艶談歴史絵巻ぬかたのおおきみ

1989

『艶談歴史絵巻ぬかたのおおきみ』は1989年にPC88用として、全流通から発売されました。

全流通の艶談シリーズも、今回で3作目になりますね。
ただ、主人公は交代していますし、目的も異なりますので、その点でちょっと毛色が異なる感じかと。

<概要>

シリーズ過去作と少し毛色は異なるのですが、どの作品もタイムスリップして過去に遡り、歴史上の事件に介入しながら、当時の女性と触れ合うってのは共通していますので、基本的な流れは一緒と言えるのでしょう。

そんなわけで本作でも過去にタイムスリップするわけですが、今回は飛鳥時代です。
歴史上の事件としては、大化の改新が重要になってきます。

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
文章を読みすすめると選択肢が出てきて、それを選ぶことで展開が変わってくるわけですね。
その起源となると、一般的には『シンデレラペルデュー』となるのでしょう。
もっとも、『シンデレラペルデュー』の場合、Hするか否かみたいな簡単な分岐しかなく、マルチストーリーとは言えないようなしろものでした。
選択肢を選ぶことでストーリー展開がきちんと変わるものとなると、この艶談シリーズあたりまで待たなきゃ駄目だと思うんですよね。
そのため、個人的には実質的な元祖は艶談シリーズ1作目の『いろはにほへと』で、初めて名作と呼べるクオリティに至ったのが艶談シリーズ2作目の『ごらくいん』だと考えています。
まぁ、詳しくはそれぞれの記事をご参照ください。

<感想>

さて、それを受けての本作なわけですから、当然期待したくもなるってものですよね。
とは言いつつも、実は思ったほど期待していたわけでもなく、プレイしてみてもやっぱりなって感じでした。

すなわち、『ごらくいん』の時は戦国時代が舞台で、多くの有名な歴史上の美女がいました。
しかし、これが飛鳥時代となるとね・・・
血筋的には、シリーズでも最も高貴な女性ばかりなのでしょうが、如何せん知らない人や、名は知っていてもイメージの沸かない人ばかりでした。
その時点で熱中度が変わってきますよね。
しかも、何かゲーム内のおっさん率も高かったですし。

これだけだと、単に私の好みの問題になってしまうのですが、ゲーム的にもどうなんでしょうね。
『ごらくいん』では、主人公はもっと大胆に動いて歴史に関与できましたし、出会った女性とも交流できたのですが、本作ではとにかく正確に大化の改新を再現させようって感じで、ゲームとしての展開の幅が狭く感じられました。
歴史シミュレーターみたいに、忠実に歴史の再現をしたい人には良いのでしょうが、ゲームとしてはちょっと窮屈に感じちゃいました。
結構難易度も高かったし、過去作とは異なり、あまりお気軽にって雰囲気ではなかったですね。

ノベルゲームには大雑把に分けると、「選択肢による分岐」を楽しむゲームブック型と、「物語中心」であるノベル型があります。
艶談シリーズの発想は前者に当たるわけで、これは後のサウンドノベルとかに通じます。
他方で、システムサコムの絵と音で物語を楽しませるというノベルウェアの発想は、後者に当たるわけで、これは今日のエロゲ等の多くのノベルゲーに通じます。

つまりノベルゲームにおける2つの大きな要素は、遅くとも88年には出揃ったわけです。
それを踏まえた上での本作のプレイは、確かに楽しくはあったのですが、新しい何かがあったわけでも完成度を高めたわけでもなく、名作と言うにはもう一つ何かが足りなく感じてしまったのです。
そういうわけで、個人的には良作としておきます。

まぁ、ここは捉え方次第なところもあるかもしれませんね。
本作にしても、史実の部分を強化することでストーリー性を増し、上記2つの要素を両方満足させようとしたのかもしれません。
ただ、ストーリー性を強めれば、分岐要素が弱まりがちです。
逆に分岐を強めればストーリーはぶれてしまい、物語としての主張がぶれてしまいます。
これはノベルゲームをやった人なら誰しも感じた経験があるでしょうが、そこを如何に上手く魅せるのか、そのさじ加減の難しさといった問題が、この時点で論点として出されたと言えるのかもしれませんね。
ここを上手くクリアできていれば凄い名作になりえたのでしょうが、残念ながら本作は、その域にまでは至らなかったってとこなのでしょう。

まぁ、何だかんだで面白いゲームではあるんですけどね。
『高2→将軍』とかよりよっぽど歴史をしていますし、歴史物のノベルゲーなんて今でも少ないから、好きな人は結構好きになれると思います。
基本的にクソゲの多い全流通のゲームの中にあっては、突然変異的にこの艶談シリーズは面白かったものです。

ランク:B-(良作)

Last Updated on 2025-05-11 by katan

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