『マージナル・ストーリーズ』は1993年にPC98用として、フォレストから発売されました。
蝉の声・・・蝉の声・・・蝉の声・・・
『禁断の音律』は、とても印象深い作品でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。
また、『マージナル・ストーリーズ』は、2本の全く異なるシナリオを収録した、いわゆるオムニバス作品でした。
その内の1つは『コスプレイター2』といって、近未来を舞台に武闘派コスプレ軍団とハンターたちの戦いを描いたもので、内容的にはコミカルな感じになっていました。
まぁ、この当時にコスプレに着目した作品も珍しく、これはこれで面白そうな設定の作品だったと思います。
注目すべきはもう1つの方で、『禁断の音律』という館もののホラー作品でした。
あらすじとしては、主人公の恩師である教授が少し前に行方不明になっていたことから、縁があって主人公とその妹が、その恩師の住んでいた館に引っ越します。
もっとも、その洋館では奇怪な現象が何度も発生しており、教授の書斎にあったヴァイオリンを弾いたことによって、主人公の身にもある変化が生じてくるのです・・・
<ストーリー>
少しネタバレっぽくなるのですが、実は体内に寄生虫みたいなのがいて、それがある特定の音律で目覚めるわけでして。
具体的には、教授の特殊なヴァイオリンの音で目覚めてしまうのです。
その目覚めた寄生虫もどきが、内部から宿主である人間を乗っ取るということなんですね。
まだその時点では幼虫のようなものなのですが、Hをすることで相手に移り、相手の腹の中で蛹として成長し、そして腹を食いちぎって成虫として出てくるのです。
<グラフィック>
そういう内容の作品なので、結構エグい絵もありますね。
PC98の16色画面と寂れた洋館はマッチしていましたし、原画と相俟って独特な雰囲気を醸し出していたわけでして。
まぁ、私は基本的に可愛い絵が好きなので、当時は特に何とも思わなかったのだけれど、こういう絵柄のADVはもう出てこないのかと思うと、ちょっとだけ寂しいような気もしてきます。
<サウンド他>
かようにストーリーを上手く演出していたグラフィックですが、実はサウンドはそれ以上に良かったのです。
始めた瞬間、何かこれは違うぞって雰囲気がひしひしと伝わってきて、序盤からのめり込んでしまうんですね。
もちろん肝心のテキストも良好で、っていうかテキスト自体はかなり上手かったんじゃないかな。
蝉の声・・・蝉の声・・・蝉の声・・・ってのはゲーム内の一部ですが、冒頭からかなり読ませるタイプだったと思います。
名作の多くは開始時からこれは違うって思わせるものですが、『禁断の音律』もまた、そうしたオーラが漂っていた作品でした。
<感想>
というわけで、非常に雰囲気が良く、開始時から途中までの印象だと、名作扱いした他の作品に勝るとも劣りません。
ただ気になったこととして、かなり短めで小粒感が強いのが一つ。
そしてもう一つは、本作の結末部分なのですが、最後は皆さんの想像にお任せしますよって終わり方だったのです。
それで私は、ちょっと拍子抜けしてしまいました。
できれば全部書ききってもらいたかったのですが、まぁここは好みの問題もあるかもしれませんね。
関連性だけ仄めかせてぼかす手法が好みな人や、考察するのが好きな人なら楽しめるのでしょうが、全部最後まで書けよと思う人は少しもやもやする、そんな作品だと言えるでしょう。
私は後者に属するので、少しもやもやしてしまったタイプなのですが、アダルトゲームのプレーヤーは考察好きな前者のタイプの方が多いみたいなので、気にならない人も多いかもしれません。
そもそも、本作はホラー染みた内容ですから、全部科学的に説明されても逆に興醒めするでしょう。
不気味なものは、よく分らないからこそ怖いのであり、そう考えれば多少ぼかすくらいでも構わないと思いますし、後は読み手の好みの問題って気もしますね。
それと、『禁断の音律』は基本的には館を舞台にしたホラーものですが、主人公がやっちゃって孕ませるの対象が実の妹だったりしますので、近親作品好きなら、より楽しめるでしょう。
いわゆる萌え絵とは異なるので、妹萌えの人が気に入るか不明ですが、リアルな分だけ艶かしさや妙なインモラルさが伝わってきて、他ではあまり感じられない独特の味になっていると言えます。
<評価>
そういうわけで、総合では良作ってところでしょうか。
もう少しボリュームがあるか、あるいはラストが盛り上げれば間違いなく名作だったのですが、雰囲気ゲーの域を出きれなかった感じでしたからね。
とは言え、独特の雰囲気は他とは替えのきかない作品でもあり、何年経っても印象深く残っている作品でして。
主観的に言えば、かなり好きで印象深い作品であり、仮に自分が気に入ったかだけで判断するなら間違いなく名作と言ったでしょうね。
ラストが少しぼかされたこともありますが、あの後主人公らはどうなったのだろう、妹の膨らんだお腹の中はどうなったのだろうと続きが気になる作品でした。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2024-09-14 by katan
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