『Bacta(バクタ)』は1992年にPC98用として、姫屋ソフトから発売されました。
姫屋ソフトのデビュー作となった作品でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。
本作は近未来を舞台にした作品です。
もっとも、街には妖魔が出没し、各地で事件を起こしています。
そこで警察は、妖魔に対処するための組織を結成。
主人公である陣八も、その組織の一員となるところから、物語は始まります。
<感想>
本作はゲームシステムに変わった部分があるわけではなく、端的に言えば物語を楽しむ作品となるのでしょう。
とは言うものの、ストーリー自体はあんまり重要じゃないのかな、この場合。
コマンド選択式の美学とでもいうのでしょうか。
楽しいと思えるコマンド選択式のゲームには、決まって遊び心があったように思います。
ストーリー本筋を追うだけなら小説で事足りるわけで、そういう本筋とは異なる脇道を楽しむって発想ですね。
これは実は、コマンド選択式に限った話でもないので、他の形式のADVにだってありえます。
例えばノベルゲーでも、TIPSとか解説とか、本筋とはそれた部分で楽しめる作品もありますよね。
ただ、ノベルゲーの場合は、その性質上、本筋と脇道が分離してしまうのに対し、コマンド選択式の場合は、それらを自然と混ぜ合わせやすかったわけで、そこがコマンド選択式の強みでもあったのでしょう。
そういう本筋と異なるけど作品への愛着が深まる要素って、クリアには関係ないのだけれど、キャラや世界観に深みが増しますし、得した気分になれます。
だからそういうのが好きな人もいると思うんですよね。
コマンド選択式ADVには幾つもコマンドがあって、クリアだけを目的とした場合には、その場面で選ぶ必要がないコマンドも多数登場します。
でも、面白いコマンドがあったり面白い反応が返ってくると、ついつい試してみたくなっちゃうものです。
PC98時代において、その辺が上手かったのがエルフの蛭田さんだったり、シーズウェアの剣乃(菅野)さんだったりするわけですが、このバクタの安部さんもまた同じ系統に属するのでしょう。
エルフやシーズウェアのように、システム上での新要素がなかったため、後にまで語られることは少ないのだけれど、選択式における作り込みという完成度の高さの観点からは、安部さんも決して引けを取らない方だったと思いますし、評判も良かったと思います。
余談ですが、最近はテキスト(シナリオ)重視ですって人が多いです。
それはそれで1つの考え方なので構わないのだけれども、昔の有名作もやってみましたって言って、システムで有名になった作品ばかりに手を出すケースが多いです。
人ごとではあるものの、どう見てもあなたの好みと違うでしょって思ってしまう。
シナリオライターって、人によっては一番重要な要素なのだろうけれど、そのわりにはアダルトゲームでは常に日陰の印象もあります。
結局売り上げを決めるのはグラフィックだったり、新しいシステムだったりするのですから。
たまにPC98時代のシナリオライター特集みたいなのも目にしますが、必ず名の出てくる蛭田さんや剣乃さんにしても、まずは斬新なゲームデザインの作品で有名になったわけですからね。
そのゲームデザイナーが、シナリオ方面でも才能があったというだけです。
逆に、ゲームデザインに関しては平凡だけど、シナリオないしテキストは抜群という純粋なシナリオライターの場合、WIN以降のネットが普及した時代であれば、作品は売れていなくても、ネットで信者が名作だと煽ることで、後の世にも伝わっていくことも多いです。
しかし、PC98までの作品ですと、当時は話題になっていたとしても、その後には名が残りにくいように思います。
純粋にストーリーという部分だけなら三峰さんとか、シナリオ(テキスト)の上手さという部分なら阿部さんとか、話題になり評判の良かった人もいろいろいるはずなのですが、PC98時代のシナリオライターという特集で、こうした方たちの名を見る機会は、今はなくなっていますからね。
WIN以降と異なり、昔になればなるほど、シナリオライターの名は埋もれやすいと言えるのでしょう。
蛭田さんや剣乃さんにしたって、斬新なシステムのゲームを出していなかったら、シナリオライターとしての評判にしても今ほどではなかったのは間違いないのでしょう。
本作も、ゲームシステムの発展やグラフィックないし演出の発展の面からは、大して意義のある存在ではないでしょう。
でも、プレイした人の間での人気が高かったのは、完全にシナリオ(テキスト)が良かったからなわけで、シナリオ重視ですって人の視点からはこういう作品の方が合いやすいし、こういう作品こそプレイすべきなんですけどね。
どういう作品が名作と言われやすいかなんてのも、時代により異なってくるわけですから、理由も知らずにただ名作と言われているからと手を出すのは、愚かでしかないのでしょう。
話を元に戻しまして、本作は、シリアスっぽい雰囲気も有しながらも、基本は馬鹿げたギャグ中心だったりするわけで、プレイしていてとにかく楽しいって思える作品でした。
シリアスとギャグの双方が含まれるADVというと、今のノベルゲーの場合だと、ギャグパートとシリアスパートに分離しがちです。
しかしコマンド選択式を上手く作った場合、本筋としてのシリアス部分とギャグを含んだ脇道部分とを、上手く融合し同時に進行できるわけでして。
本作の面白さを知らない人に説明するのは非常に難しいのですが、本当に面白いコマンド選択式を知っている人ならば、コマンド選択式で非常に上手く作ったタイプだと言えば、おそらく分ってもらえるのでしょう。
また、本作では、プレイ開始時にいきなりHシーンから始まります。
妖魔は女性にとりつくもので、妖魔かそうでないかの判断はHでしか分かりません。
こういう、いかにもアダルトゲームっぽい設定も良かったし、主人公と妖魔の化かしあいも良かったです。
それに加えて、サウンドも秀逸でしたね。
<評価>
よく作られた作品であり、目新しいところはないのだけれど、完成度の高い作品となるのでしょう。
いわゆる通好みというか、玄人好みの作品とも言えるのでしょう。
だから絶賛する人がいたならば、あぁ、この人はADVを分っている人だなと理解できます。
ただ、ストーリーは単独で名作と言いきれるほどではなかったですし、ボリュームも少なめでした。
私は、素人っぽく目新しさに惹かれるタイプなので、そのため名作というには少し足りないかなとは思い、総合では良作としましたが、デビュー作ながらに、鮮烈な印象を与えた作品だったと思いますね。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2024-08-29 by katan
コメント
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目新しいものは何もないのに、
何度やっても笑える恐ろしいゲームだった。
特にバーテンダーのエミモラス田中のくだり。
あとBディスクを1ドライブに入れるとか。
サウンドは「紙飛行機のパイロット」という曲名だけが記憶に…
ボリュームの薄さが密度に思える
奇跡のフロッピー2枚
褒めすぎたか…
単に自分とギャグセンスの波長があっただけかもしれん…
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>ボリュームの薄さが密度に思える
奇跡のフロッピー2枚
その気持ちは分かるように思います。
良く練られたゲームでしたからね。
Bディスクは何かありましたっけ?
ちょっと忘れてしまいました。
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Bディスクにもブートが入っていて、
PCのキーボードにコーヒーをこぼした画像が表示され、
「おっちょこちょいだなあ君は」的なテキストが表示される
ちなみにその時のBGMは「Bディスク」
こんなつまらないミスをした人のために
わざわざ仕掛けをしておくところに
強いエンターテイメント性を感じる
おいしい料理とは粋なもの、さりげなく気が利いてなければならない
ってどこかのおばあちゃんが言っていたし
コピーガードの
ジェノサイドモードとか、
「この中に悪い奴がいる!」とか、
船が港に着きませんとか、
そういうのにも似ているけど悪意はなく
どっちかというとWin初期のゲームによくあったCDとして聞けるボーナストラックみたいなものか…
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ディスクを入れ間違えると何かあるってゲームはたまにありましたね。
ああいう遊び心は好きでした。
う~ん、最近のゲームはいろいろ豪華になっているのだけれど、何かこう粋だなって感じられる要素がなくなったように思うわけで、ちょっと寂しく思ってしまいますね。