バーニングポイント

1989

『バーニングポイント』は1989年にPC88用として、ENIXから発売されました。

2つの流れの合流点であると同時に新境地をも開拓。
80年代のENIXのADVの到達点とも言える作品でした。

<総論>

80年代はADVの時代であり、その中でも群を抜いていたのがENIXでした。
80年代のADVは、まさにENIXの時代と言って良いでしょう。

ENIXというと、今ではドラクエのイメージばかりが先行しますけどね。
きつい言い方をすれば、単なる模倣でしかないドラクエよりも、ジャンルの先端を切り開いていった各種ADVの方がよっぽど価値があると思います。

さて、数々の名作を生み出してきたENIXのADV。
この頃のENIXは外部から作品ごとにメンバーを集めてきたので、作品によって毛色も異なってきます。

初期には、堀井雄二さんによるミステリーADVの3部作がありました。
この頃は、ストーリージャンルとしてはミステリー系が多かったですが、一番の特徴としてはゲーム性も重視していたことが挙げられます。

それが、『ジーザス』以降になると様変わりします。
『ジーザス』や『アンジェラス』の頃になると、物語・演出重視になっていくのです。
またストーリージャンルもSF系が中心になっていきます。

そして、そんな80年代も末期の89年。
その年に発売された『バーニングポイント』は、ENIXの持つ演出面での技術力が活かされた推理ADVであり、初期のゲーム性重視の推理物と後期の演出重視の作品の、2つの流れがあわさったかのような作品でした。

仮面ライダーで言えば、技の1号と力の2号をあわせたV3みたいな感じでしょうか。
(ちと、古すぎますかねw)

翌年の『MISTY BLUE』がやや変則的なことからすると、『バーニングポイント』こそが、ENIXが放つ正統派推理ADVの集大成と呼べる作品だったのかもしれません。

<ゲームデザイン>

ということで具体的に内容を見ていきますと、ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになるのでしょうが、一般的なコマンド選択式と比べると、若干変則気味です。
というのも、典型的なコマンド選択式ADVにみられるような「みる」「きく」といった汎用コマンドはないのです。

ノベルゲーの選択肢みたいなコマンドより長い文章が表示され、それを選んでいくんですね。
だから画面だけ見ると、今のノベルゲーとの違いが分かりません。
だから画面表示から判断する人だと本作もノベルゲーに感じるでしょうが、私はゲームシステムの構造から判断すべきと考えます。
そして、本作のゲームの構造からすると、ノベルでなくコマンド選択式になるということなのです。

汎用コマンドでなくその場に応じたコマンドが表示されますので、普通の汎用コマンドによる選択式より自然なやり取りが楽しめます。
本作のような汎用コマンドを廃したコマンド選択式ADVは、90年代のPCゲーには数が増えていく構造でもあり、本作はその先駆け的存在でもあったのでしょう。

また、『バーニングポイント』の特徴として挙げられるのが、絵や音も攻略に大事な点でしょうか。
本作にはサウンドモードもありましたが、全体としてサウンドにこだわったという印象の強い作品でもありました。

さらに、電話やPCを頻繁に駆使する点も案外珍しいかもしれません。
これが作られたのが「80年代」ってことを忘れないで欲しいのですが、PCだの電話といった機器が、今ほど発達してないのは当然ですよね。
そういうこともあってか、当時のゲーム内の探偵も、とにかく足を使うことが多かったです。
自ら移動して調べるのが基本だったのですよ。
ADV以外の、例えばRPGなんかでも、あっちに行き、こっちに行きって感じで、お使いゲーと呼ばれる物は多いですしね。
そうした状況をふまえると、本作は小道具が実に効果的に使われているなって感じるのです。
がむしゃらに足で稼ぐのではなく、無理なく無駄なく、スマートなんですよね。
地味で見落としがちな部分ではありますが、ここは非常に好印象ですし、他のADVと明確に方向性が異なっていたことからインパクトも強かったです。

<感想>

ストーリーは、失踪事件の謎を解くというもので、十分に面白いものの、それ自体はそれほど特殊でもないかもしれません。
当時のSF系ADVのような壮大なものを好む人には、少し小粒に感じてしまうかもしれませんし。

もっとも、舞台設定は珍しい作品でしたね。
アメリカ西海岸を舞台とし、とても爽やかな雰囲気でした。
こういう雰囲気のゲームは当時はもちろんのこと、今日でもほとんどないように思います。
そのため、今でも結構新鮮な感じで楽しめるかもしれませんね。
少なくとも雰囲気ゲーとしては最高かつオンリーワンであり、その雰囲気のおかげで終始楽しむことができました。

しかも本作は章仕立てになっており、メリハリがあって飽きずに遊べました。

本作には、今では決して珍しくない手法だけど、当時は非常に珍しいというものが幾つかあり、その随所で見られるちょっとした工夫が、ゲームの面白さを何倍にも感じさせてくれたのです。

<グラフィック>

アメリカ西海岸を舞台にした作品で、それをENIXが作っているわけですから、グラフィックもとても色鮮やかで十分に堪能できます。
OPからして恰好良いですからね。
音もとてもマッチしてましたし。
まぁ、この辺は当時のENIXのADVの最も強いところでもありますけどね。



また、キャラ同士の会話も、単にセリフが下の画面に表示されるのではなく、全てふきだしの形をとり、セリフの表示場所も変わります。
ここら辺の配慮は、最近の普通のノベルゲーより上かもしれません。
少なくとも、今になって下3行のテキスト欄なんてやっているところは、少し見習ってもらいたいものです。

<感想>

かように、ゲームを全体的に見ても、統一感を保ちながらとても丁寧に作られた作品だなって思います。
随所に一般的なADVと異なる工夫の跡が見受けられますし、要所要所でプレイヤーが物語に入り込めるように配慮されてますしね。
総じてどの要素も素晴らしい作品であり、文句なしに名作といえるでしょう。

ランク:AAA-(傑作)

Last Updated on 2025-05-14 by katan

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