『仄かに視える絶望のmemento Remember that I love you.』は、2002年にWIN用としてデジアニメ・コーポレイションから発売されました。
菅野&田所。この作品が初めて発表になった時、凄く興奮し期待した人も多かったのではないでしょうか。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・
この物語の主人公は二人の少女。
彼女達は何者かの陰謀で事故に遭い、特殊な記憶障害に陥ってしまう。
それは、数時間おきに記憶力がゼロになる“空白の時間”がやってくるというものだ。
記憶ができないということは、その時間帯に何があっても覚えていないということ。
つまり、その時間に“どんなこと”をされても、二人には微塵の記憶も残らないということだ。
そのことを知った二人は、協力しながら互いに欠如した記憶を補うために行動していく。
そして、記憶のピースを繋ぎ合せるうちに、明らかになっていく恐るべき真実。
記憶がなくなることを利用して、欲望に任せて男達が自分に何をしたのか……?
真実の先にあるのは光?それとも絶望?
<感想>
本作が発売されたのは2002年のことであり、ゼロ年代にエロゲデビューした人はもちろんのこと、90年代後半のWIN95以降にエロゲデビューした人なんかも、あまりピンとこなかったかもしれません。
しかし、PC98時代からプレイしてきた人ならば、本作の発表を聞いて興奮と期待が止まらなかった人も多かったはずです。
制作総指揮“菅野ひろゆき”、プロデューサー“田所広成”。
両者の代表作が出揃ったという意味では、95年が解りやすいでしょうか。
ザッピングシステムの『EVE バーストエラー』の菅野さんと、初の本格調教SLG『SEEK』の田所さんのコラボになるわけですから、95年のアダルトゲームを知っている人にとってみれば、夢のコラボとも言えるでしょう。
もっとも、夢のコラボと煽られても、最近のノベルゲーとかだと、一発屋同士のコラボとかで最初から期待できないケースもあります。
しかし菅野さんは『DESIRE』や『YU-NO』など他にも代表作がありますし、本数という意味では、田所さんはもっと実績が多く、PILブランドの数々の作品だけでなく、98時代のアイデス(F&C)の有名作にも多数関わっていましたからね。
実績も十分な両名のコラボだけに、凄く期待したくなるのも当然と言えば当然なのでしょう。
現在だと、誰が匹敵するのかな・・・
個人的にはアリスのTADAさんとkeyの麻枝さんが組めば、結構興奮してくるかもしれませんが、そもそも菅野さんと田所さんは単なるシナリオライターにとどまらず、システム面も含めた総合的なゲームデザイナーですからね。
ゲームデザインをしっかり構築できるクリエイターは、今のエロゲ業界にはほとんどいないわけで、自分が期待したのも斬新な作品を生み出す、ゲームデザイナー同士のコラボという面に対してですから、この当時の菅野&田所のコラボ発表以上に期待したくなる組み合わせは、ちょっと思い浮かばないです。
程度の差はあれ、古参ユーザーなら期待したくなったと思うのですが、一方でフライングシャインに丸投げという噂もありまして。
フライングシャインは、今なら知名度もそれなりにあるでしょう。
もっとも、自身のブランド名で作品を出すのは2003年以降であり、それ以前は他ブランドの下請けで作品を出していたのです。
本作は原画がみんめいさんで、シナリオが三宅蒼色さんということで、rougeの『DoNoR』と同じなんですね。
また本作のシステム的には、rufの『傀儡の教室』と似ています。
これらはブランドこそ違うものの、どちらもフラシャ製作の作品です。
本作はみんめい&三宅蒼色の色が非常に濃く表れた作品であり、良くも悪くもフラシャっぽい作品だったのです。
これにより、本作は二つの点でこちらの期待を裏切ったことになります。
一つは、フラシャの色合いが濃すぎて、菅野さんらしさも田所さんらしさも全く感じられなかったことです。
もう一つは、プレイしていて既視感が強く、これは斬新な作品を作ってきた両名のファンが望む物とは、正反対にあるということです。
<評価>
みんめい&三宅蒼色の作品として事前に理解をした上で、今からプレイするのであれば、それなりに楽しめる作品だとは思います。
そのため、総合では凡作としておきます。
ただ、確かに必ずしも作品の質が悪いわけではないのかもしれないけれど、ユーザーの望む物と大きく異なってしまったということで、ある意味詐欺に近い作品でもありまして。
最初から小遣い稼ぎの名義貸しの予定だったのか、それとも何かしらの理由で丸投げせざるをえなくなったのか、クリエイターを深追いしない自分は細かい経緯は知らないのですが、ガッカリしたことだけは確かです。
菅野さんのファンも田所さんのファンも多くいたし、信頼も大きかったと思うのですが、ここで失った信用・信頼は思いのほか大きかったんじゃないかなって、今にして思うんですよね。
Last Updated on 2025-04-23 by katan