『Missing-X-Link ~天のゆりかご、伽の花~』は、2019年にWIN用として、Fluoriteから発売されました。
オートマタを題材にしたSF・ADVであり、総合的にみて欠点のない、どの要素においても優れた作品でした。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・
統一世界を目指した国々は、歩み寄ることを知らず散り散りになった。
もはや国軍を有することもままならぬほどに。
遺伝子操作により人類の上位種として生まれたはずの子どもたち
「エディテッド」は、呪われた子と呼ばれ優れた才と小さい命を儚く散らした。
よりよい未来を創りだすはずだった量子コンピュータは自ら思考することを奪われ、あらゆる既知のみを収蔵する「大偽典図書館」となった。
そして珠木正伍の最愛の姉(ひと)を奪ったのは、平和を守る抑止力となるはずの軍事衛星だった。
物語の先にはいつでも、幸福で平穏なエピローグが待っているとは限らない。
誰しもが胸に痛みを抱え、癒やされることを欲するこの世界で、もしも永遠に変わらない、全きものがあるのだとすれば。
正伍の前に現れた、自意識を持つ女性型ロボット「第三世代オートマタ」姫風露。
芸術品と見紛う美しさと無辺の優しさを持つ彼女との口づけによって、止まっていた正伍の時計は再び動き出す。
「架橋(クロスリンク)」――
それは人とオートマタが唇を重ね、心を分かち合い繋がる技術。
正伍の全てを肯定し、電子の海を羽ばたく翼を与えた姫風露。
彼女が注ぐ愛と献身が、孤独と心の傷を癒やしてゆく。
求めていた幸福で平穏な日常がそこにはあった。
永遠に続くかのように思われた甘やかな日々はしかし、突如にしてかき乱される。姉と瓜二つの容姿を持った少女、水城遊離の奪い貪るようなキスによって――
「唇はね、心のドアなの」キスが世界を加速させる。
失われた幸福なエピローグを目指して。これは愛をなくした少年が、もう一度誰かを愛せるようになるまでの物語。
<感想>
この作品、端的に言うと総合力が高いというか、どの要素をみても高水準な作品なのだと思います。
たとえばグラフィック。
目パチ口パクもありますし、演出もしっかりしています。
本作はSF作品であることから、演出が弱いと、作品全体が弱く見えてしまいかねません。
そう感じさせないことに成功した本作は、シンプルに演出部分が良く出来ていたのだと思います。
CGも良かったですし、不満はありません。
したがって、高水準とはいえるのですが、突き抜けて凄いかというと、そうでもないわけでして。
その辺が、この作品のもう一つの特徴でもあるのでしょう。
つまり、作品を構成する様々な要素が高水準であるけれども、他方で、これはと言えるような突き抜けた要素もないのです。
ストーリーに関しては、最近のエロゲに多いキャラ重視ではなく、ストーリー重視の作品となります。
具体的には、脱落式というか、途中下車方式と呼ばれるタイプの作品ですね。
つまり、メインとなるストーリーは一本であり、派生的に各ヒロインとの個別エンドに分岐する構造になっています。
私は、ストーリー重視の作品であれば、この構造で正解だと思っています。
読ませたい物語があるならば、それをズバッと見せれば良いわけですからね。
個別ルートなんてオマケで良いのです。
ただ、ストーリー重視であるということは、キャラ(ヒロイン)重視ではないということでもありますし、本作もヒロインとの個別ルートは少し弱いところがあります。
ひと昔前のエロゲユーザーは、ストーリー重視の作品を好む人も多かったように思いますが、最近は全部のヒロインの個別ルートの質を求めるような、キャラ重視を好むユーザーが多い傾向にあるようで、キャラ重視作品の方が高い評価を受ける傾向があります。
そういう意味では、最近のユーザーよりも、ひと昔前のストーリー重視の作品を好むユーザーの方が、本作には向いているように思います。
そこで次に問われるのは、その肝心のストーリーの出来です。
本作はオートマタを扱った近未来を舞台にしたSF作品であり、設定部分については結構しっかりしていたと思いますので、安心して楽しむことができます。
最近、近未来を舞台にした良いSF作品をやってないなと思うなら、本作はプレイしてみる価値があるといえるでしょう。
ただ、面白かったのは間違いないのですが、名作と呼べるほどのインパクトがあるかとなると、そこまでではないというのが惜しいところでもありました。
いろいろ書きましたが、私はこの作品が好きですし、プレイ中、かなり楽しめました。
なぜそんなに楽しめたのかというと、その一番の要因として、主人公の持つPDAに棲みつく、QPというキャラの存在は外せないのでしょう。
私は80年代からのADVファンなので、主人公とキャラの会話のキャッチボールが大好きです。
古くは『ポートピア連続殺人事件』の主人公とヤスみたいな関係ですね。
時代が変われど、そしてADV全体の構造が変わろうとも、そういうキャッチボール関係が反映された作品は好きなのです。
たとえば、『NIKE』(1991年発売)では、主人公のナイキと美歩鈴、コンピューターの「SDC」の三者のかけあいが非常に好きでした。
『ヌーク』(1992年発売)では、主人公とヒロインとの会話の中に、「天の声」がツッコミを入れてくるのが好きでした。
本作では、主人公の行動に対し、AIのQPが、あれこれと話しかけてきます。
私には、これがとても心地良かったです。
QPがいたから、終始だれずに楽しめたのだと思います。
まぁ、QPが気に入らなければ、本作自体楽しめなくなるおそれはありますけどね。
今となっては数は少ないかもしれませんが、上記の説明にピンとくる人、キャラがひんぱんにこっちに話しかけてくるのって楽しいよねと、私と同じようなことを思っている人であれば、本作をきっと気に入るのではないでしょうか。
<評価>
総じて、どの要素も高水準だったうえ、主観的にもとても楽しめた作品でした。
ただ、客観的にみると、名作というには、もう一つ突き抜けたものがないですからね、総合でも良作とします。
とはいえ、この水準の作品はそうはないですし、同年を代表する作品の1つといえるでしょうね。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2025-11-24 by katan



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