『雑音領域』は1994年にPC98用として、D.O.(ディーオー)から発売されました。
当時流行の館ものとマルチストーリー・マルチエンドADVを、グラフィック:広崎悠意、シナリオ:広崎悠意でやってみたらこうなった。
良くも悪くもそれに尽きるのだと思います。
<概要>
ドライブ中に山奥の洋館に迷い込んでしまった主人公と義妹の真理子。
早く館を去ろうとする主人公に対し、義妹は何故か館を離れようとしない。
狂気の渦巻く館での滞在を余儀なくされた2人は、無事脱出することができるのか。
少年時代の記憶を失っている主人公と洋館の人々の関係も複雑に絡み合い、物語は始まる・・・
という感じの作品ですが、とにかく冒頭に書いたような作品ですので、広崎ファンで館ものが好きなら間違いなく買いだし、そうでないなら買わないだろうなってゲームでしょうね。
<感想>
ストーリーはホラーとか狂気とかいろいろ該当しそうですが、いわゆる当時の館ものですね。
その後味の悪さといい、広崎さんの良さが存分に出ているかと思います。
当時の館ものの中でも屈指の出来だったのではないかと。
広崎さんの代表作である『妖獣戦記』シリーズ(93~95)はS・RPGですし、後に出る『虜』シリーズ(96、97)は調教SLGです。
そうなると、どうしてもゲーム部分が無視できないですよね。
SRPGや調教SLGとかは苦手な人もいるでしょうし、もっと純粋に広崎さんの作るストーリーを堪能したいよって人も結構いると思うのですよ。
そういう人には、このゲームは最適な存在と言えるのではないでしょうか。
<グラフィック>
もちろん、広崎さんはシナリオだけでなくグラフィックも担当しています。
『雑音領域』はストーリーそのものというよりも、作品全体の持つ雰囲気が最大の魅力なのだと思います。
そしてその本作の持つ雰囲気は、広崎さん自身が描くグラフィック抜きには語れません。
絵柄自体は、近年の、特に萌えを求める人にはうけないかもしれませんが、非常に上手くて雰囲気も抜群でした。
回想モードとかで出てくる脳を持った姿は印象的で、いまだに覚えていますよ。
<ゲームデザイン・システム>
細かいテキストや整合性の点で若干難はあったかもしれませんが、それでもここまでなら、一応名作相当の内容だったかと思います。
しかし残念なことに、本作の場合、システム面に難がありました。
まず、基礎となるゲームジャンルはノベル系のADVであり、選択肢により物語が次々に枝分かれしていく、この頃多かったタイプの構造です。
ちなみに、ED数は18個ありました。
ここまでなら他社の作品と変わらないのですが、何か妙にとろいし、セーブは限られてるし、そのくせ無駄に難しいし・・・
難易度が非常に高いというのは人によっては長所にもなりえますが、繰り返しプレイを強いられるゲームでその繰り返しがきついというのでは、やってて結構ストレスがたまってしまいますし、ストーリーやグラフィックの良さから来る雰囲気もぶち壊してしまいます。
トータルで考えると、この作品にとってはマイナスに作用していたように思います。
<評価>
そういうわけで、上述のとおり、名作級の長所もあるけれど、短所もあることから、総合では良作ってところでしょうか。
う~ん、まぁ、本当は名作扱いでも良いと思うんですけどね。
十分それだけの内容はありましたし、1年早ければ間違いなく名作扱いだったでしょう。
ただ、94年からはアダルトゲームの全盛時代で、強烈な個性を持った名作が一杯あったんですよね。
今となっては非常に懐かしく感じる館ものも、当時はいろいろありましたし。
そのため、相対的に評価が下がったって感じです。
限りなく名作に近い良作と考えてもらって良いでしょう。
ちなみに、本作は後にリメイクされていますが、私は全くプレイする気がしません。
このゲームは広崎さんの絵があってこそだと思いますので、萌え絵でやられたら雰囲気ぶち壊しじゃんよって思うんですよね。
何でもかんでも萌え絵にすれば良いってものでもないだろうに・・・
と、リメイク版のパッケージを見かけるたびに思うのです。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2024-05-08 by katan
コメント
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はじめまして。いつも楽しく拝読させてもらってます。
膨大なレビューとコラムには感心させられております。
>萌え絵でやられたら雰囲気ぶち壊しじゃんよって思うんですよね。
まったくその通りですよね……。
妖獣戦記のリメイクを見た時もぶっ飛んでしまいましたよ。
しかも声は前のをまんま使ってるわけで、幻滅どころか怒りすら湧いてきましたから。
そんなことするなら、素直に旧作を現行Windowsでリメイクすればいいのに。
そうなら即買いなんですがね。
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>>沢村さん
はじめまして、コメントありがとうございます。
妖獣戦記のリメイクも残念でしたね。
あれも雰囲気ぶち壊しでした。
なので、最初のwindows移植版は絶対に手放せない感じです。
リメイク作品は細かい操作性だけ今風にアレンジしてもらえれば、他は全部そのままで良いのにと思うわけでして。
それなのに下手に手を加えられてしまっているのが多いので、残念に思うことが多くなってますね。
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>メガドラさん
攻略王を見ると、確かに95年1月になっているようですね。
ただ、あの本は、攻略情報は確かですが、他はわりと間違いもあったように思います。
私の普段参考にしているリスト表や他の書籍ですと、94年12月16日発売になっていますね。
ちなみに、PC9821版兼TOWNS版として、CD版も発売されています。
そちらは95年2月の発売で、音声が付いているそうですが、私は未プレイです。
失礼しました。
PC98のソフトをリアルタイムでやっていないこともあり、どの情報が正しいのか判断かつかないものでm(_ _)m
私も一つの本で、情報を判断してはいけないですね。
おそらく、katanさんはこれだけ多くの作品を掲載されているので、発売年表とか分かる資料をお持ちではあると、なんとなく察しがついたのですが、余計なことを発言してしまいました。
申し訳なかったです。
PC9821版とTOWN版の情報まで調べてくださり、ありがとうございました。
>メガドラさん
いえいえ、全然お気になさらず。
最初からレビューとかしようって考えてプレイしている人と違い、当時の私なんて漫然とプレイしていただけですし、昔過ぎて記憶もどんどん薄れていますので、良い記憶喚起になりました。
アダルトゲーム業界の困ったところは、市販の書籍に誤りが多いことなんですよね。
それでも、攻略王の攻略情報自体はとても参考になるし、関連書籍の中では、極めて良質な部類なんですけどね。