『DE・JA2』は1992年にPC98用として、エルフから発売されました。
デジャシリーズの2作目であり、当時最高のストーリーとボリュームを有した作品でした。
<はじめに>
優れたストーリーを書けるライターというのは増えてきていますが、ADVにおいて斬新なゲームシステムをも構築できる人、或いはストーリーと融合したゲームデザインを描ける人というのは、むしろ減ってきている気がします。
したがって、これらができるゲームデザイナーは本当に貴重です。
その中でも、80年代のADVならば堀井雄二さんが別格でした。
そして90年代ならば、間違いなく剣乃さんと蛭田さん抜きには語れないのでしょう。
ただ、剣乃さんの場合なら私は『YU-NO』を一押ししますが、他の2人は必ずしもこれって言い切れない面がありまして。
堀井さんの作品の中では、私は『オホーツクに消ゆ』が一番好きです。
システムの斬新さとか事件の派手さとかなら、オホーツクが一番なんですよ。
私はそういう点を高く評価しがちですからね、だからオホーツクが一番好きなのです。
ただ、周りでは案外『軽井沢誘拐案内』が一番って人も多くて。
斬新なシステムはなくて事件も地味なようでしたが、徹底的に作りこまれた内容とテキストの充実度が素晴らしかったですからね。
軽井沢が通好みの作品として支持されるのも納得です。
さて、上記をふまえてそろそろ本題に入りましょう。
90年代のADVを語る上で、絶対に避けて通れないゲームデザイナーの一人である蛭田さん。
彼の一番の代表作と言えば、多くの人が『同級生』を挙げるでしょう。
私も1本選べと言われれば、間違いなく『同級生』を選びます。
その『同級生』の最大の魅力は、ゲームシステムにありました。
システムの持つ斬新さと派手なインパクトに、つい心を奪われたものです。
ただ、蛭田さんの魅力はそれだけではありません。
蛭田節とも言われるそのテキストや描かれるストーリーもまた、強力な魅力だと言えるでしょう。
では、ストーリーについても『同級生』は最高なのかと聞かれると、私は迷わずノーと答えます。
もちろん、『同級生』のテキストも素晴らしかったです。
同時期の他社の普通のゲームとは、比べ物にならない程でしょう。
しかし、それでも蛭田作品の中では、一番ではないと思っています。
というか、蛭田さん自身も言うように、『同級生』はイベントの集合体でありストーリーはないのですよ。
蛭田節が一番存分に発揮されつつ、ストーリー方面でも蛭田作品の最高傑作となると、やっぱり大長編の『DE・JA2』だと思うのです。
明確に違いを表現できるシステムと違って、ストーリーやテキストは明確に差異を示せないですからね。
また、人によって好みや感性も違いますし。
だからどうしても意見は分かれるだろうし、『同級生』ほどのインパクトもないですけどね。
しかしながら、本作をやった人の多くは、おそらく賛同してくれるかと思うんですよね。
<ストーリー>
そのストーリーなのですが、ジャンルは冒険ものになるでしょうか。
考古学者である主人公の「はつしばりゅうすけ」が、今度は水晶ドクロの謎を追って冒険に出かけます。
さながら、和製インディージョーンズって感じですね。
これをプレイしてた当時は考古学者に憧れたり、オーパーツに興味を持ったりしてましたっけ。
あぁ何か若き日を思い出しますねw
この年の傾向なのかどうかはわかりませんが、『DE・JA2』には結構鬱になるシーンもありました。
鬱ゲーというと、92年の作品では『狂った果実』ばかりが有名なように思います。
もっとも、どちらかと言うと『狂った果実』は、場面場面での瞬間的な鬱だと思います。
他方で、『DE・JA2』の場合、一緒に行動していた人が酷い目にあったりすることから、流れの中から生まれる鬱でした。
思い入れのある人が酷い目にあうことが堪えるという人には、『狂った果実』より、むしろ本作の方が鬱になるんじゃないかな。
単発のシーンで判断する人だけでなく、一連の流れで考える人もいますからね。
ここは結構人によって甲乙が分かれるかと思います。
ちなみに、個人的には『DE・JA2』の方が堪えたし、好みですね。
序盤はゆったり蛭田節によるギャグを堪能しながらも、終盤の怒涛の展開は圧巻で、ストーリー自体にはもう大満足でした。
しいて言うならば、オチのネタがシンキングラビットのカサブランカと似てましたかね。
そのため、その点で驚きが少なかったという人はいたでしょうね。
まぁ、その意味で厳密に言うならば、ストーリーの一点が最高というわけではないのでしょう。
本作は、それ以前の狭義のストーリーだけ良い作品とは異なり、クリック時のテキスト変化による横の広がりも含めた上で、総合的に最高だったということですね。
<キャラ>
本作は2作目であるところ、相変わらず「りゅうすけ」と「がちゃ子」は最高でした。
キャラというかテキストというか、読んでいて、とにかく楽しいのですよ。
それとね、キャラが大人だなって感じられるのが、今にしてみると非常に大きいです。
子供っぽいお茶目な面は随所にあるんですけどね、本質的に主人公の精神年齢はこちらより上です。
最近のゲームは、キャラのそもそもの設定年齢が低いだけでなく、仮に高く設定していても中身の精神年齢が低いです。
言葉は悪いですが、出てくる人物が皆お子様ばかりなんですよ。
ここら辺からくる違和感が、年を追うごとに私には辛く感じてしまって。
そうなってくると『DE・JA2』のようなゲームは、余計にも価値が出てくるのです。
昔面白かったのに今やると楽しめないというゲームも多いですが、『DE・JA2』はむしろ逆で、どんどん貴重に思えていってしまうわけでして。
萌えられるキャラは毎年のように新しいキャラが出てきますが、りゅうすけとがちゃ子の魅力はいつまで経っても色褪せる気がしません。
<ボリューム>
また、当時のADVはボリュームが非常に少なかったです。
数時間で終わるものも多かったですから。
いや、少なかったというより、ある時期を境に少なくなっていったという方が正しいでしょうか。
コマンド入力式から選択式に移行した時点で、ADVの総プレイ時間の平均は減りました。
一言だとそうなるんですけどね。
実質的に見ると、状況はもっと複雑です。
コマンド選択式の最初期では、総プレイ時間は変わらなかったと思います。
80年代的コマンド選択式は、コマンド数が非常に多く、考えさせる作品も多かったですから。
その後、CSのADVを中心に、誰でもクリアできるように、コマンド数を減らすようになりました。
それでも当初は、ボリューム不足を感じさせないように、同じコマンドを何度も繰り返させることで、問題を解決しようとした作品もありました。
ただ、この方法はプレイヤーに嫌われることも多かったので、80年代末から90年代初め頃に入ると今度は必要なコマンドだけが表示され、更にコマンドの繰返し回数の少ない作品が増えていきました。
それによって、多数のコマンドを繰り返す煩わしさからは解放されたものの、逆に総プレイ時間が大幅に減ったのです。
そうした流れもあり、この頃のPCのADVは、特にプレイ時間の短いゲームが多かった時期でした。
そのような状況でしたから、クリアまでに数十時間を費やす『DE・JA2』は、存在自体が異質だったのです。
このボリュームは、当時では別格に多かった方でしょう。
それどころか、当時のRPGの平均クリア時間より長そうですし。
その意味でも満足のいく作品でしたね。
<感想>
ゲームシステムはポイント&クリック(P&C)タイプと、コマンド選択式が混じった併用タイプのADVです。
国産でP&Cタイプって少ないですからね。
もし仮に『YU-NO』がなかったならば、本作がP&CタイプのADVの最高傑作と言えたかもしれません。
ただ、ここは若干注意も必要かもしれません。
本作では、P&C式とコマンド選択式が併用されてはいるのですが、どちらかというと、コマンド選択式寄りなのです。
本作より先に発売された『ELLE』は完全なP&C式であることから、個人的には若干退化とも感じられますし、少々残念な変更でもありました。
何で退化とも思える変更をしたのか疑問でもありましたが、蛭田さんに言わせると、P&C式はまだ馴染みのない人が多く、それで先に進めず詰まってしまう人も多かったとのこと。
それで、たとえば『ドラクエ3』が『ドラクエ2』よりも難易度を落としたように、ユーザーの多数派に合わせて難易度を落とし、誰でもクリアできるようにコマンド選択式との併用にしたのでしょう。
そのため、一般的な多くのユーザーには良かったのでしょうが、個人的にはちょっともの足りないというシステムになったわけですね。
エルフの進化に、周りが追い付いていけてなかったということであり、経営的には仕方なかったのでしょう。
さて、システムとグラフィックの両方に関連する話ですが、あちこちクリックしたり選択したときに面白い返答があるだけでなく、ちょっとしたアニメーションもあったりしたので、この点でも非常に楽しめました。
こうした飽きさせない配慮は嬉しいですよね。
ここら辺は当時のエルフのゲーム全般にも該当する、エルフ作品の大きな特徴であり、他社より圧倒的に優れていた部分でもあるのでしょう。
<評価>
『同級生』(1992年12月)以後のゲームしか知らない人も多いので、そういう人が『同級生』から語りたがる気持ちも分かるのですけどね。
でも、『同級生』によってストーリーの楽しめる作品が出てきたと言われると、それ以前からもっと他にもあっただろと言いたくなってしまうし、そもそも『同級生』自体も理解していないのではと思えてしまいます。
そして何より、エルフでストーリー・シナリオ重視ならば、まず本作だろって思うわけで、それくらい非常に大満足の作品でした。
事実上のDE・JA3にあたる後継作が『YU-NO』になるのかもしれませんが、できれば純粋な続編である『DE・JA3』を見てみたかったものですし、りゅうすけとがちゃ子をまた見たかったものですね。
ランク:AA(傑作)
Last Updated on 2024-09-15 by katan