『PHOBOS -フォボス-』は1992年にPC98用として、姫屋ソフトから発売されました。
ブランド2作目であり、当時を代表するストーリー重視の作品でした。
<概要>
ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。
ストーリーは近未来を舞台にした、SF風味の探偵ものとなるでしょうか。
設定としては火星への植民化が進み、そこから100年が経過。
その火星移民が扱いに不満を抱いて独立戦争をしかけたものの、現在は停戦状態にあります。
舞台となるのは東京で、停戦後の荒れた状態となっており、イメージ的にはサイバーパンクな感じと言えるでしょうか。
主人公は元宇宙軍特殊部隊に所属していた軍人でしたが、今は東京でアーマロイドと呼ばれる美人のアンドロイドを助手に従え、探偵のようなことをやって生計を立てています。
ある時、主人公のもとに軍人時代の上司である大佐が訪れ、大佐の信頼する部下であり同時に主人公の戦友だった男が軍の機密を持ち出したので、期間内に探して欲しいと依頼してきます。
<感想>
本作は『バクタ』(1992)に続く、姫屋ソフトの2作目になります。
こうしてゲームブログを書くようになって知ったのですが、結構姫屋ソフトのファンって多いんですよね。
まぁ単にここを訪れる人の中に姫屋ファンが多いだけかもしれませんが、私自身は必ずしも姫屋のソフトを高く評価しているわけでもないので、ファンに心地良い場所とも言い切れないわけでして。
そのため、やっぱり単純にブランドのファンが多いのかなと思った次第です。
その姫屋ソフトの作品というのは、一定の狭い期間内であれば似た傾向の作品が続くのですが、時期によって大きく傾向が変わることもありました。
たとえば1993年以降ですと、短くて中身がスカスカで叩かれることもあったけれど、アニメーションとグラフィックに関しては抜群という作品が多かったです。
また、オムニバスに力を入れていた時期もありましたね。
そして、姫屋というと馴染みの薄い人もいるかもしれませんが、『EVE バーストエラー』のシーズウェアなら知っている人も多いでしょう。
PC98末期のシーズウェアは剣乃さんの作品の功績もあり、非常に勢いがありましたからね。
そのシーズウェアは、姫屋のアダルトゲーム専門ブランドになります。
姫屋自身も元々はアダルトゲームを出していたものの、シーズウェア発足後は、姫屋名義の作品は一般ゲー中心になります。
かように時期によって印象の変わりうるブランドなのですが、デビュー作と本作の、つまり92年に発売された2作品は、安部さんがシナリオを担当した作品であり、ストーリー性の高い作品でした。
ぶっちゃけ92年の2作品と以後の作品は、別会社かと思えるくらい全然違って見えたものです。
というわけで、本作はストーリー重視の作品であり、ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。
作風というかシナリオにおける系譜みたいなものとしては、個人的には蛭田~安部~剣乃~ってイメージですかね。
もっとも、蛭田さんや剣乃さんはシステム面での工夫も行い、ゲームデザイナーとしての側面が大きかったのに対し、安部さんは純粋にシナリオだけで勝負といった感じで、そこでゲームデザイン面を重視するユーザへの訴求力に差が生まれ、後の知名度にも影響していったように思います。
とはいえ、新しいシステムを生み出さなかったというだけであり、安部さんも蛭田さんや菅野さんと同様に、コマンド選択式の使い方やテキストが非常に上手い方でして。
つまりテキストそのものの楽しさであるとか、コマンドを繰り返して行った時の変化であるとか、そういう部分が良かったんですね。
言い換えるならば、ストーリーそのものの縦軸の部分よりも、途中の遊び心とか脇道にそれる横軸の広がりが素晴らしかったのです。
その安部さんの魅力ないし特徴を世に示したのが『バクタ』であるならば、本作は『バクタ』よりも縦軸の部分、即ちストーリーそのものを強めてきた作品でした。
もっとも、そのストーリーの評価ないし印象は、プレイヤーにより異なるかもしれません。
横軸の広がりという従来の長所に加え、本作では縦軸のストーリー性を強化してきたわけですから、より一層素晴らしく思えた人もいるでしょう。
本作は上記のように、主人公の戦友を探すことになるのですが、荒廃した都市内で動き回るだけでも雰囲気が良かったですし、次第に賞金稼ぎや中華系マフィアや巨大企業が絡んで事態は複雑になり、刺激や緊張感も途切れません。
その一方で、戦争の記憶に苦しむ主人公の葛藤も描かれており、この時期の作品でここまで主人公の内面に踏み込んだ作品もなく、ストーリー重視作品としては、この時期では最高峰にあると言えるでしょう。
度々書いていますが、『同級生』(92年12月発売)は偉大な作品だけど、『同級生』からシナリオゲーが始まったとか言い出す人って、こういう当時のストーリー重視の作品を何もやってないんだろうなって思います。
本作をプレイすれば、誰が見たってストーリー重視って思うでしょうに。
まぁ『同級生』にしろ、後の葉鍵にしろ、自分が初めて触れた作品から全てが始まった的に決めつけるような、そういうニワカ層ってのは何時の時代もいるってことなんでしょうけどね。
少しずれてしまいましたが、ストーリー性の強化により、『バクタ』以上に楽しめた人もいて不思議でないし、一定の割合は存在すると思います。
ただ、異なる考え方も十分理解できるわけでして。
つまり本作は、縦軸も横軸も頑張ろうとした作品ではあるけれど、ライターの良さは横軸部分で発揮されることから、本作は絶対的な強みでない部分の割合が増えたといえ、総合的には前作ほどではなくなったという考えですね。
本作は、途中までは非常に面白かったのですが、ラストの方で少し性急にことを運びすぎていまして。
個人的には、もう少し丁寧にじっくり掘り下げて欲しかったと思いました。
大事な場面で淡泊に進行するものだから、もっと描写して欲しいと思うし、ライターの魅力は横軸部分でこそ発揮されるのだなと思ったものです。
特に本作の場合、事件としては解決しているのだけれど、主人公の負っている心の傷なんかを考えると、考える程にバッドエンドのような後味の悪さも残るわけでして。
根っこの部分では、まだ終わってないよねというような・・・
まぁ、あえて余韻を残すことで印象付けようとしたのであれば、それはある意味成功しているのかもしれませんが。
とりあえず非常に印象深く思う人がいる一方で、ハッピーエンド至上主義みたいな人には合わないのかなと。
<評価>
総じて、どの部分も高水準な作品だとは思うのですが、得意とするところと強調した部分が少しずれるというか、それにより決定的にここがと言えるポイントがないため、トータルでも良作としておきます。
安部作品に関しては、本作もそうなんだけれど、自分自身は特別に好きってほどでもないのですが、凄く好きな人がいるのも分かるなって感じですかね。
アダルトゲームって、今でも売上はグラフィックに一番左右されますし、シナリオライターの影響って本当に微々たるものでして。
それでもネットが普及し情報が共有しやすくなったゼロ年代以降は、シナリオライターの情報であるとか、その人の作った作品とか分かりやすくなりましたので、それで名前を憶えやすくなったと言えるのでしょう。
しかし、それ以前は年が経つことで風化し名が残りにくく、シナリオゲーやライターに関するコラムなんかを見ても、それってゲームデザイン部分での功績が大きいよねって思うものばかりで、純粋なシナリオゲーないしライターの名を見る機会はほとんどありません。
純粋にシナリオだけに注目するのであれば、91年のアイデスのSF系(『ナイキ』、『コズミックサイコ』)とか、92年の姫屋の安部作品(『バクタ』、『フォボス』)とか、94年から95年の三峰作品(GAOGAOシリーズ、『夢幻夜想曲』)とか、不可欠な存在だと思うのですけどね。
もちろん、詳しい人なんかだと、ぉいぉいそれだけじゃ足らねえだろって、もっといろいろ追加できるでしょうが、とりあえず上記の作品辺りは最低限必要だと思うんですよね。
ランク:B-(良作)
Last Updated on 2024-08-25 by katan



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