CRESCENT

1993

『CRESCENT』は1993年にPC98用として、シルキーズから発売されました。

入力手段によりゲームシステムまで変わるという点で、面白い試みのなされた作品でした。

<概要>

本作は、4本のシナリオが収録されたオムニバス作品になります。
タイトルは下記のとおり。
王子が魔女から城を取り返そうとする「魔性の謝肉祭」
透明人間になり女子寮に侵入して女の子に悪戯する「博士の見えない欲望」
誘拐事件を扱った「乙女探偵ボディー・アタック」
迷い込んだ旅館での不思議な体験を描いた「禁断の銭湯」

現代ものからファンタジーまで内容もバラバラですが、全般的な傾向としてはコメディ色の強い作品と言えるでしょうか。

ゲームジャンルはポイント&クリック式ADV、またはコマンド選択式ADVになります。
「または」の意味に関しては後述します。

<感想>

ストーリーに関しては、一つ一つが短いこともありますし、特別面白いってほどではなかったですかね。
この時期のシルキーズはストーリーの面白い作品が出始めますが、名作と後に称えられる作品らと比べると、どうしても見劣りするかもしれません。
個人的には透明人間ものが好きということ、キャラデザが好みだったということから、「博士の見えない欲望」辺りが好きでしたね。
とはいえ、物語の傾向もタイトルにより異なりますし、原画も異なる作品ですので、4つの中のどれが良いかとなると、どうしても人により意見が分かれると思いますけどね。

4つ・・・うん、正確には8つか。
本作は上記のように4本のシナリオが収録されているのですが、
ストーリーとしては8本収録されており、少なくとも8回楽しむことができます。

シルキーズというのはエルフの別ブランドです。
大作を扱ったエルフに対して、小粒でも何かと挑戦的な意欲作が多かったのがシルキーズであり、PC98時代は方向性が明確に異なっていたんですよね。
8回楽しめるというのも、そこが本作における挑戦的な部分でもあるのです。

具体的には、本作はプレイ開始時に4つの中のどのシナリオを選ぶかだけでなく、入力手段をマウスオンリーにするか、キーボードとマウスの併用にするか、どちらかを選ぶことになります。

マウス自体PC98になり標準化されたものなのだけれど、マウスでプレイするかキーボードでプレイするかを問う作品は、これまでにも幾つもありました。
その場合、単にどの入力手段でプレイするかを決めるだけであり、コンフィグの項目の一つでしかないわけですね。

しかし、本作は明確に異なるわけで、具体的にはゲームジャンル自体が変わってくるのです。
つまり、併用タイプを選択すると「コマンド選択式ADV」となり、マウスオンリーにすると「ポイント&クリック式ADV」となるのです。

そしてここからが、本作の凝ったところでもあるのですが、同じシナリオを選んだ場合であっても、コマンド選択式でやった場合と、P&C式でやった場合とではストーリーの内容が異なってくるのです。
だから、4X2で計8回は楽しめるということなのです。

マウスでプレイする人、キーボードでプレイする人、ADVでも今のようにノベルオンリーでなく、様々な形式が存在しえた時代。
そんな状況だったからこそ出された作品とも言えるわけで、93年頃にはオムニバス作品が流行っていたことも加味すると、何とも93年らしい作品ですよね。

<評価>

入力手段によりゲームジャンルも変わればストーリーまでも変わるというのは、本作における肝であり、最大の特徴と言えるのでしょう。
ただ・・・その一番肝心な部分に気付いていない人もいたのかな・・・?
この手のウィキペディアが間違っているのは、いつものこととして、他所でも触れていない場合がありますから。

個人的な感想としては、ゲームジャンルが変わるというのは良いと思うのですが、ストーリーにまで連動させたのはどうなのかなと。
小粒な作品ですから、どうしても全部プレイしたくなりますよね。
でも、そうなると例えば私はマウスでP&C式でプレイしたいと思っても、全部読むにはコマンド選択式でもやらなければ駄目なわけでして。
そういう風にプレイスタイルを強いられるのは、個人的にはあまり好きではないですね。

総合的には佳作としておきますが、上述のように本作ならではの独自の試みがなされたことは確かであり、その点を高く評価する人であれば、もっと楽しめるでしょうね。

ランク:C(佳作)


クレセント

Last Updated on 2024-09-18 by katan

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