『luv wave』は1998年にWIN用として、シーズウェアから発売されました。
どの部分も非常に優れていたのですが、それだけにバグの存在だけが勿体無い作品でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・
知識は、我々の天に飛翔する翼である。
デジタル暗号の深遠に眠る、悠久の記憶。
世界規模のネットワーク・ウィルス【XINN】と正体不明のクラッカー【マシー・スペクター】を、日本の諜報員【薫】が追う。
XINNの正体とは?マシーの目的とは?
<はじめに>
シーズウェアというブランドがありました。
いや、まだ一応あるのかな?
超高校級の怪物が卒業した後に甲子園で優勝した高校もありましたが、ゲーム会社に同じことが起きることも決して皆無ではないはず。
剣乃ゆきひろさんという天才が去った後のシーズウェア。
彼が去ったらシーズウェアはもう駄目じゃんって見方もあったけど、WIN&家庭用におけるPS・SSの時代に入っても、しばらくの間は頑張っていたと思います。
というか、やり方次第では天下も取りえたんじゃないのかなぁ~って。
WIN&家庭用におけるPS・SSの時代に入って、アダルトゲームを作るブランドも、しばらく試行錯誤の日々が続いていました。
その中で、シーズウェアはいち早くWINDOWS95に対応。
高画質なグラフィックに音声を伴ったリメイクも次々に出していき、それらが大ヒットしました。
その勢いに乗ってWIN用やサターンでも新作を出していったわけですが、グラフィックやムービー、音声等の面では、他社よりも確実に一歩リードしていました。
ストーリー等でも水準以上を保っていましたし。
でもその後、シーズウェアは廃れていきました。
その理由は何か。
当時プレイしていた人ならばすぐわかると思いますが、バグなんですよね。
98年頃までのシーズウェアは演出面等で完全に他社をリードしてたけど、その98年に発売された意欲的な新作のどれもに、致命的なバグがあったのです。
それですっかり信頼を失ってしまったんですよね。
ここで失った信頼は大きく、後に『蜜柑』などの良作を作っても、結局持ち直すことはできませんでしたから。
今回紹介する『luv wave』も、そんな98年製の1本。
グラフィック・サウンド・ボリュームは、文句なしに他社作品を圧倒。
剣野さんが去ったことで懸念されたストーリー・世界観も、この作品に限っては完全にクリア。
これで満足に遊ぶことができたなら、間違いなく大傑作として後世に名を残していたでしょう。
実際、パッチをあてて最後まで遊んだ人の中には絶賛する声も多いです。
しかしこのパッチも不安定で、こうすれば完全に最後まで安定して遊べるってのが、結局は解らずじまいでした。
大多数の人が満足にプレイすらできないんですからね、
レビューサイトで0点も当然出てきますよ。
そうなると平均もぐっと下がるわけで。
バグさえ、バグさえなければ・・・大傑作ともなりえた作品だけに、ただそれだけが悔やまれるのです。
<感想>
さて、ここから少し中身に入りますが、基本的なゲームシステムは、一応コマンド選択式のADVになるかと思います。
移動はマップ上から選択するタイプでしたね。
そういう意味ではオーソドックスなのですが、多くのコマンド選択式とは異なりマルチエンドで幾つもENDがある上に、そのENDの一つ一つがかなり長いので、オールクリアにはかなり時間を要するかもしれません。
マルチENDのコマンド選択式は以前にもありましたが、その分岐はあまり数が少なく、ノベルゲーにおける分岐よりは少ないものでした。
『luv wave』はノベルゲー並の分岐とボリュームで、それでコマンド選択式でやってしまったようなものなので、ボリュームや難易度が半端じゃなく増えたわけですね。
まぁ本来ならば大幅にプラスに評価されるはずのボリュームの多さが、いつ落ちるかわからないバグのせいで、逆に冷や冷やさせられる回数の多さにつながり、かえってマイナスのイメージになってしまったのは何とも皮肉ですね。
ストーリーはコンピューターネットワークに潜む敵と主人公らが争うってな感じのサイバーパンクな近未来物のSF・ADVです。
世界設定が妙にというか、凄く凝ってまして、設定・裏設定大好き人間としては、その世界観にすっごく惹かれたものでした。
こういう分野って、実は結構扱いが難しくてね。
例えば、50年前に、携帯電話の可能性と危険性を記したSF小説があったとしたら、発売当時はその先見さから絶賛されるでしょう。
でも小学生まで携帯を持っているような今日では、そんなの小説を読むまでもなく分かってしまい、
小説の面白さは激減してしまいます。
つまり、SF物って鮮度があるんですよね。
別に懐古主義なわけでもないけれど、当時を知らないとその魅力も伝わりにくいってものがあることは、決して否定はできないと思います。
少なくともSF系は出た時代を事前に知っておかないと、いろいろ見誤ってしまうのでしょう。
98年というのは、インターネットが少しずつ普及し始め、世間の関心も広がり始めた頃でした。
ユーザーもクリエイターもどっちも関心があったはず。
需要と供給。
その手の作品も当然の如く増えていきました。
あの一部でかなり有名な『serial experiments lain』も、本作と同じ98年の発売ですし。
『luv wave』が発売されたのは、そんな頃なんですよね。
こっちもやる前から凄く期待してたし、実際そうした期待にかなり応えてくれた内容でした。
また、キャラに関しても相棒のアリスちゃんが凄く可愛かったです。
見た目ではなく、ちょっとした仕草とか話し方とかがね。
萌えですね。
ただ、近年の萌えではなく、95~96年ごろの萌えな感じでしたが。
加えて、グラフィックも素晴らしかったです。
256色が主流の中、本作は32000色表示だったり、ムービーがふんだんに使用されてたりしましたから。
この項目だけでも十分元がとれるくらいです。
まぁその分、PCへの負担も大きかったので、環境によってはプレイに支障があった人もいたのかも。
サウンドも、当時としては珍しく主題歌がありました。
音声自体も長編のADVではまだ珍しかったし。
これだけでも大きな長所でしょうね。
<評価>
以上のように長所となる要素は非常に多いです。
だからこそ、余計にもバグが勿体無いよなと。
これさえなければ、本当に素晴らしい作品だったんですけどね。。。
でも自分は楽しめても、これじゃあ人には薦められませんもん。
勿体無いですねぇ~
なお、総合ではパッチにより最後までプレイできたことを前提として、名作とします。
今はダウンロード版が出てます。
こっちは治ってるのかな?
今度試してみたいものですね。
ランク:AA-(傑作)
Last Updated on 2024-12-26 by katan
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