暗闇坂の家

1998

『暗闇坂の家』は1998年にWIN用として、h.m.pから発売されました。

昭和30年代を舞台にしたアダルトミステリーであり、3DCGであることからも異彩を放った作品でした。

<概要>

遠い昔の、真夏色のサスペンス。
昭和三十三年・盛夏、東京。
失われた風景に映し出される、愛と憎しみに彩られた、ひと夏の記憶の物語。

その坂は「暗闇坂」と呼ばれていた。
その途中に、十八年前に主人が謎の失踪を遂げた古い家があった。
まだ幼い妻の背中には、痛々しい生傷があった。
その娘は、父の失踪に疑念を抱いていた。
ある日、多くの謎を残して、一人の青年が消えた。
しかし、それはあの忌まわしい連続殺人の発端にすぎなかった。

<感想>

私はアダルトビデオに疎いので知らなかったのですが、h.m.pはアダルトビデオメーカーとして有名なようですね。
そのh.m.pは90年代後半に、アダルトゲームも製作していました。
AV業界からのアダルトゲーム参入は他にもありましたが、大半は実写ゲーだったんですよね。
しかしh.m.pは、96年の参入時から、ポリゴンによる3Dのアダルトゲームばかり製作しており、非常に挑戦的なブランドだったと思います。
当時の3Dのアダルトゲームとなると、他にはイリュージョンくらいでしょうし、それだけでも異質な存在と言えるのでしょうけどね。
h.m.pの場合は、OLにセクハラするゲームとか、内容面でも異質だったわけでして。
アダルトゲームの中でも、極めて特殊な存在だったように思います。

当初のh.m.pは、どちらかと言うとバカゲーとかイロモノに近い内容でしたが、一皮剥け、作品として優れた、ブランドの代表作と呼べる作品が出てきたのが、おそらく98年になるのかなと思います。
その代表作の一つが以前にも書いた、アダルトビデオメーカー経営SLGの『ザ・ハッスル』であり、もう一つが、シリアスな本格ミステリーものである、この『暗闇坂の家』なのでしょう。

本作は、3DCGにポリゴンのキャラを用いたADVでした。
ゲームジャンルとしては、P&C式ADVとかインタラクティブムービーになるでしょうか。
アダルトゲームとしては、それだけで非常に珍しかったですが、PS等のゲーム機では幾つか見られる構造と言えるのでしょう。
ただ、本作はアダルトゲームですからね。
まぁエロさは非常に薄かったのですが、それでもゲーム機の3DADVとは異なる雰囲気作りはできていたのでしょう。

それと、本作は昭和30年代を舞台としておりまして、グラフィックとサウンドからくる雰囲気が抜群に良く、個人的には非常に好印象でしたね。
特にBGMや効果音が抜群で、その世界に引き込まれていきそうです。
そもそも、ミステリーもの自体が非常に減り始めていた時期でしたから、本格ミステリーものってだけでも嬉しいところに加え、時代設定も珍しく、更にそれを3DCGで表現しているわけですからね。
昭和30年代を舞台にしたアダルトゲームは今でも稀ですし、それを3DCGでとなると、おそらく本作だけになるのでしょう。
そう考えると、本作の有する雰囲気は唯一無二のものであり、今でも価値は全く色褪せないようにも思います。

<評価>

アニメだけを見て憧れてアニメ業界に参入し、それで本当に新しい物が作れるのかという問題があります。
それはアニメ業界に限らず、アダルトゲームでも同じようなことは言えるわけで、人気作の模倣により似たような発想や構造の作品ばかり増えています。
h.m.pの作品が優れているかと聞かれれば、必ずしもイエスとは答えられないのだけれど、このブランドの作品の持つ個性・雰囲気は、他のアダルトゲームブランドでは決して真似できないでしょう。
私は、エロゲとかノベルゲーとはこういうものだと、勝手にお約束を決めつけることに非常に抵抗を感じるのですが、h.m.p作品は他業種からの参入だからこそ、余計なしがらみもなく自由に作れたのかもしれません。
おそらく本作の様な作品は、もう出てくることはないでしょう。
そう考えると、何だか寂しくなってしまいますね。

ランク:B(良作)


暗闇坂の家

Last Updated on 2024-12-29 by katan

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