思います。

本作について、どのように紹介しようかと考えたのですが、ぶっちゃけ、これ、90年代によくあったタイプのストーリー重視の作品の構造なんですよね。
だから90年代までの作品が好きな人だと、懐かしいなと思いながら楽しめるように思います。
90年代的なと言っても、何のことだか分かりにくいでしょうから、もう少し補足しますと、まず、上記のとおり本作は、ヒロインにストーリーが従属したキャラゲー構造ではなく、ストーリーの方にヒロインが従属したストーリー重視構造になっています。

次に、本作ではヒロインが8人いるのですが、これも最近のエロゲとしては多いと言えるでしょうし、ヒロインの数が多いのも90年代的な特徴と言えるのでしょう。
ストーリー重視なうえに、ヒロインの数が多いことから、個々のヒロインとの恋愛描写的なものは薄くなりがちなのは当然であり、だからキャラゲーを求めるともの足りなくなるのですが、ストーリーの延長上にヒロインとの絡みがあるストーリーゲーとしては、これで何ら問題はないのでしょう。

また、本作では、序盤からわりとHシーンがありますし、それらはヒロインとの恋愛を前提とはしていません。
こういうストーリー展開の一環として序盤からHシーンがあるのも、90年代的な作品らしいと言えるのでしょう。
私なんかは、こういうタイプの作品の方が好きなのですが、最近のキャラゲーを好む人とかだと、
このヒロインを攻略すると決めてプレイした場合に、クリアまでに他のヒロインとのHがあるのを嫌う人がいるようでして。
私にはちょっと理解できない考え方なのですが、まぁ、いろんな考え方の人がいるのでしょうし、キャラゲー全盛時代には、そういうユーザーも一定数いるのでしょう。
そういう人だと、本作のような構造は合わないかもしれませんね。

さらに、Hシーンは複数人プレイがあったり、百合があったり、いろいろありますが、何かシチュに特化しているわけではありません。
この辺も、ストーリーの中でのHという意味では90年代的なのでしょう。

他にも、本作では、特にシナリオロックのようなものもなく、最初からどのルートも見ることができます。
ヒロイン(ルート)は一杯あるけれど、オールクリアは必須ではない、自分が見たいものだけ見たい時に見れば良いというのも、90年代的な構造と言えるでしょうね。
なお、ゼロ年代に入ると、シナリオロックとかグランドルートとか用意して、実質的な一本道構造の作品が増えました。
これはこれで良い点もあったのですが、弊害もいろいろあり、ユーザー離れを引き起こした一因でもあったわけで、今では廃れています。

かように、本作は、90年代的な構造の作品を、現代の技術で製作した作品と言えるのでしょう。
誤解のないように言っておきますが、これは古いとか新しいとか、そういう話ではありません。
最近のエロゲなんか、私からすれば、80年代的構造の作品を現代の技術で表現しただけのように見えますからね。
食べ物なんかでも、流行り廃りはありますし、過去に流行ったものが一周して、再ブームが到来なんてことも良くある話です(タピオカなんて、一体何回目のブームだよって感じですし。)。
いろいろな構造の作品があって、あとはもう好みの問題なのでしょう。
今の主流のエロゲの構造が大好きな人だと、おそらく本作はいろいろもの足りなく感じてしまうのでしょうし、別に構造にこだわりはないよという柔軟な若いユーザーだと、90年代的な構造の作品とか言われても普通は未経験でしょうから、こういうタイプの作品は初めてプレイしたと感じられ、新鮮な出会いとなるかもしれません。
もちろん、ベテランユーザーだと、お~昔はこういうの、よくやったわ、というように懐かしさを感じることでしょう。

<評価>

本作ならではの要素、突き抜けた何かがあるわけではないので、名作には届かない作品なのでしょう。
とはいえ、全体的にバランスのとれた作品ですし、最初から最後まで読んでいて楽しかったので、良作と言って良いと思います。

あとは、BとB-のどちらにするかですね。
主観的には、B-くらいの作品なのかなと思いますが、90年代的構造のストーリー重視作品の新作で楽しめる作品となると、存在自体がなかなかないですし、こういう作品はもっと増えて欲しいですし、2022年の他の作品との比較から相対的に浮き上がったところもあり、少し甘いかもしれませんが、Bとしておきたいと思います。

ランク:B(良作)



DL版

Last Updated on 2024-04-21 by katan

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