『はじめるセカイの理想論 -goodbye world index-』は2024年にWIN用として、Whirlpoolから発売されました。
ヒロイン全員トゥルールートという方向性の、今風な作品でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・
ここは、あなたが住む『そこ』ではないどこか。
主人公の少年・小野宮シンは、この世界を司る神の呼びかけに応えた『転生者』の一人。
「世界を正しく導いて欲しい」神から託されたのは、この歪な世界の未来そのもの。
周りには彼と同じように異なる世界から招かれてきた仲間たち。
『世界の敵』と称される影の化け物と戦いながらも、どこか穏やかで賑やかな『日常』が続いていた。
少年の心には傷がある。かつて彼が生きていた世界は嘘にまみれ、その嘘に彼は殺された。
この世界に転生した時、彼が神に願い獲得した能力は『ダウト』。それは、他人の嘘を見抜く力。
もう二度と、嘘が自分を傷つけないようにと。
しかし、その力は同時に仲間たちの心をも暴くものだった。
心に秘めていたことや、目を逸らしていたいもの。
そんな少女たちの傷に触れることで、ぎこちなく、少しずつ、両者の距離は縮まっていく。
日々、刻まれていく終末へのカウントダウン。
かつて自らの居場所を失い、「こうであるべきだった」という理想を胸に隠し、招かれた少年・少女の思いによって世界は形を変えていく。
終末のその先。誰かが掲げる理想の世界へ向けて。
<感想>
どんな分野でもそうかもしれませんが、ゲームの世界においても、その当時評価されやすいものもあれば、当時は評価されていても、後の時代に評価されにくくなるものもあります。
簡単にいえば、流行り廃りがあるということですね。
そもそも最初期のADVなんて、クリアできないことも普通でした。
90年代に入り、複数のヒロインが登場する作品も出てきましたが、多数のヒロインの中から、自分の気に入ったヒロインだけを攻略すれば良く、すべてのヒロインを攻略する必要はありませんでした。
用意された材料の中から何を選ぶのか、どう扱っていくのかは、プレイヤーに委ねられていたのです。
ましてやアダルトゲームなんて、他に比べればプレイヤーの平均年齢は高いでしょうし、時間の限られた社会人率も高いでしょう。
そうなると、限られた時間の中では、オールクリアを必須にするより、プレイヤーにどうプレイするかは委ねた方が適していると思います。
そのため、作品の中に優れたルートと平凡なルートが混在していたとしても、優れたルートの評価≒作品の評価とされやすかったように思います。
この点については、私もそれで良いと思っています。
しかし、時代が経ち、ゼロ年代に入る辺りからオールクリア必須構造の作品が増えました。
この構造の功罪について、ここで深入りするつもりはありません。
ただ、事実として言えることは、ユーザーの視点が、優れたルートがあれば高く評価するというものから、全ルートの出来から評価するものにかわっていったことです。
つまり、100点のルートと30点のルートがある作品と、すべて70点のルートの作品があった場合、昔は前者が評価されがちだったのですが、今は後者の方が評価されやすいのです。
私は古くからのユーザーなので、前者を評価するタイプですので、最近のユーザーの傾向とは異なるのでしょう。
いずれにしろ、今、ユーザーに評価されやすい作品を作りたいのであれば、1つでも突き抜けたルートのある作品よりも、どれも平均を超え、穴のない作品作りを目指した方が良いのでしょう。
本作は、ストーリーの設定からしても、今風な作品だなという印象を抱くところ、構造的な部分をみても、ヒロイン全員トゥルールートということで、短所となるルートをなくすことを意識しており、今、ユーザーに受け入れられやすい作品になっているのです。
そういう意味では、今うけるエロゲ作りという観点からは、模範的な作品だと思いますし、入門者向けの作品としても適しているのでしょう。
本作は、内容的にもキャラゲーとストーリー重視作品の中間的な構造であり、多くのユーザーから叩かれにくい内容になっていますし、本当に今という時代の中では、お手本のような構造の作品なのでしょう。
これで全てが秀でていれば、とても素晴らしい作品になっていたかもしれません。
問題は、その個々の要素なのでしょう。
というのも、ストーリーにもキャラにもそれなりに力が入っているのは分かるのですが、どれも旧態依然として見えてしまうのです。
バトルシーンにしても、いつまでこの表現なのだろうと思ってしまいます。
本作のバランスの良さ、総合力の高さは、同人ゲームにはない魅力とは言えるでしょう。
しかし逆に、同人ゲームにあるような尖った部分や個性がなく、同人ゲーとかをプレイした後に本作をプレイすると、余計にも薄く感じられてしまうのです。
<評価>
そつなく作られていること、普通には楽しめたことから、総合では佳作とします。
ただ、本作に関しては、いつプレイするかでも印象の変わりうる作品でもあり、エロゲ初心者の入門作としては、良く出来た作品かなと思いますので、その観点からは、おすすめできる作品ではないでしょうか。
ランク:C-(佳作)

Last Updated on 2025-06-15 by katan
コメント