『15歳だった―』は2007年にWIN用として、ああかむから発売されました。
ちょっと複雑なタイプが好みの、ストーリー重視の人にオススメの作品ですね。
<概要>
まず最初に、本作のオリジナルタイトルは『15歳だった―』なのですが、ダウンロード版ではタイトルが『X5歳だった―』に変更されています。
ちょっと分かりにくくなっていますので、購入する方は注意ください。
ゲームジャンルはノベル系ADVであり、公式では「少女告白ミステリーノベル」とあるように、少女の視点を中心としたミステリーものになります。
商品紹介及びあらすじは以下の通り。
まだ幼く見えると言ってもいい、一人の少女。
「まゆ」と名乗る彼女は、出会い系サイトで知り合った男「みくろ」に援助交際をもちかける。
だが、待ち合わせ場所に現れたのは、少女よりもさらに年下の―少年だった。
急速に惹かれあう「まゆ」と「みくろ」。
しかし、少年は、急激に成長してしまう奇病のために余命いくばくも無く・・・
―と、語る彼女の手記は、真実か?狂言か?妄想か?
周辺の証言は、その手記を裏切るような無惨な現実を赤裸々に語る。
手記と証言、相矛盾する2つの語りの間に挿入される、少女の性体験。
真実を知るのは、ただ一人の人物のみ・・・
主演・まきいづみ/吉澤友章・画の豪華スタッフによる本格エロティックミステリー。
<ゲームデザイン・ストーリー>
本作はノベル系のADVなのですが、少し変則的です。
本作は主人公「まゆ」の真実に迫るミステリー作品であり、具体的には「少女の手記」、「少女の目撃証言」、「少女の体験」が用意され、この3つを順番に見ていくことになります。
「少女の手記」は、主人公である少女が書き記したものであり、少女の視点で語られます。
「少女の目撃証言」は、事件を調べるライターが調査した結果であり、第三者による主人公に対する証言になります。
「少女の体験」は、少女が体験したとされる、主にHシーンになるわけで、ここがある意味、最もオーソドックスなエロゲっぽい部分なのでしょう。
という様に、本作は事件を異なる角度から多角的に見ることで、少しずつ事件の真相に迫っていく物語になります。
その中でも、特に良かったシナリオは、「少女の目撃証言」になるでしょうか。
一般論として、真相は一つなどと言われることもありますが、同じ物事でも、人によって見え方が異なるものです。
また、嘘とまではいかなくとも、人は自分に都合の悪いことは伏せておくものです。
本作には多数の登場人物がいて、証言をするのですが、皆、自分に都合の悪いことは言わないんですね。
言っていることは嘘ではなく事実ではあるので、どの証言も聞いている限りでは筋が通って見えます。
でも、都合の良いような所だけを語っているので、違う人の証言を得ることにより、同じ事実でも異なる意味合いになったり、それにより更に真相に近付いていくのです。
これに「少女の手記」が加わると、更に厄介になるわけでして。
「少女の手記」と周りの証言も、当初は話が全然食い違っているように見えます。
それが少しずつ真相が判明していくことで、やがて一つにまとまっていくのは見事であり読み応えがありましたね。
「少女の目撃証言」の部分では、様々な年代や性別、環境の異なるキャラたちが証言します。
読んでいて上手かったなと思えたのは、そのキャラに応じてセリフや雰囲気をキッチリ変えることができていたことです。
アダルトゲームの場合、どうも最近は、ストーリーとシナリオを混ぜて語られることが多いように思います。
元々シナリオ重視云々と言い出し始めた人たちは、ライターのテキスト(シナリオ)を好んだからなのですが、それが次第に転化していき、ストーリーの良いものをシナリオ重視と呼んだりしますから。
シナリオとテキストも本来は異なりますが、ノベルゲーでは同義に扱って良い場合が非常に多いものの、ストーリーとシナリオを混同するために、その結果としてシナリオとテキストを分けて考えられていたりすることもあります。
まぁ、そういうことが多いので、ちょっと余談になってしまいますが、安易にシナリオ重視で判断しますと言うような、あまり分ってないような人のすすめるシナリオ重視作品とやらで、自分が本当に楽しめたケースはほとんどなかったりします。
話を戻して、ノベルゲーにおけるシナリオの上手さということで、ここでは更に絞ってテキストの良さという点だけを捉えてみますと、キャラの年齢・性別・環境により文体を書き分けられるというのは、単純に上手いと言えるのだと思います。
シナリオ重視作品だとか、メッセージ性が強い作品と呼ばれるエロゲも、既に幾つもあります。
しかし、どのキャラにも同じようなことを言わせたり、どのキャラからもライターの顔が見えてくるような、ライターの主張や顔が前面に出てくる作品も多いわけでして。
そういうのがエロゲ市場ではメッセージ性が強いとかって言われやすいですが、いやいや違うだろうと。
上手い人は間接的にでも伝えたいことを伝えられるものだし、キャラごとの書き分けがきちんと出来ていないテキストは駄目だろうと、そんなのでシナリオ重視なんて言われても笑い話にしか見えないよと思うのです。
本当にシナリオ重視と言う人であれば、本作のような作品こそ褒めると思うのですけどね。
もっとも、本作のシナリオは上手いのだろうなと思いつつも、個人的にはテキストだけを特別に重視するということはありません。
もっと大きくストーリーを重視したり、起伏のあるイベントを好むものですから。
そのような観点からは、実は本作はそんなに上手くなかったりします。
つまり淡々と事件の真相に迫っていくので、何か本当に黙々と調査報告書を読んでいる気にさせられるんですよね。
これはプレイしていない人でも想像できると思いますが、幾ら文章が上手くても、本当の事件の報告書を読んでいて、ワクワクできますかって話なんですよね。
まぁそれが好きって人もいると思いますが、そうは多くないでしょう。
本作のライターは個々のシナリオ・テキストは非常に上手いのだけれど、良いストーリーテラーではないなというのが、個人的な感想ですね。
・・・まぁ、でもだからこそのエロなんだろうなぁ。
エロが多いのに流し読みをしていた私の楽しみ方が単に間違っていたのであって、本作は頻繁にエロがあるのだから、エロを楽しみながらプレイすれば、何ら問題はなかったのかなと。
それと、本作は事件の真相に迫るということで、物語上のジャンルとしてはミステリーになります。
そして作中では、トリック名がネタバレにつながるような、あの手法に近いものが用いられています。
この手法を用いたゲームは、推理小説を読まない人には絶賛されやすいですし、中にはゲームでしか表現できないなどという頓珍漢な意見すら出てきますが、何であれ初めて触れると衝撃的に見える類のものだと思います。
私の場合、小説で既に何度も触れていることもありますが、ゲームで使用されているケースでは使い方が不自然で、単純にその出来の点で駄目だろと不満を書くケースが多いです。
本作は、その観点からはさほど不自然でもないので、その意味でのマイナスはありません。
しかし、そもそも単純に本作で使う必要性がなかったのかなと思います。
本作は、そのままでも時系列の異なる内容を多角的に捉え、少しずつ判明していくという複雑な構造を採っています。
そこに、この手法まで加わるために、更に複雑で分かりにくくなってしまうのです。
この手法を使いたいなら、他の部分はシンプルに分かりやすくすべきでしょう。
バラバラのピースを組み立てる本作の構造であれば、そこにこの手法を混ぜる必要性もないでしょう。
両方を混ぜたことにより、両者の良さが消されると共に、徒に複雑になってしまっただけになった点は少し残念でした。
個人的には、単純に最初は分らなかった物が、多角的に語られることで少しずつ姿が浮かびあがってくるというだけでも、十分に面白くなったと思うのですけどね。
どうにも凝りすぎて、かえってマイナスに作用したようにしか思えません。
まぁ評価上でマイナスはないですが、シンプルだったら、もっと高評価だったということですね。
とりあえず、そういう作品なのでね、流し読みすると一気に分らなくなり置いて行かれます。
これからプレイする人はメモを取るくらいの意気込みで、普段よりもじっくり読んだ方が良いでしょう。
そうでないと、難解でよく分らんから再プレイって、二度手間になりかねないですから。
以上を全部ひっくるめると、シナリオは上手いけど構成にやや改良の余地ありと。
それでもストーリーも非常に楽しめましたし、全体としては読み応えがあって良かったですね。
なお、本作は回想モードにエピローグがあります。
いや、むしろ、このエピローグこそが必須なのでさり、そこまでプレイしないと、本作の本当の意味は分からないでしょう。
そのため、絶対に本編クリア後に回想シーンでエピローグを見てください。
それを見ると見ないとで、評価は一変しますから。
<感想>
主人公の少女の声は、まきいづみさんが担当しています。
音声は主人公の分だけですね。
まだに、まきいづみさんの独壇場です。
声優については好みも各自あるので、一概に私の意見をという気持ちもないですが、個人的にまきいづみさんのファンでもあるので、非常に満足できましたね。
いつもとはちょっと違った雰囲気でもありますし、ファンならオススメです。
原画は吉澤友章さんで、『黒の断章』とかの方ですね。
今の主流の絵柄ではないので好みが分かれるかもしれませんが、綺麗な絵と言えると思います。
Hシーンとかのエフェクトは、最初はちょっとビックリしましたし、これが良いという人もいるとは思いますが、個人的には途中からちょっと鬱陶しかったかな。
<評価>
上記以外のマイナス点としては、細かいシステム周りが少し不便なことがあるでしょうか。
ボリュームは少なめで数時間で終わってしまうものの、価格からすれば相応だと思います。
まぁ、それでなくても複雑で難解と言われやすのに、これ以上ボリュームを増やしても理解できない人が増えるだけかもw
つまり本作は、短編向きの内容を水増しせずにキッチリ短編で終わらせているので、何時間以上なければ駄目って人以外は満足できると思います。
しいて言うならば、誰でも理解できるように、もう少し丁寧に説明をした方が、より万人向けになったのでしょうけどね。
どうしても分かりにくさ・難解さの点で人を選ぶことは否めないのでしょうね。
総合では分かりにくい部分もあることから最初は良作としたのですが、本作の稀な面白さを重視して名作とします。
本作には、萌えも燃えも恋愛も厨二も何もないのでね。
こういう作品は、今の商業アダルトゲームでは出せないのでしょう。
PC98時代なら、こういう雰囲気の作品もあったのですが、今は同人でしか無理なのだと思います。
そういう意味では、同人らしい尖った作品と言えるでしょうね。
とりあえず、まきいづみファンにはオススメなのでしょうが、ファンなら、たぶん放っておいても、その内辿り着きそうですからねw
それ以外の点で言うならば、萌えも燃えも恋愛も厨二もないので、今のアダルトゲーマーの主流にはうけない作品かなとも思いますが、シリアスな物語が好きで本当の意味でシナリオ重視な人、なおかつ難解とか言われそうな作品も楽しめる人であるならば、オススメできる作品だと思います。
個人的には、もっと知られて良い作品だと思いますし、埋もれさせるには惜しすぎる作品だと思いますね。
ランク:A-(名作)

Last Updated on 2026-03-07 by katan


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