『あやかしごはん』は2014年にWIN用として、honeybeeから発売されました。
新しい属性に目覚めたw
ノベルゲーのストーリーの在り方という点でも良かったですね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
商品紹介・・・あやかしと人間との、甘く切ない不思議な恋物語と、あたたかくておいしいご飯をテーマに展開される本作『あやかしごはん』。
主人公の少女時代編から始まり、そこでの行動で成長後の主人公の性格が変化!
主人公が暗い性格になった場合は「人間編」へ、主人公が明るい性格になった場合は「あやかし編」へ進みます。
又、各ルート3人の攻略対象キャラクターがそれぞれ登場。
キャラクターは進んだルートによって異なります。
――小さな村・紅葉村(もみじむら)。
昔からあやかし達が人間に化けて生活しているこの小さな村で、甘く切ない不思議な恋物語が始まります。
<感想>
本作は女性向けの、いわゆる乙女ゲームになります。
もし男の子供になってしまったら、一体何をするか。
お姉さんに抱きついてみたり、覗いたり、悪戯したり、いろんなことを試せるでしょう。
でも、大抵のことは子供にならなくても、別の代替手段があるものです。
しかし「ボク、ダメよ~」とお姉さんに優しく窘められることは、透明人間などの他の手段ではだめであり、小さい子供だけの特権なのでしょう。
オッサンになって痴漢なぞしたら、塵を見るような目で睨まれるだけですし。
まぁ、そんなことを別の漫画か何かで見かけて、うんうん、そうだよな~と共感したりもしたのですが、本作は、それの女の子版って感じですかね。
というのも、本作は主人公の少女時代編から始まるところ、これは少女というより、むしろ幼女ですね。
そんな幼女、しかも朴訥な感じのお子様なのですが、ボソっボソっとつぶやきつつ、ツンツンした態度を採って、美形のお兄様を困らせることの快感!!
やだ、何これ、超楽しい~w
以前別のゲームで幼女になって構ってもらう楽しさを学びましたが、幼女となって美形の男をわざと困らせることが、こんなに楽しいとは、ここに来て新しい属性に目覚めてしまいましたよ。
いや~こういう経験は最近はすっかり減ってしまっただけに、実に新鮮でした。
男性向け作品では自分が幼女に手を出すことはあっても、自分が幼女になるってことはないですからね。
もちろん実社会では、どれだけ望んでも幼女にはなれません。
現実では得難い経験をできただけでも、ゲームをやった甲斐があるというものですよ。
と言うわけで、冒頭だけで名作認定してしまいそうなノリでしたが、そんな変態プレイに興奮するのは私くらいなもので、基本的には人間と「あやかし」が共存する村を舞台にした、癒し系の作品になります。
非常に雰囲気の良い作品なので、ストーリー自体も好きな人はいるでしょうし、だから評判も良いのでしょうが、個人的にはストーリーそのものに関しては普通に楽しめたって感じですかね。
雰囲気は良くてテキストも楽しいし、キャラも皆良いのだけれど、それだけで名作と言いたくなる程に優れているってわけでもないですから。
だからもし、本作が普通のノベルの構造であるならば、精々良作止まりだったと思います。
本作は少女時代編から始まるのですが、そこでの態度、具体的には最後できちんと謝れたか否かで、その後の成長に変化が生じます。
きちんと謝れた場合には「あやかし編」のルートへ進み、「あやかし編」での主人公は明朗快活な女の子になっています。
それでいて空気を読んで周りにも配慮できるという、ある意味理想的な女の子へと成長していまして。
こういうタイプが主人公だと読んでいても気持ち良く、それだけで楽しめてしまいます。
他方で、きちんと謝れなかった場合には、それを引きずって成長し、内気で控えめな女の子になります。
こちらのルートが「人間編」になりますね。
最初は、その両ルートにおける主人公の差に驚いてしまうのだけれど、開始時から理想的な女の子である「あやかし編」に対し、「人間編」での主人公・凛もまた、物語内で成長することで最後には大差がないように感じるわけでして。
だから、あぁ~どっちも凛なんだなと。
単にキッカケを活かすタイミングにより、成長の速度に違いがあるだけなんだと納得できるわけです。
核となる部分は同じでも、成長の仕方での違いを感じられることは、そしてその対比を通じてキャラの深みを感じられることは、単なる小説ではない、ノベルゲーとしての利点を活かしているということなのでしょう。
本作は乙女ゲーに多い、攻略対象の悩みを解決するというのが基本なのだけれど、上述のように人間編だと特に、主人公の成長物語でもあります。
こういう成長物語の場合、男性向け作品だと必要以上に主人公がヘタレで、それでイライラしたりもするのですが、本作は必要以上にヘタレってわけではないですし、プレイヤーの選択結果の延長として描かれているので、不自然さも感じることなく状況を納得できるのでしょう。
ストーリーだけを考えたら、少女時代編がなくても成立しそうだし、他のノベルゲーだったらJKの状態から始めちゃうでしょう。
それで、もしストーリー上の必要に迫られたら、そこで過去だけ回想という感じで振り返る方法もあるわけですから。
現に、そんなノベルゲーなら一杯ありますしね。
それをせずに、きちんと少女時代編から作ってプレイヤーにやらせたのは、とても良かったと思います。
<評価>
一本一本のストーリーだけだと良作止まりと感じそうなところを、ノベルゲーの構造をきちんと活かして、全体を通じて凛という主人公の本質を表現した点は非常に良かったです。
それに新しい属性にも目覚めることができましたし、総合でも名作と言えるのでしょう。
ただ、傑作に及ばなかった理由の一つにグラフィックがありまして。
いや、用意されている絵に関しては文句なしなのですけどね。
そもそも本作は、タイトルにあるように、食事シーンが多いです。
その点に期待した人もいると思いますしね。
実際、料理に関するテキストの描写は良く、食べたくなってしまいます。
もちろん、料理のグラフィックも幾つか登場するのだけれど、ない場面も多いのですよ。
例えばバトルもので、バトルのテキスト描写は最高、バトルシーンのグラフィックも最高だとしても、10回ある戦闘の中で5回しか絵がなかったら、バトル中心の作品としては、どうしても物足りなく感じてしまいます。
本作はせっかく料理を主に据えてきているのだから、料理や食べているシーンだけでも全シーンで専用の絵が欲しかったよなと。
些細なことかもしれないけれど、そのちょっとしたことで、私の場合は点が跳ね上がることもありえますからね。
そこだけは勿体なかったです。
というわけで、普通なら雰囲気を楽しんでくださいと言うべきなのだろうけれど、それは他の人が皆言っていると思いますしね。
ここはあえて、幼女になって美青年を困らせる得難い経験をしてみたい人、あるいは単に物語の字面だけを追うのではなく、ノベルゲーとしてのストーリーの在り方にこだわる人なんかに、本作をオススメしたいと思います。
ランク:A-(名作)
Last Updated on 2024-10-21 by katan
コメント
katanさん、こんばんは。
この『あやかしごはん』の記事を読んで、購入するか迷っていた作品でしたが、なかなか得難い体験を得られそうで購入するに至りました。
記事で書かれている、別のゲームで幼女になって構ってもらう作品というのは『クレプシドラ』のことでしょうか?
クレプシドラの記事を読ませてもらった時も、記事内の画像を見て面白そうな作品だなと印象に残っていたので、ひょっとしたらこの作品と比較されているのかなと思ったもので。
クレプシドラもとても気になっているのですが、話の短さや攻略の難しさが指摘されているので、購入には踏み切れていません。
あやかしごはんとはまた違った魅力を持つ作品だとは思いますが、両者を比較した上でクレプシドラは今でもプレイしてみる価値はありますでしょうか。
>メガドラさん
別の作品は『クレプシドラ』であっています。
ただ、比較対象になる作品だとは思わないです。
たとえば、ペットの魅力に気が付いたと言った人がいたとして、犬の魅力と猫の魅力では全然異なるでしょう。
『クレプシドラ』と『あやかしごはん』は幼女が出てくる点で共通はしますし、それは上記のペットの魅力に気が付くレベルでは共通しているのですが、方向性として『クレプシドラ』が子犬の魅力だとしたら、『あやかしごはん』は子猫の魅力であり、中身は全然異なるように思います。
また、ストーリーについても、方向性が全然異なります。
野球にたとえるなら、『あやかしごはん』はやや癖のあるストレートで、『クレプシドラ』はビーンボールに近い変化球みたいな。
そのため、『クレプシドラ』の個性が薄れるとか、そういうことは全然ないと思います。
ただ、『あやかしごはん』は2014年の作品であり、『クレプシドラ』は2008年の作品なので、今プレイしたらという観点で考えたら、2008年の作品の方が古い感じる人が多いのかもしれませんけれど。