anemoi

その他ゲーム

『anemoi』は2026年にWIN用として、Keyから発売されました。

鍵のフルプライス作品となると、約8年ぶりになるのでしょうか。
新作の記事は基本的に書かないつもりだったので、簡易感想とします。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・
10年前に埋めたタイムカプセルを開ける日が近づいていた。
主人公の速川麦は、妹の六花とともにふたりで北の地、真澄町へ訪れる。
都会の喧噪を忘れさせてくれる町は、強く吹く風の中でゆっくりとした時間が流れていた。
大きな風車の恩恵を受けながら、経験と知恵と人のつながりで築かれる生活。
約束の時間まで、麦は人々と交流を重ねながら町でスローライフを送ることにする。
寄り添うように吹き続ける風に、どうしてか懐かしさを感じながら。

<感想>

事実に対する評価は人によって異なりえますが、その土台となる事実認識については、多くの人が似たような印象を抱いたのではないでしょうか。
一言で言えば、「Keyらしい作品」という印象です。

批判的に見れば、随所に過去作を連想させる既視感があり、セルフオマージュの域を出ない新鮮味の乏しい作品と映ります。
一方、好意的に見れば、従来のKeyらしさを守りながら、過去作で積み残した問いへの回答を示すことで独自性を打ち出し、新時代のKey作品の姿を提示したとも言えます。

後者の見方ができれば良かったのですが、残念ながら私は前者に近い立場なのでしょう。
ゲームはストーリーだけで評価が決まるものではありません。
本作は一枚絵のクオリティこそ高いものの、それ以外の要素があまりにも変わらなさすぎた点が致命的でした。

まず、ノベルゲームとしての基本構造が、20年以上前のそれと何ら変わりません。
キャラクターの動きも、一昔前の水準に留まっています。
鍵作品がキャラゲーではないのは確かですが、恋愛ゲームというキャラクターの比重が高いフォーマットを基盤としたうえで、ストーリー性を強調するという構造をとっています。
その意味で、PC98時代に見られた純粋なストーリー重視作品とも異なります。

これを、お笑いに例えて整理してみましょう。
純粋なストーリー重視作品をコントとするなら、キャラゲー構造の上にストーリー重視の要素を盛り込んだ鍵作品は、コント漫才のようなものです。
純粋なコントであれば漫才の要素は不要ですが、漫才の土台を借りたコント漫才である以上、漫才としての出来も評価の対象になります。

本作の前半がキャラゲー的構造をとる以上、その部分をおざなりにしてはなりません。
キャラクターの魅力を引き出すために、現代のノベルゲームではキャラを自然に動かしたり、古典的な手法として目パチ・口パクを取り入れたりと、各社が様々な工夫を凝らしています。
そうした中で本作は、キャラに動きもなく目パチ・口パクもなく、他社の一線級と比べてどうしても見劣りがします。
だから、古臭く見えてしまうのです。
ストーリーに多少の既視感があっても、構造やビジュアル面を現代的に刷新していれば、「鍵作品を現代的に再解釈した」として新鮮さを感じられたでしょう。
それがないから、新鮮味を感じられないのです。

ストーリー面でも、ヒロインたちの個別エンドが似たような着地点に収束しがちで、その方向性も、各ヒロインの個別エンドを丁寧に描く現在の主流のキャラゲーとは異なります。
これが先述の点と重なり、ますます古いタイプの作品という印象を強めてしまいました。
プレイ自体は楽しめたものの、どうしてもその点が引っかかり続けました。

ルートごとの印象を付け加えると、従来のファンに刺さりやすく、懐かしさを感じさせてくれるのは小詠ルートだと思います。
プレイヤーによっては最大瞬間風速になりうるルートを最初にプレイするかは好みの問題ですが、過去作の空気感を味わいたいなら、まずこのルートを選ぶのが良いでしょう。

一方、陽彩ルートは全体的に長く、作品全体の中では変化球的な位置づけで、『Kanon』における舞ルートのような立ち位置になるのでしょう。
そのため、最初にプレイすると違和感を覚えて感情移入しにくいかもしれません。
ただ、進化や変化を感じにくい本作にあって、このルートのラストはゲームシステムと演出の組み合わせに数少ない工夫が光っており、個人的には好きなシーンでした。

キャラクターとしては、六花とスピカが特に印象に残りました。
一人は最も身近な妹ポジション、一人はメインヒロインという立ち位置ですので、この二人が刺さったことは、私が本作を楽しめた理由の中で、大きなウェイトを占めているように思います。
もし彼女たちに惹かれていなければ、本作への評価はもっと低くなっていたでしょう。

部分的に見れば、感動的な場面への持っていき方については、さすがKeyのフルプライス作品と感じさせるものがあります。
しかし一方で、スローライフを掲げながらこのテーマを選ぶことへの疑問や、主人公の行動・展開に腑に落ちない点も残ります。
そのため、整合性や一貫性を重視するプレイヤーには、満足度が低くなりやすい作品かもしれません。

<評価>

総合ではギリギリ良作とします。
なんだかんだで、楽しめましたし、最近は一枚絵が酷い作品も増えている中、久しぶりに一枚絵で満足できたようにも思いますしね。

ただ、私の場合、メイン級のヒロインが刺さったこともあってのこの評価といえます。
したがって、そうでない人が佳作程度だろと言えば、それはそれで納得できてしまうように思います。

最後に、ここまでKeyらしい作品という表現を用いてきましたが、それは内容面を表面的に語った場合の話でしかありません。
私は90年代からの、それこそTactics時代からのファンであり、その観点から言うならば、本作をKeyらしい作品とは思えないのです。
90年代からゼロ年代前半ころまでの鍵作品というのは、内容的にも構造的にも、他にはない挑戦的で新鮮な存在でした。
私の考えるKeyらしさというのは、そこにあります。
だからこそ、本作に対し、Keyらしい作品との印象を抱けないのです。

まぁ、そういうことを言い出す人はあまりいないかもしれませんが、本作については、古くからのファン程、あまり刺さらないのではないでしょうか。
そういう意味では、鍵作品に馴染みのない人向けの作品といえるかもしれませんね。

ランク:B-(良作)

Last Updated on 2026-05-31 by katan

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