輪舞曲Duo -夜明けのフォルテシモ- ぷにゅぷりff

2014

『輪舞曲Duo -夜明けのフォルテシモ- ぷにゅぷりff』は2014年にWIN用として、TinkleBellから発売されました。

「現在のエロゲ」の究極系はここにある?

<概要>

ゲームジャンルはインタラクティブムービーになります。

商品紹介・・・超ハイクオリティ・全篇フル・アニメーション学園ADV。
細部まで徹底的に作り込んだ、こだわりのクオリティ。
Hシーン 総計【100カット】・迫真のフィニッシュ【28発】
アニメーション総時間【120分】、総プレイ時間【6時間】
立ちキャラ・アニメパターン 500パターン以上、実力派声優13名、フリープレイギャラリー完備、ティンクルベル・オリジナルBGM33曲収録。

校内に蔓延する呪いによって、”エッチに次ぐエッチ”が連なっていく…!
総勢13人の女の子たちが織り成す、”快感の連鎖”。
動画システム【Super2.5EXD】(スーパーエクストラディメンション)を採用し、いななく身体を、快感に戸惑う瞳を、存在感あふれる動画で表現。
時間をかけて、ひとつひとつ丁寧に仕上げました。
ぬくもりあふれる肉感、裏ごしを重ねた、なめらかな仕上がり。
実力派声優陣によるステレオ・サウンドの”競宴”。
こだわりの演出と創意工夫、全編徹底アニメーション。

<感想>

個人的な話からになってしまうのだけれど、ADVGAMER自体は2013年からなのですが、移転とかしていますので、最初にゲームの感想を書き始めたのは2008年の5月になります。
ティンクルベルの、本作の前の作品である、『月明りのラズベリィ』が発売されたのが2008年の3月で、DMMでは4月末に販売が開始されました。
つまりゲームブログを始めた頃の注目の同人ゲーが、『月明りのラズベリィ』だったけですね。
それでプレイして、そのグラフィック・演出の凄さを目の当たりにして、同人でこんな作品があるのかと、ティンクルベルは要注目だなと思ったわけです。
ところが、それ以降全く作品が出なかったんですね。
6年半ぶりに発売された新作が本作であり、まず作品の内容がどうのというよりも、ティンクルベルの新作が出たってことに驚かされたものでした。

本作に関しては、グラフィックないし演出が最大の特徴になります。
これはもう、下手な説明を読むよりも、デモでも何でも構わないので映像を見た方が早いのでしょう。
その映像のままゲームが進行しますから。
同人ゲーに詳しい人が衝撃を受けるのかは少し疑問も残りますが、少なくとも同人ゲー関係に疎い人ほど、こんな作品があったのかと衝撃を受けるでしょう。

個人的には、相変わらずグラフィック・演出は凄いなと思いつつも、まぁ想定の範囲内なのかなと。
どちらかと言うと、『月明りのラズベリィ』とか過去作の方が、インパクトは大きかったです。
本作にしても、同人だからここまで発売時期が遅れたのであって、商業で専念できる環境にあったならば、もっと早く出ていたでしょう。
だから、ここまで進化したのかというよりも、あぁやっとこの水準のが出たのねって感じの方が強かったんですよね。

したがって、実のところ、作品自体にはそれ程衝撃を受けなかったわけでして。
とは言え、ティンクルベルが沈黙していた6年半の間に、商業ブランドはもっと進化していなかったわけでして。
そして本作の在り様に、今の商業エロゲの究極系のような姿を感じたのです。

つまり、商業エロゲの大半は立ち絵をずら~っと横に並べて、その立ち絵をパタパタと人形劇のように動かし、その立ち絵は年々豊富になってきています。
もっとも、立ち絵のパターンが多少増えようとも、本作のように立ち絵がぬるぬる動くわけではありません。
今の商業エロゲの基本路線を進化させたのが、本作と言えるのでしょう。

他にも、一昔前と違って、今のエロゲって選択肢が少なくなっています。
特に演出重視の作品ほど、選択肢が少ない傾向にあります。
その傾向を極端に押し進めるならば、選択肢の存在しないヌルヌル動く作品に行き着くのでしょう。
つまり本作の様な作品ですね。

また、ノベルゲーにボリュームを求める人はいつの時代もいるし、今もテキストの水増しが問題にされることも多いのだけれど、ゼロ年代の一時期よりは逆にボリュームが減っているんですよね。
同人とかでシナリオのボリュームが少なくても評価される作品も増えてますし、一昔前よりボリュームを偏重する傾向は、ゲーム的にもユーザー的にもなくなっていると思います。
大事なのは中身であって、量が多ければ良いってものでもないのだと、作り手側にもユーザー側にも少しずつ浸透しているように思うのです。
まぁ未だにボリュームに囚われている中小ブランドもあるようですが、そんなだから中小のまま飛躍できないのだろってことでしょう。
少なくとも、とにかく量を増やせという時代は既にピークを過ぎているのであり、コンパクトでも濃密な作品をという時代の方向性と、本作の存在は合致しているのでしょう。
まぁ本作はプレイ時間こそ6時間ほどですが、価格が商業フルプライスの3分の一以下ですからね。
価格に対するプレイ時間というコスパの点からは決して悪くはなく、それでこの映像なわけですから、総合的なコスパの良さ、満足度の高さも生まれてくるのでしょう。

と言うわけで、今の商業エロゲの方向性をおし進めると、その極端な形、究極的な姿として本作に行き着くのであり、今の商業エロゲ路線の一つの到達点が本作なのでしょう。

更に加えるならば、最近のアニメでは男性を排除した作品も増え、もしその傾向がエロゲでも拡大するのであれば、百合作品でもある本作はますます時代の流れに合致すると言えるでしょうしね。

それと、2014年は一枚絵が35枚しかない紙芝居ゲーであるとか、商業ブランドの怠慢も目立った年でした。
そんな中に出てきたのが本作であり、容量の多さが全てではないのは当然だとしても、それでも二千円台のゲームで10Gに及ぶボリュームは圧巻で、それで動きまくるわけですからね。
これまでは同人ゲーを馬鹿にしていた人でも、今後は、もうそんなことは言えなくなるでしょう。
あなたは、一体いつまで商業ゲーにこだわるの?
商業ゲーが努力しても、辿り着くのは精々本作の劣化版なんでしょ、ぷぷっwww
・・・と言いたくなるような、引導を渡したかのような印象すら受ける作品でもありました。

だからまぁ、一つの方向性の到達点として、或いは現在の商業エロゲに対する痛烈な皮肉としての存在を重視するならば、本作は名作と考えることもできると思うのです。

そう考える一方で、個人的には幾つか引っかかる部分もありまして。
まずグラフィックなのですが、確かに立ち絵は良く動くし、イベント部分での演出などのセンスも良いです。
でも、あくまでも従来的なエロゲの完成度を高めただけなのですよ。
本作は立ち絵が横に並び、話すキャラが他のキャラを押し出すようにして、画面のこちらへ話しかけるようなシーンが多いです。
それはエロゲ的文法としては長く定着してきたのかもしれないけれど、物語上の人物の配置としてはリアリティに欠けるわけでして。
最先端のエロゲないし今後のエロゲは、平面な画像の中に立体的な空間を表現するものだと考えているし、実際に空間を意識したキャラ配置の作品も少しずつ存在しています。
それが、最先端の新しいエロゲなのだと思います。
だから本作は旧式エロゲの完成度を高めた作品ではあっても、決して新式のエロゲとは思えないのですよ。

また、無駄にキャラがヌルヌル動くわりには、口の動きが伴っていないわけでして。
口パクとかリップシンクとか、そういう方面は軽視しているんでしょうね。
当然ながら声は口から発せられるものであるし、口パクやリップシンクのある作品は、グラフィックと音声との連動を感じさせてくれます。
本作はそれがないので、グラフィックと音声の連動を感じることができません。
よく「ノベルゲーは絵と音とシナリオが融合し~」なんて言うけれど、本作はシナリオと絵の融合は良かったとしても、絵と音の融合・連動は十分とは言えないでしょう。
そのため演出面で最高との感想は抱けないのです。

さらに、ノベルゲーとかエロゲの好きな人って、絵や音や文章が全部揃っているからって人も多いでしょ。
ストーリー上の名場面がしっかりと描かれているとき、たった一枚のCGでも感動はできるものです。
それはストーリーとグラフィックが連動し、結合しているとも言えるのでしょう。
本作は百合ゲーであり、女の子たちが会話しているシーンと、エロシーンが作品の大半を占めます。
それはそれで妖しい雰囲気と相まって楽しめるのだけれど、ストーリー的に大きく盛り上がることもないわけでして。
だからゲーム開始直後が最もインパクトがあり、そのまま同じような感覚か慣れによるインパクトの減少状態で最後まで進むんですね。
それはストーリーと絵の連動による相乗効果が乏しいとも言えるのでしょう。

そして、ゲームと映像との連動の問題ですね。
本作は選択肢もないし完全に一本道の作品であり、同人に多い動画系作品と変わらないのです。
っていうか、これをゲームとして扱うのであれば、動画作品も全部ゲーム扱いすべきとも思えますし。
クリックで進めるからゲームだというのならば、動画の出来損ないがゲームということになりかねません。
まぁ扱い云々はどうでも構わないとしても、これならもうアニメとか動画で十分だよねって思えてしまいます。
アニメや動画を比較対象に加えるなら、もっと動くものもありますし、構図だって凝っています。
本作は見るだけの作品でありながら、中途半端にクリックですすめる必要性もありますし、flash playerで進める作品のため操作性も非常に悪いですしね。
ストレスを感じたり面倒な思いをしながら動画を見て、それでゲームだと言うのなら、もうゲームじゃなくて良いから、普通の動画としてストレスなく見られた方が良いよなと思ってしまいます。
私はインタラクティブムービー系も非常に好きですし、この手のジャンルも20年以上追いかけています。
だからこそ逆にこだわってしまう部分もあるのだけれど、ムービー主体でもゲームならではの工夫として、何かしらやりようはいろいろあるだろうにと思うのです。

<評価>

と言うわけで、作品自体には大して驚かなかったし、もし名作と言うのであれば、それはグラフィック・演出が凄いからではなく、一つの方向性の到達点であると同時に、存在自体が現在のエロゲへの痛烈な皮肉にもなっている点になるのでしょう。
判断の難しい作品ですが、もう少しゲームらしさがあるならば、上記のような方向性で結論付けていたと思います。
しかし、やっぱり本作は動画作品だよなということで、総合でも良作としておきます。

否定的なことも結構書きましたが、それは極端に絶賛したりするのはどうかという思いと、行くところまで行った作品だけに、かえって従来からの問題点が余計にも浮かびやすかったということですね。
っていうか、今の商業エロゲの作品の中でも、特に演出凄いとか言われやすいタイプの作品に対する不満を、本作を通じて語った感じなので、ちょっととばっちりではあるのでしょう。
まぁ、こういう作品ばかりになれば、私はエロゲを止めるでしょうが、それと本作の評価は別ですし、数ある中の一つとしてなら十分ありでしょう。
したがって、過度に期待しさえしなければ、今年これより凄いと言い切れる作品なんて多くないでしょうから、多くの人が楽しめる作品だとは思いますね。

ランク:B-(良作)

Last Updated on 2024-10-19 by katan

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