アルテミスブルー

2011

『アルテミスブルー』は2011年にWIN用として、あっぷりけ -妹-から発売されました。

シナリオ重視路線では比較的珍しい女性主人公ものですね。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・
『田島ハル』はもうすぐ20歳の19歳。
明るく真面目で礼儀正しい努力家で、
物心ついた頃から『空』と『パイロット』に憧れてきた飛行艇大好き少女。
ハルは持ち前のガッツを発揮し、高校卒業後単身渡米、『サンディエゴ』の航空学校に2年間留学、見事『飛行艇のライセンス』を取得した。
晴れて帰国後、ハルは『副操縦士』として就職するため、『江戸湾ズ』にある航空会社、『久保航空運輸』に面接にやってくる。
そこには、かつて『高々度限界突破挑戦機開発計画・イカロス』で、『アルテミスの処女膜』を破りかけた伝説のテストパイロット、『桂桂馬』がいた。
『ライトスタッフ』な大人たちに囲まれて、新米パイロット、ハルの成長物語が始まる!

<感想>

女性主人公のゲームは、人によっては抵抗があるらしいですが、個人的には女性主人公ものは結構好きだったりします。
女性視点だと普段と違った感覚で楽しめるというのもありますし、海外のADVなんかだと女性主人公のADVは大当りが非常に多いです。
たぶん、あっちだと女性主人公ってだけで期待が大きくなる人も、結構いるのではないでしょうか。
それぐらいあっちでは確固たる地位を築いているわけで、そういうのもあって個人的にはプラスの先入観が働くのです。

さて、本作の主人公もまた女性です。
舞台は近未来で、空に想いを馳せる者たちの、熱い人間ドラマが展開されることになります。

基本的にはキャラの持つ魅力と、勢いで引っ張っていくタイプの作品と言えるでしょうね。
王道と言えば王道なのかもしれませんが、めげずに元気に頑張り困難を克服していく主人公の姿には、非常に好感が持てます。
熱い路線のゲームは、えてして厨二っぽい論理が展開され、それで嫌気がさすこともあります。
しかし本作にはそれもないわけで、その点も好印象でした。
鼻につく部分もなく、内容自体は誰がプレイしても一定以上の満足を得られると思います。

ただ、それを踏まえたうえでの話になりますが、プレイしていて若干気になることもありました。
1つ目は、強制オートが多いことです。
EDだけとかならまだしも、こう何度も使われては読まされてる感が強まり、快適性も大いに損なわれてしまいます。

もっとも、私はムービーゲームは好きな方ですから、たとえ見るだけでも「見ること」を楽しめれば不満はありません。
しかし本作は、画面の動きも乏しいわけでして。
動かない画面で延々と語られてしまっては、もはやCDドラマを聴かされているのと変わりがありません。
この点は大いに不満でしたね。

2つ目は上の点とも重なりますが、演出面が弱いことです。
全般的に動きが乏しいので、画面を見ていて少し寂しく感じてしまいます。
もちろんそういうのがなくても楽しめる作品も一杯ありますが、本作のような動きのあるストーリーでは、やっぱり見た目でも動いて欲しいと思ってしまうのです。
減点にはならないかもしれませんが、グラフィック部分では点数はつけられません。

3つ目は1本道ってことです。
本作はノベル系のADVなのですが、実質的には1本道です。
1本道自体は普段は気になりませんし、かえってプラスに作用する場合も多いです。
しかし、動かないオートモードの強制と合わさることで、これをゲームでやる必要があるのだろうかと思ってしまいます。
手段の選択の面でどうしても疑問を抱いてしまうわけですね。

4つ目はキャラ及びテキスト面についてです。
キャラ及びテキストは、生き生きとしていて基本的には良好です。
しかし、ところどころで既存のアニメや漫画の影響があらわれ、これを素直に評価して良いのか疑問に思ってしまうのです。
パロディー系に頼らなくてもそこそこやれるライターだと思うのですが、毎回そういう傾向があるわけで、どうしても底が浅く見えてしまうわけですね。
キャラについても主人公には本番はなく、妄想Hばかりです。
ここは、人によっては地雷になりかねません。
アダルトゲームとして出す以上、もっと普通に構成できなかったのか、どうしてもその辺はひっかかってしまいます。

5つ目はストーリーそのものですね。
6章までは同じ感覚で楽しめたのですが、最後の2章で流れがガラリと変わります。
最後にいたっては主人公のハルは蚊帳の外です。
確かに、個々の人物の物語を取り出してみた場合、特別変とまでは言えないかもしれません。
しかし、散々ハルを主人公としてその成長物語っぽくしておいて、何で最後でぶち壊してしまうのでしょう。
どうしても置いていかれたような感じがして、しっくりこないわけです。
仮に本作を初めから群像劇として構成していれば、少なくともこの問題は生じなかったでしょう。
そう考えると、最初の構成の時点で失敗しているように思うのです。

<評価>

1つ1つは大きな減点にはならない微々たるものかもしれませんが、塵も積もればってやつですね。
こうもいろいろ出てくるとどうしても気になってしまいます。
ハルらの魅力だけなら良作以上もありえたのですが、上記の部分の積み重ねもあって、総合では佳作と判断しておきます。

まぁ率直な意見としては、CDドラマを聞きたいわけじゃないよってのが一番強いですかね。
思うに、こういうのこそアニメで見てみたい気もします。
勘繰りたくなるような余計なパロディ要素を削りつつ、群像劇としてストーリーを再構成しなおし、熱い場面をハイクオリティの動画で表現できるところが手がけてくれれば、間違いなく化けるでしょう。
そうなれば、もっと素直に楽しめたように思いますね。

ランク:C-(佳作)

アルテミスブルー

Last Updated on 2024-12-12 by katan

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