『ブルーシカゴブルース』は1995年にWIN用として、リバーヒルソフトから発売されました。
J.B.ハロルドシリーズの6年ぶりの新作であり、本作では全編実写ムービーとなりました。
<感想>
80年代の推理ADVを代表するシリーズだった、J.B.ハロルドシリーズ。
久しぶりの作品ということで、内容も大きく様変わりしています。
まず1つ目は、グラフィックが全編実写ムービーになっていること。
2つ目は、システムの変更です。
従来の作品はストーリーは抜群だったのですが、システムに関してはコマンド選択式の悪い面ばかりが出ていました。
いわゆる総当りを強制されるってやつですね。
そこで本作では、コマンド選択式自体は同じであるものの、行動による時間経過の要素を取り入れることで、ゲーム性でも改善を試みたわけです。
ただ、今作は従来の熱狂的なファンからは評判が良くなかったですね。
続編作品の宿命でもあるのですが、どれだけ出来が良くても、前作から方向性が変われば叩かれます。
このシリーズの最大の魅力は、多数の人物の人間関係が緻密かつ複雑に、少しずつ積み重ねられていく点にありました。
この複雑な人間関係の積み重ねで作品の重みをだすためには、ストーリーにある程度のボリュームが必要となります。
しかし本作は、実写ムービーを使用していることもあり、グラフィック重視の方向に路線が変更されて、ボリュームが従来の作品よりかなり減ったのです。
そのため、ボリュームが少ないが故に、表面だけの薄っぺらい印象が強くなってしまったのでしょう。
これまでの最大の魅力が削がれたわけですからね、それではファンは納得しないでしょう。
システムに関しても、例え普通の人が苦痛に感じるものであっても、ファンになった人というのはあまり苦痛に感じず、他の人より気にならなかった人なわけです。
そのあまり気にならなかった部分を少し改善したと言っても、ファンの心を掴むには至らないでしょう。
これでは、ファンが納得しないのも無理はないですね。
では、ファンでない人ならばどうなのか?
私は、本作は基本的には良く出来ていると思います。
実写系ADVとしてはムービーの出来も良いし、システムも普通の選択式よりは凝っていますしね。
十分に良作だとは思うのです。
ただ、これが名作かとなると、若干疑問が残ります。
94年までであれば、実写だけのゲームもインパクトがありましたが、95年ではそれだけで長所足りえるほど珍しいわけでもありません。
サターンの『RAMPO』のように、プラスアルファがなければ長所とまでは言えないでしょう。
システムとストーリーの関連性に関しても、従来のストーリーの構造に無理やり制限を加えた感じで、いまいちマッチしていませんでした。
ストーリーも実写系の中では優秀な方だとは思いますが、他のストーリーで魅せるADVほどではなかったですしね。
<評価>
総合的に見ると、国産実写系ADVの中では比較的良く出来ているけれど、それでも良作止まりって感じでしたね。
「J.B.ハロルド」という看板を使いたくなる気持ちも分かりますが、こういう路線でゲームを作るのであれば、おもいきって完全オリジナル作品で作った方が、制約もなくもっと良い物が作れたのではないでしょうか。
その点が、少し勿体無いなと思った作品でした。
そういえば、本作のオリジナルであるPC版はCD5枚組だったはず。
次世代機ブームにあやかって各機種にも移植されていますが、家庭用ゲーム機のは2枚組なんですよね。
この枚数の差は気になります。
例えば『ファンタズム』なんかでは、オリジナルのPC版は7枚組なのですが、サターン版は8枚組になり、1枚増えています。
『ファンタズム』のサターン版では、PC版より一部のイベントがカットされていること、PC版はインストールもできるから、重複部分を減らす事ができること等から、それでPC版では枚数が少なくて済んだのでしょう。
この理屈は分かりますね。
逆に枚数が減ったケースとしては、『新世紀エヴァンゲリオン 鋼鉄のガールフレンド』があります。
オリジナルのPC版はCD4枚組だったのですが、ゲーム機への移植版は半分の2枚に減っています。
確かこの時は、画質とかが悪くなって、それで半分になったんでしたっけか。
本作も5枚から2枚へと大幅に減っていますが、その理由が画質を落としたのか、それともイベントを削ったのか、比べたことがないので詳しい理由は分かりませんが、3枚分減ったというのは、ちょっと気になりますね。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2024-10-23 by katan
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