カサブランカの蕾

2017

『カサブランカの蕾』は、2017年にWIN用として、DOLCEから発売されました。

久しぶりにダーク系の楽しめる作品でしたね。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・ドクドクドク……ッ。
真っ赤に燃えたぎる欲望が全身を駆け巡った。
ドクドクドク……ッ。真っ黒で、薄汚い情熱が迸る。
真っ白で穢を知らないその花を。
真っ白でカレンで、触れる事さえ許されない君を。
染めたい、染めたい、染めたい。
僕の色に、僕のモノに、僕の愛に。
主人公の成瀬イツキはまだ知らなかった。
それが、平穏で穏やかな日常の自分の中に潜む……。
本当の姿だった事を。
椎名ユリと恋人として過ごす日常。
その影でとある事をきっかけに平山ミクと四條カナと関係を持つ事となってしまう。
背徳的で、破滅的で、異様な関係。
カサブランカの蕾はまだ開かない。

<感想>

本作は、簡単に言ってしまうと、エロ要素の多いストーリー重視の恋愛ものとなります。

後述するように鬱な内容を含むことから、よくあるテンプレな恋愛ハーレムものとは異なります。
他方で、わりとストーリー性も高いうえに、上記の様な内容なわけですから、単にエロだけを求めてプレイすると、気分が滅入ってしまうおそれがあります。

つまり本作は、ここ最近のよくあるタイプのエロゲとは異なるわけで、ある意味、現在のエロゲ需要に沿っていないとも言えることから、合わない人もそれなりにいることが、当然予想されます。
しかしながら、逆に今のエロゲに不満のあるような人には、大きな満足を与えてくれる作品ともなりえるわけで、何を求めるかで意見が分かれうる類の作品と言えるのでしょう。

さて、本作に登場するヒロインは、3人になります。
本作では、この3人のヒロインとのドロドロとした四角関係が描かれます。
ヒロインとのかかわりにより、次第に変態性が増して変えられていく主人公。
その一方で、その主人公とかかわることにより、少しずつ黒く染まっていくヒロインたち。
その変わりゆく姿が、とても印象的な作品でした。

個人的に一番好きなヒロインはカナだったのですが、この子は、ある意味一番普通なのだけれど、その分、ストーリーも一番普通で、少しもの足りなかったですかね。

したがって、ストーリー的に特徴のあるのは、残りの二人の方になるわけでして。
二人のうちの一人は、いわゆる悪女ですね。
人のものに執着し暗躍する、発端となった少女。
この子のルートは、ENDでの主人公が可哀相でもあるので、ハッピーエンドでなきゃ駄目な人には合わないでしょうが、まぁこういうルートがあること自体は、一つの作品としては十分にありだと思います。

そして、もっと問題なのが、もう一人の少女でして。
純粋だったはずが、次第に主人公により狂わされていき、そうして大きくなっていった黒い蕾が、やがて開花すると。
ラストは、かなり胸糞悪いENDなので、そういうのに耐性がない人だと、結構くるものがあると思います。

全体的に、背徳感とかも中盤までは良かったけれど、それはメインではなくて、むしろそれ以上に、ヒロインらが黒く染まっていく過程が、この作品の一番の特徴なのだといえるでしょう。

あと気になる点があるとすれば、ENDですかね。
本作の場合、主人公はあまり何もしていないので、どっちかというと、主人公のストーリーというのではなく、ヒロインのストーリーを、主人公を通して見るって感じなんですね。
そして個人的には、胸糞悪いのは確かなんだけれど、その胸糞悪さにストーリー上の説得力があれば、それはそれで、そういう方向性もありだと思いますし、納得できたはずなのですよ。
だからメインヒロインの終わり方も、その終わり方自体はありだと思うのですが、そこに至るつなぎ方が、やや唐突だったのかなと。
本作はミドルプライスの作品ですが、フルプライスにしても良いから、ENDに向けてもうワンクッション加えて、丁寧につないでいれば、名作足りえる作品になったように思います。
そういう意味では、非常に惜しい作品でした。

他の点としては、ここの作品は絵や音は良いけれど、ストーリーが物足りないって作品が多かったんですよね。
しかし今回は逆で、ストーリーは良かったけれど、その他が平凡な印象であり、ストーリー以外の加点がないのが少々残念でした。

<評価>

総合では、良作と言えるでしょう。
ラストをもう少し厚く書いていればと思うと、ちょっと勿体なかったですけどね。

はじめに書いたこととも重なるのですが、市場のニーズにはあってないかもしれないけれど、それでもよくこの作品を出したということを、まずは喜びたいと思います。

本作は、90年代後半までは結構あった、いわゆるダーク系作品になるのでしょう。
ダーク系は、一時は人気だったんですけれどね。
ゼロ年代前半には、もうその言葉を聞くことがなくなったわけで、言い換えれば、該当する作品が、エロゲにはなくなったということなんですよね。
古くからのユーザーにはダーク系が好きだった人もいるでしょうし、久しぶりのダーク系の良作ですから、そういう人には、ぜひおすすめしたいと思います。
他方で、ダーク系って何だよと思うような若いユーザーの場合、当該ジャンルに馴染みがないということですから、本作も新鮮な気持ちでプレイできるでしょう。
したがって、鬱になりそうなストーリーも大丈夫であるというのであれば、そういう人にもプレイしてみてもらいたいです。

思うに、エロゲ史における2017年というのは、復興の年と言えるのかもしれません。
それがルネサンスと呼べるほどの規模に至るのか、それとも過去の模倣レベルで終わってしまうのか、その辺は今現在では断言することはできず、もうしばらく経ってみないと分からないことではあるのですが。
本作についても、名作と呼ぶには、もう一押し足りない部分があったので、それで良作とはしていますが、この手のジャンルが復興することは非常に喜ばしいですし、このライターの作品には今後も期待したいものですね。

ランク:B(良作)


Last Updated on 2024-08-15 by katan

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