旭光のマリアージュ

2024

『旭光のマリアージュ』は2024年にWIN用として、ensembleから発売されました。

最近では珍しいストーリー重視となる作品でしたね。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・その国には、妖精がいた。
近代化する大陸における異端『宗教国家ミディール』
かの国には『妖精』という名の神秘が棲み、人々が『魔術』を行使する。
中でも10年前に降臨した『妖精の花嫁(ブライド)』たちは、絶大な力で他国の侵攻から人々を救い、英雄として崇められていた。
エインセル大修道院。
そこには妖精を信仰する聖教会の本拠地であり、ミディール唯一の魔術師を養成する学院でもある。
主人公、スレンは名だたる学生たちの中で力を示し、最も優れた『妖精の花嫁』の伴侶となる資格を得る。
花嫁であるリアは聖女のように美しく、清廉な正義を宿す妖精であった。
その伴侶となることは、誰もが憧れる輝かしい英雄への道。
スレンもまた、大切なものを守るために英雄を志す一人。
しかし、彼には自分でも気づけていない秘めたる目的があった。
スレンが歩むのは、神秘の国を滅ぼすにまで至るだろう、血塗られた道。
その真実を、今はまだ誰も知る由はなかった―――
「その花嫁は誰よりも愛おしく、誰よりも憎い仇だった」

<感想>

最近は少なくなってきたストーリー重視の作品っぽいことから興味を持った作品でした。

プレイ開始直後から、わりと頻繁に「~視点」というように視点変更が入ります。
このような手法は、文章に自信のないライターが使いがちなものであるため、この作品、本当にこの先大丈夫なのかと心配になってしまいます。

そのような状況で、他のエロゲにありがちな、共通ルートとなる学園パートがあって、そこから各ヒロインとの個別ルートがあって、それを全部見てからグランドルートで真相をとかやっていたら、本作の完成度は著しく下がっていた可能性が高かったと思います。

本作が良かったのは、ルートを固定したところなのでしょう。
本作は、最初はリアルートを読むことになります。
このルートは主人公の復讐を描いたものであり、序盤の共通ルートとかで時間稼ぎをせず、メインストーリーにすぐに入ったことにより、プレイヤーはすっと物語の中に入っていくことが可能になりました。
そのおかげもあり、上記の私の心配も払拭することができたのです。

本作は、リアルートをクリアすると、次にクロエ・ルーアンルートをプレイすることができます。
そのクロエ・ルーアンルートをクリアすると、最後にアルフィーネ・ミディールルートをプレイできるようになります。
クロエ・ルーアンルートは、主人公の謎にまつわるシナリオであり、アルフィーネ・ミディールルートは最後の締めとなるシナリオになります。

このようなルートを完全に限定するノベルゲーは、最近は少なくなりましたし、作品によってはプレイヤーの自由度を奪いかねないのでしょう。
しかし、少なくとも本作に関しては、有効であったと思います。
というのも、時代によりエロゲユーザー層の変化していくところ、近年はキャラゲーが主流となっています。
問題なのは、どの作品もキャラゲーとして評価してしまう方が少なからずおられるということなのです。
私は人によって定義が曖昧なシナリオゲーという言葉が嫌いで、ストーリー重視作品という言葉を使いますが、そういう作品が今はなくなったと言う人をたまに見かけます。
確かに数は減ったのでしょうが、少しは残っていますし、良い作品だってあります。
ただ、そういうストーリー重視作品をキャラゲーの枠組みで判断してしまうと、構造的にも低評価になってしまいます。
そのため、今は、良いストーリー重視作品が出たとしても、キャラゲー的枠組みから辛口に考えてしまう方が増えたため、ストーリー重視作品が必然的に話題になりにくくなっています。
今、ストーリー重視作品を正当に評価してもらいたいのであれば、キャラゲーと勘違いされそうな要素を少しでもなくし、これはキャラゲーではないのだ、ストーリー重視作品なのだと、ハッキリと分かるようにすべきなのでしょう。
その方法はいろいろありえるのでしょうが、その1つとして本作が採ったのがルート固定という方法でした。
本作はキャラゲーではないのだ、ストーリー重視作品なのだと否応なしに理解させる本作の構造は、今のストーリー重視作品のおかれている周辺事情をふまえると、十分称賛に値するのではないでしょうか。
少なくとも私は、スタッフの英断だと思います。

さて、ストーリー重視作品となると、肝心なのはその内容となります。
リアルートは、ストーリーの掴みとしては及第点だと思うものの、特に際立ったところもなく、ごく普通の復讐劇といった印象でした。

可もなく不可もない作品かな~と思っていたら、それを良い意味で裏切ってくれたのが、クロエ・ルーアンルートでした。
このルートは面白かったです。
このルートのクオリティで最後まで行けば素晴らしい作品になりえたのでしょうが、最後の3つ目のシナリオはそれほどでもなかったかなと。

<評価>

総合では佳作とします。

全体として、アダルトゲームにおける濃いダーク系作品のようなものを期待すると、物足りなく感じてしまうでしょう。
公式ではダークファンタジーと記載していますし、広い意味ではダークファンタジーなのでしょうが、それはあくまでもラノベ的な感覚でのダークファンタジーということですね。
その点を理解しつつ、ラノベのダークファンタジーが好きというのであれば、楽しめる確率は高まるのではないでしょうか。

まぁ、ストーリー重視作品自体が少なくなっていますし、今年発売限定となると、本作以上とハッキリ言いきれる作品って、そうはないでしょうから、そういう意味では、プレイしてみる価値のある作品だと思いますね。

ランク:C(佳作)

Last Updated on 2024-10-21 by katan

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