『東京トワイライトバスターズ ~禁断の生贄帝都地獄変~』は、1995年にPC98用として、日本テレネット(ウルフチーム)から発売されました。
遊べるADVとして、98時代でも屈指の作品でしたね。
<総論>
3人称視点のP&C(ポイント&クリック)式ADVは、長年にわたり海外のADVの主流システムでした。
しかしながら国内では、現在はほとんど見かけることがありません。
もっとも、決して皆無というわけではなく、PC98時代のADVには少なからず存在しており、中にはとんでもない傑作も存在するのです。
その代表例が本作であり、『東京トワイライトバスターズ』はまさに傑作中の傑作でした。
<ゲームデザイン>
上記のように一言で表現しようとするとP&C式ADVになるのですが、二つの異なるシステムから成りたっており、若干変則的な構造になっています。
1つは、どこかに移動したり誰かと会話したりする普通のADV部分で、ここは正確にはコマンド選択式のADVとなります。
主にストーリーを進める場面で用いられます。
もう1つは、ダンジョンみたいな所を探索するモードで、そちらに移るとP&Cスタイルになるわけです。
そして『東京トワイライトバスターズ』は、この探索モードが非常に面白かったのです。
具体的にはまず、プレイヤー側は最初は1人で行動します。
それが次第にRPGのパーティのように人数が増えていき、最大で同時に4人を一緒に行動させることが出来ます。
もちろん、4人で一緒に行動してもかまいません。
硬い扉を破壊するのなんかは、1人でやるより4人の方が絶対早いですから、一緒に行動するのが基本となるでしょう。
しかし、例えば扉があって、その扉は遠くにあるボタンを押さないと開かないとします。
この場合には、パーティーを2つに分けてボタンを押す役割と、扉の先に進む役割とに分担しなければなりません。
そしてその2つのパーティーを、プレイヤーは交互に扱わなければならないのです。
そう、ザッピングシステムなんですね。
しかもただ切り替えるだけではなく、片方がもう片方にも影響を及ぼすという意味では、マルチフラグ的でもあるわけです。
このザッピング+マルチフラグを如何に上手く使えるかが、ゲーム攻略の最大のポイントなのです。
上に書いた例だと、とても簡単に思えるでしょう。
もちろん、これは初歩中の初歩にすぎません。
ゲームが進行するに従い、段々と難しくなっていきます。
操作もそうですが、どのタイミングでパーティーを分断すべきか、どのタイミングで切り替えるべきか。
プレイヤーが判断すべき事は山ほどあります。
この探索モードには時間制限がありますからね、ボヤボヤもしてられません。
ザッピングをここまで上手く扱ったゲームって、他にはまずないのではないのではないでしょうか。
非常に良く練られてありましたね。
そして忘れてならないのは、ザッピングがあるからといって、即面白いとなるわけではないことです。
基本的なシステムがしっかりしているからこそ、プラスアルファのザッピングが更に引き立ってくるのであって、基本がないただのザッピングだけのゲームだったら、ここまで面白いとは感じられなかったでしょう。
本作の探索モードはP&C式ADVという基本システムを採用しています。
クリックできる箇所も多かったし、あちこちクリックしたらいろんなアイテムが次々に手に入るので、クリックする楽しみが十分に用意されていました。
ザッピングがなかったとしても、この要素だけで十分に楽しめる出来でしたね。
したがってP&C式ADVとしても、ザッピング+マルチフラグADVとしても、その両面で傑作足りうる非常に面白いゲームでした。
もう一つ、こちらは細かいシステム部分の補足になりますが、探索モードは時間制限がありますので、時間切れでゲームオーバーになってしまうこともしばしばあります。
しかし、ゲームオーバーになってもやり直しが容易なので、難しいながらも親切な配慮があると言え、非常に遊びやすかったですね。
<感想>
ストーリーは伝奇ものになります。
時代設定は大正十二年であり、父親が消息を絶ったとの報を受け、急遽イギリスから帰国した草薙祥が、父の足取りを追ううちに、数々の怪事件に巻き込まれていくという内容です。
伝奇であるとか、大正時代を舞台にした作品というのは、それだけで好きだよって人も結構いると思います。
確かに今でこそ腐るほど出てるジャンルではありますが、伝奇も大正ものも当時はほとんどなかったですからね。
完成度は格別に高いとまでは言えないのかもしれませんが、当時はオンリーワンな存在でもあり、プレイをしていて常に新鮮に感じました。
制作者によると本来の予定より若干削られたらしく、そこだけは残念でしたけどね。
もし完全版が出たなら、多少高くても絶対に買うでしょう。
<グラフィック・サウンド>
PC98末期ということもあり、グラフィックも雰囲気がある上に綺麗でした。
ドット絵の書き込みはまさに職人芸の域でしたし。
やっぱりドット絵はPCゲーに限りますよね。
この雰囲気は、移植では再現できないでしょうから。
98ゲーを直にプレイできた人のみの喜びかもしれません。
また、MIDI音源搭載で、サウンド面も迫力十分でした。
特に探索モードでの緊張感は、サウンドの影響も大きかったのでしょう。
<評価>
遊べるゲーム性の高いADVとしては、間違いなく国内屈指の出来でしょう。
できればここの制作陣によるADVを、もっとやってみたかったものです。
本作はPC98末期の一般PCゲーであり、発売時期が悪かったこともあって、長い間幻の作品でした。
ヤフオクでも凄く高額でしたし。
遊びたくとも遊べない、他人に薦めたくとも薦めにくい時期が続きました。
今はDSでも出ているので、その点では便利になりましたね。
まぁ、繊細な作品ですので、DSでどれだけ再現できたか疑問ですけどね。
ちょっとした違いで印象が大分変りますから。
個人的にはEGGとかの方がオススメかなと思います。
ランク:AA(名作)
Last Updated on 2024-11-02 by katan
コメント
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こんにちは
このゲームを語ってくれる人がいるなんて。。!
私の中ではYU-NOと並ぶADV作品です。
ちょっと前久しぶりにやったら難しすぎた–
アイテム改造して爆薬で扉壊しまくったのは秘密です。
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>>oxさん
このゲームは、本当に全てが高水準の良いゲームでしたよね。
ただ、私も今やったらかなり手こずるかも。
今度DSで出るみたいなんで、知名度はあがるかもですね。