散櫻(ちるはな) ~禁断の血族~

1999

『散櫻(ちるはな) ~禁断の血族~』は、1999年にWIN用として、シーズウェアから発売されました。

同ブランドの出世作である『禁断の血族』。
その最後となった作品ですね。

<概要>

ゲームジャンルはMAP移動タイプの、ノベル系ADVになります。

あらすじ・・・御殿は薄紅に包まれるやうに───
大正六年、春。第一次大戦による未曾有の好景気に沸く世間。
紡績業を営む櫻沢智哉氏が自身の屋敷で謎の死を遂げた。
当主を継ぐべき長男の智和は十歳とまだ若く、経営の指揮は無理な為、その後見人として長女の美智葉の婚約者、白石が屋敷の主として赴く。
小高い丘の上に在り、辺りに植えられた櫻が春先に屋敷を包み込むように見える事から、通称『櫻御殿』と呼ばれている櫻沢家に、何かしら不穏な空気を感じ取る白石。
屋敷には智哉氏の娘、美智葉、智佐登、双子の智香と智美、そして息子の智和が数人の使用人、執事と共に住んでいる。
智哉氏の死に方は奇怪であった。
屋敷の前にある大きな櫻の樹に首を切断された上で身体を逆さまに括りつけられていたのである。
爛漫と散る櫻の下で物語は静かに動き出す‥‥。

<感想>

シーズウェアの代表作となると、内容の良さという観点からは、剣乃ゆきひろさんの作品、『EVE バーストエラー』とか、『DESIRE』とかになってくるかと思います。
しかし、シーズウェアという名を世に知らしめ、ブランドに利益をもたらしたという観点からは、1993年に発売された『禁断の血族』は外せないのでしょう。

『禁断の血族』はね、今やれば何が良いのか分からない類の作品であり、若い人には良さを理解してもらいにくいかもしれません。
しかし『禁断の血族』は、後のエロゲ市場において、人気ジャンル・属性となっていく要素について、いくつも先駆けて導入していたわけでして。
『禁断の血族』のヒットがなければ、エロゲの歴史がまた違ったものになっていたと言っても、決して過言ではないと思うのです。
それくらい、当時はインパクトがあった作品なんですよね。

その初代禁血を受けて、96年には2作目が発売されています。
初代禁血からがらりと雰囲気が変わりましたが、高難度なマルチストーリーマルチエンディングのノベルゲーであり、当時のゲームらしいゲームといえ、十分な存在感を有していた作品でした。

その2作目から更に3年後、初のWIN用オリジナルとして、禁血の3作目が発売されることになり、それがこの『散櫻(ちるはな) ~禁断の血族~』でした。

本作は、大正時代を舞台にしています。
独特の雰囲気は出ていたとは思うので、雰囲気に浸ることができれば、それなりに楽しめるでしょう。
大正を舞台にした雰囲気作りという点では、私は普通に楽しめましたが、これだけで満足しうるほどではないのかなと。

でもね、もともと『禁断の血族』といえば、その過激なエロがうりだったわけでして。
館ものとして、館における淫靡な雰囲気を醸し出しつつ、過激なエロを堪能させてくれたのが、禁血なわけです。
だから本作でも、雰囲気作りという導入は上手くいっているわけですから、そこに過激なエロがあれば、シリーズファンも満足できたのでしょう。
しかし、残念ながら本作では、その肝心のエロが薄くなっています。
したがって、シリーズのファンであればあるほど、本作にはガッカリしてしまうのかなと。

ちなみに、本作にも、シーズウェアお得意のザッピング要素があります。
あまり視点変更をする必要もないので、ザッピングというよりマルチサイト程度の感覚で良いかもですけど。

<評価>

音声がまだ標準的でない時代に音声付きだったり、グラフィックも優れていたりと、この時代のシーズウェア作品は、優れている部分は優れているのです。
そのため、それなりに満足はできる作品ではあると思います。

ただ、マルチサイトの導入など、広い意味ではシーズウェアっぽさはあるものの、シリーズの肝であったはずの、エロの過激さやメイドの重要性が損なわれており、禁断の血族というシリーズである必要はあったのかなと。
シリーズのファンであるほどガッカリするような内容には、少し疑問を抱いた作品でした。

思うに、シーズウェアは、ざっくり言えば禁血系と、剣乃作品系の2つが看板といえるのでしょう。
そして本作は、作品の構造から判断すると、その2つの流れを1つにした、いわばブランドの集大成的な位置付けだったのでしょうね。
その集大成を実績のないライターに任せるのもどうかと思いますが、それは一旦置いておくとしても、シーズは98年にいろいろ信頼を失っており、信頼の回復が求められていたところでした。
また、ファンの中にも、まだ禁血が残っているという想いがあると同時に、逆に禁血がこけたらヤバイという意識はあったことでしょう。
そういう意味では、本作はターニングポイントだったのでしょうね。
本作は、決して悪い作品ではありません。
一つの作品としては、普通には楽しめる作品です。
しかし、禁血を名乗る以上、普通に楽しめるでは駄目だったのです。
失われた信頼を回復するにはこの作品しかなかったのであり、それができなかったのが痛恨でしたね。

ランク:C-(佳作)



DL版

Last Updated on 2025-01-16 by katan

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