『ものべの - monobeno -』は2012年にWIN用として、Loseから発売されました。
演出面の優れた作品でした。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
共通ルート内の選択肢は1つしかなく、実質的には、ほとんど読むだけの作品ですね。
あらすじ・・・
高知の山深い寒村、茂伸村へと六年ぶりに帰省した主人公、沢井透と、ふるさとのことをすっかり忘れてしまったらしい妹 夏葉。
都会はおろか、他の人里からさえ隔絶された古びた空気の中、家守妖怪‘あかしゃぐま’のすみ、おさなじみのありす、傘妖の飛車角――
懐かしい面々との再会は、錆ついていた記憶の時計を動かし始める。
大掃除、山遊び、水普請、畑仕事、牛鬼の来訪……
少しも変わらぬ茂伸の暮らしを重ねるうちに、やがて、村に伝わる土着信仰、‘ひめみや流’の夏祭りの夜が訪れる。
夜行市ににぎわう境内に響く触太鼓は、祭りのクライマックス‘面舞い’の始まりを告げるもの。
ちぐらとヒトカタとに守られた舞台に浮かび上がるは、七面頬なる大妖と人間たちとが織りなす歴史。
その舞の最中、夏葉は突然倒れてしまう。
「おにいちゃん……夏葉……体がヘンだよう」
一晩にして十センチ以上伸びた身長、体型の変化、下腹部からの初めての出血。
夏葉の体を襲ったものは、まぎれも無い異常成長だった。
(このまま、異常成長が続いてしまえば……夏葉の命は!)
果たして原因は病か祟りか――
焦燥の中、すみとありすとの力を借りて、透は、夏葉を救うための手掛かりを探し始める。
<感想>
本作の一番の特徴は、なんと言ってもグラフィック部分になるのでしょう。
ワイド画面の使い方が上手いな~と開始直後から思っていましたが、上手いと感じるかは人それぞれと言えるかもしれません。
そのため、異論のなさそうな客観的な部分の良さを挙げるとすると、本作では目パチ口パクがあります。
これは立ち絵だけでなく、イベントCGでも存在するのです。
本来であれば、イベントCGは、ストーリー上の大事な場面で用いられます。
物語内の大事なところにイベントCGが配置されることで、そこがその作品の名場面として更に記憶に残りやすくなるわけですね。
しかしながら、近年は立ち絵が進化するのに対して、イベントCGの進化は遅れています。
立ち絵が頻繁に動き、目パチ口パクもする。
それなのに、イベントCGになると動きもなくなるし、目パチ口パクもなくなってしまうという作品を何度も見てきました。
それまでにあった変化がなくなることで単純に物足りなく感じるだけでなく、急にこれは作り物なんだという気に戻されてしまう感じがしてしまうし、盛り上がるはずの場面で逆に盛り下がってしまいます。
イベントCGでの口パクが難しかったというのであれば、それを成し遂げてこそ「進化した」とユーザーに印象付けることもできます。
基準というのは人によって異なるのでしょうが、現在の私の基準では、立ち絵だけでなくイベントCGでも目パチ口パクがないと、
グラフィック面での高得点はありえないです。
そういう意味では、本作はイベントCGでも目パチ口パクがありますので、プレイしていて自然な印象を受け、途中で盛り下がるなんてこともありませんし、地味な部分にも労力を惜しまない姿勢に好感を抱けるのです。
というわけで、グラフィック部分は良かったですし、キャラもロリ好きには良い作品でした。
システム面では動画のシークバーのようなものもあり、それも良かったですしね。
長所もハッキリしているのですが、逆にストーリー自体は印象の薄い作品でもありました。
本作は実質的には選択肢がないような作品なので、オートで眺めていれば良いような作品でもあるんですよね。
しかも、グラフィックの表現方法がアニメ的なこともあり、ゲームをプレイしているというよりも、少し動きの乏しいアニメを見ているような印象を抱いてしまい、それでストーリーの印象が更に弱まってしまったのでしょう。
同じストーリーでも、ゲームならではの演出で惹きつけたり、ゲーム的要素を加えユーザーも関与させることで強く印象付けることもできます。
minoriの作品にしてもそうなのですが、本作もまた、技術力はあるのだろうなと思える一方で、もうアニメで良いじゃんって気にもなるわけでして。
その点が残念な作品でもありました。
<評価>
総合では良作としておきます。
本作の長所はグラフィックであるところ、表現方法がアニメ的でして。
ノベルゲームならではの演出やエフェクトを追求した作品ではないので、プレイしていての驚きやインパクトはありませんでした。
結局のところ、どれだけ動いてもアニメの劣化版でしかないことから、ポイントが伸び悩んだといえます。
面倒な口パク等を丁寧に入れてきているのは間違いないですし、こういう作品を作るブランドは基本的に応援したいと思います。
本作にしても、ストーリーとかちょっと改善するだけで、グッと面白くなる余地も残していただけに、次回以降に期待したいとも思わせる良い作品でした。
ランク:B-(良作)
Last Updated on 2024-11-29 by katan