琥珀色の遺言

1988

『琥珀色の遺言 ~西洋骨牌連続殺人事件~ 藤堂龍之介探偵日記』は、1988年にPC88用として、リバーヒルソフトから発売されました。

藤堂龍之介探偵日記として今では結構作品数が増えていますが、そのシリーズ第一作となった作品でした。

<概要>

ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。

あらすじ・・・
薬の貿易で一代の財を作り上げた薬成金、影谷恍太郎が自邸の中庭で謎の死を遂げ、その傍らには当時なじみがなかった西洋骨牌(タロットカード)が置かれていた。
公にはトリカブトの毒を煽り自殺として葬られた。
龍之介は真相究明を望む執事と旧知の友影谷芳明の頼みで、小説家として潜り込む。

<感想>

80年代を代表する推理ADVの1つであるJBハロルドシリーズ。
非常に面白いシリーズではありましたが、推理ゲームを好む人の全てが、ハードボイルド好きばかりとは限らないでしょう。
また、日本人としては日本を舞台とした作品の方が、何だかんだ言っても肌に合います。

本作の主人公は藤堂龍之介。
彼が活躍するシリーズは一九二〇シリーズと呼ばれるのですが、このシリーズの時代設定は大正時代です。
大正ロマン、聞いただけでもワクワクしてきますね。
しかも今回は、琥珀館と呼ばれる洋館が舞台です。
リバーヒルソフトがそんな設定で推理ADVを出すってだけでも、興奮が止まらないというものです。
実際、グラフィックが非常に凝っていたのと相まって、雰囲気は抜群でしたね。

『琥珀色の遺言』はコマンド選択式のADVです。
一見するとJBハロルドシリーズを日本に置き換えただけとも思えますが、明確に異なる点が存在します。

というのも、JBハロルドシリーズでは、いろんな場所に移動するのですが、一九二〇シリーズは特定の範囲だけが舞台となるのです。
今回なら琥珀館という屋敷だけが舞台になるということですね。

推理ADVと言っても、その方向性はたくさんあります。
リバーヒルソフトの魅力は、非常に多くの登場人物と、その人物らによる人間関係の複雑さにあると言えます。
本作も27人と非常に多いのですが、この多くの登場人物による複雑な人間関係は、限定された空間内における人物間にある方が、より濃厚な関係が感じ取られて効果的だと思います。
そう考えるとリバーヒルソフトの持つ魅力は、このシリーズの方がより鮮明に発揮できていたようにも思えるのです。
それ故にストーリーに関してだけ見れば、間違いなく傑作クラスの出来と言えるでしょう。

しかしながら、ゲームという体裁をとっている以上、ストーリーやグラフィックだけで判断できるものではありません。
前述のように本作はコマンド選択式のADVなのですが、情報を得るために何度も何度もコマンドを試す必要がありました。
1度試したものでも、別の場所で新情報が得られたら、また試しなおさなければなりませんでした。
コマンド選択式にも出来の良いやつ悪いやつと様々にありますが、出来の悪い物はよく総当りゲーと評されます。
全部試さなければならない、しかも何度も試さなければならないというのは、悪い例の最たるものでしょう。
残念ながら本作はこの傾向が強く、何度もコマンドを強いられたものです。

また、舞台が館の内部だけというのは、一方では物語の濃密さを強調する上で効果的に機能しますが、他方では同じ画面を何度も何度も見ることになるため、ゲームの面白さという観点からは、決してプラスにはなりえませんでした。
同じコマンドをくりかえすのであっても、舞台が変われば新鮮にも感じられるでしょうが、本作にはそれがなかったですからね。
余計にも辛く感じたものですよ。

<評価>

最近は、こういう作品はうけにくいだろうなとは思いつつも、当時としては、この時期にこのような内容の作品が出てきたというのは衝撃的であり、総合でも名作といえるでしょう。

もっとも、88年はADVのシステム的にもいろいろ出てきてますからね。
そういうことも考慮すると、JBハロルドシリーズより好みな設定ではあっても、それほど高く評価することも難しいんですよね。
名作ではあっても傑作足りえないのはそうした理由からです。
面白い作品ではあったものの、この設定でエニックス辺りが作れば凄い作品になっていただろうと思うと、少し勿体無さの残る作品でもありましたね。

ランク:A(名作)


Last Updated on 2025-10-13 by katan

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