『少女と世界とお菓子の剣 ~Route of ICHIGO 1~』は、2012年にWIN用として、私立さくらんぼ小学校から発売されました。
シリーズ第三弾にして、完結編の前編になります。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・ラジオから聞こえる不思議な『声』に導かれた少年ミノ
彼は幼くも美しい少女『苺』と出会うのだった
一方その頃学園では不可思議な事件が起き始めていた
苺はお菓子を剣に変え〈世界の夢〉を切り裂く
今、少年と剣の恋と戦いの物語が幕を開ける
◆マリーセレスト号の嘘
学園でも話題になっているという『予言ソフト』。
それはランダムに言葉をつなぎ合わせるジョークソフトのはずだった。
だがその予言が本当に当たり始めた。
飼育小屋のうさぎが殺害され、関係者の消滅がはじまる。
「誘導する虚言と補強する偽言。これは確実に誰かが仕組んでいる」
示された二つの嘘。世界の夢を見ているのは果たして…。
予言ソフトの謎を解き、真犯人を見つけ出すことができるか!
◆がっこうまいご
学園内で迷子になった少女を捜して欲しいという依頼者が訪れる。
捜査の中で学園の怪談『がっこうまいご』が浮かび上がった。
がっこうまいごは実在する!? ○子の霊が現れ、
次々と生徒を襲い消してゆく!
はたしてこの怪談の裏に秘められた物語は? まいごは何者なのか?
そのとき主人公ミノの頭脳に異変が訪れる。「そうか! 犯人は……!」
不気味な空が支配する異次元空間で、主人公ミノの推理がついに炸裂する!
◆カンバスのゆりかご
美術室で謎の物音が聞こえる。
調査に乗り出した占い部は一人の少女と出会う。
天才画家少女、埜仲西江。それはラジオが告げた人物。
埜仲西江の周辺を洗っていくと、一人の少女の名が浮かび上がった。
だが、彼女のクラスを訪ねていくと…。
「これは世界の夢! 誰かが彼女に逢わせないよう守ってる!?」
一方、アヤノは主人公ミノの能力『世界のラジオ』の弱点を見抜いた!
消滅したのは誰なのか、天才画家少女の身の上に起ったこととは!
◆花開くは黒き花弁
苛烈な性格ゆえ学園内で疎外されている苺。
そんな矢先、苺のクラスでは
事故で入院した女生徒のため千羽鶴を折ることが流行していた。
なんとかクラスに馴染んで欲しいと願う主人公ミノは
苺と共に千羽鶴制作に参加する。
少しずつだが馴染みはじめる苺。だが、春野苺は天才だった。
「ナナ君、言霊のリップである人物を縛って欲しい」
千羽鶴に隠されたさまざまな想い。無情なる天使が今、裁きを下す。
上記の4本のシナリオの他に、Hメインの番外編「クロスオーバー せかけん×椎子ラブ」と、シリーズ共通シナリオの「序」が含まれています。
<感想>
セカケンシリーズの3作目にして完結編の予定だったのですが、タイトルからも分かるように本作では終わらず、したがって、完結編の前編という位置付けになります。
ゲーム開始時に共通パートに相当する「序」があることから、前作までをプレイせずに本作だけをプレイしても話は通じます。
もっとも、幾つものシナリオが展開される中には、一見すると前作と似ているようでありながら、そこから少し捻られた展開が描かれているなど、比較すると更なる深みを感じられることもあります。
したがって、作品をより堪能したいのであれば、前作のプレイもした方が良いのでしょう。
今作は前編という扱いであるものの、一つ一つのシナリオは完結していますし、ボリュームも結構ある作品ですので、十分に満足できる内容になっています。
<ストーリー>
現在現役というか、ここ10年の間に作品を出したアダルトゲームのライターの中で、私が天才だなと思うライターは3人います。
いや、考えれば他にも出てくるのでしょうが、パッと即座に浮かんだのは3人なので、別格ではあるのでしょう。
一人はBLゲーを得意とし、一人は乙女ゲーを得意とし、そしてもう一人が、さく小の苦魔鬼轟丸さんになります。
つまり男性向けエロゲのライターとしては、現在、最も凄いと思っているライターということになりますね。
苦魔鬼轟丸さんの場合は、主に炉利ゲーを製作し、中には炉利とのHばかりの作品もあるのですけどね。
しかしながら、子供たちの視点に立って、子供たちの持つ闇を描いたジュブナイル路線こそが、苦魔鬼轟丸さんの真骨頂であり、それができるのは苦魔鬼轟丸さんだけなのでしょう。
その意味で別格なのです。
セカケンシリーズは、個々のシナリオはミステリーものであり、発生した事件の解決を目指すことになります。
そして事件の真相が解明される中で、いじめなど子供の持つ暗い部分が描かれることから、全体としては苦魔鬼轟丸さんらしい作品と言えるのでしょう。
ところで、このシリーズは1作目から十分に面白かったのですが、1作目と2作目をプレイした時には一つ疑問もありました。
それはミステリーの皮を被ったジュブナイル作品に対し、純粋にジュブナイル路線で描かれた過去作よりも、良いと言えるかということなのです。
例えとして伝わるか分かりませんが、『シティーハンター』の後継に『エンジェルハート』があります。
『エンジェルハート』も面白いけれど、次第に方向性が『シティーハンター』ではなく、同じ作者の『ファミリーコンポ』に近くなっていきます。
『ファミリーコンポ』路線こそが作者の真骨頂だと私は思うので、『シティーハンター』の後継としての良さが発揮された上で、そこに『ファミリーコンポ』の味が加わるのは良いのですけどね。
『シティーハンター』の後継という皮を被りつつ、専ら『ファミリーコンポ』路線になるのでは、確かに良い話ではあるけれど、はたして『エンジェルハート』内で描く必要があるのかと、ちょっと違うよなと感じてしまうのです。
本シリーズにおいても、各エピソードはミステリーものであり、そのミステリーとしての土台がしっかりした上で、さらにジュブナイルが混ざるというのであれば、
ミステリー+ジュブナイルという、ライターの新しい路線として成功なのでしょう。
しかし単にミステリーの皮を被ったジュブナイルならば、迂回された分だけ過去作よりぼやけて弱くなりますし、このシリーズ内でやる必要性が感じられず、結果として何か違って見えてしまうのです。
そして本シリーズの場合、過去作の、特に前作などは、重いジュブナイル要素が強くなっています。
だからジュブナイル要素を求める人には良いかもしれないけれど、それだけに、このシリーズでやる必要があるのかと疑問もありました。
それに対し、今作ではミステリーとしての要素が強くなり、ミステリーものとしての土台が以前より強くなりました。
そのため、ミステリー+ジュブナイルとして両輪が機能するようになり、相乗効果でこのシリーズの価値が飛躍的に高まったと言えるのでしょう。
なお、解決シーンでは作中の具体的場面を引用しながら行いますので、必要な情報は既に表示されていると言えます。
自分で考えながら読むと、そうそう、ここだよって思いながら読めますので、更に楽しめると思います。
また、事件の解決を目指すという点では1作目から同じなのですが、エピソードも増えていくと、それに伴い登場人物も増していきます。
本作の終盤のエピソードではキャラが勢揃いする場面もあり、そうなってくると見ていて圧巻ですね。
これはシリーズものが持ちえる強みであり、それが十分に活かせていたように思います。
それと、1作目の感想の時点では、JCなんてBBAだろ、炉利に強いライターなのだから、小学校を舞台にしろよとか思ったものでした。
しかし、今作辺りでは、もうそういう思いにはならなかったわけでして。
それは何でなんだろうと考えると、今作では純粋なJSが出てくることから、小学生より成長した分だけの、中学生としての物語というものを読み取れたからなんだと思います。
商業エロゲでは中学校を舞台にした作品は作れませんし、今となっては同人でしか描けない物語ということで、中学校舞台の作品もありだなと思いました。
<グラフィック>
さく小の作品を知っている人には今更な話になりますが、元は商業ブランドだった時代もありますし、商業時代よりも進化していますからね。
演出等に関しても同人の中だけではなく、並の商業ブランドよりずっと良いです。
同人でしか描けない物語があるとしても、同人は素人に毛が生えた程度で、シナリオ以外が弱いというケースが多々あります。
しかしそれは、さく小作品には当てはまらず、グラフィック、ボイス、演出、ボリュームなど、全ての面で高い水準を有していますので、同人ゲーを普段プレイしない人でも安心して楽しめるでしょう。
<評価>
上記のように、ノベルとしてはほぼ全ての面で高水準な作品です。
過去作で抱いていた疑問も解消されましたし、文句なしに名作でしょうね。
しかもライターに対しては最高レベルの印象を抱いているわけですし、普通なら作品も傑作扱いになりそうなものです。
ただ、本作は3作目であり、その分だけインパクトは落ちること、まだ未完であり完結編ではないことなどから、今作全体としては傑作に一歩届かずという評価になりました。
まぁ、傑作扱いは、最後の完結編まで取っておくという感じですね。
そのため、できるだけ早く完結編を作って欲しいですね。
ランク:A(名作)
Last Updated on 2024-12-02 by katan



コメント
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ミステリーとジュブナイル。これらのジャンルを扱った名作は最近のアダルトゲームではほとんど見かけないだけに、本作のようにどちらもしっかり描かれている作品は貴重ですね。
ミステリー部分に関しては前2作よりもずっと面白くなりましたし、自分で考えながら読んでると思わず「やられた~」となってしまうミステリーならではの醍醐味を味わうことが出来ました。
このシリーズが持つミステリー要素とジュブナイル要素が高いレベルで噛み合った文句なしの名作でした。
同人作品では、グラフィックや演出が貧弱な作品も多いのですが、このサークル作品は商業作品を上回るクオリティですね。
音声もフルボイスなので、商業エロゲを中心にプレイしているユーザーにもオススメできます。
今現在、特に完結を待望してるシリーズです。
P.S. katanさんが天才だと思うライターって草香祭さんと丸木文華さんですかね?この二人は文章上手いし絵も描けるしすげえなって思います。
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このシリーズは本当に良く出来ているし、
欠点もなく幅広い層が楽しめると思うし、
もう少し知名度があっても良さそうなんですけどね。
シナリオゲーだと売れ行きが悪いらしいし、
制作者の関心もノベル以外に向いていっているようですが、
このシリーズだけは何とか完結して欲しいですね。
> 草香祭さんと丸木文華さん
アタリです。
因みに、私が天才だなと思う基準があるとすれば、
何か新しい流れを導入したかという点にあります。
作品としての評価が高くても、
既存のジャンルを発展させたようなタイプのライターだと、
確かに凄いライターではあるのだけれど、
天才とは思えないみたいな。
それと、例えば嘘屋さんとかだと、一面では天才なんだけれど、
盛大にこける場合もあるので、天才ではなく天才肌みたいな印象ですね。