ZAPPINK

1993

『ZAPPINK』は1993年にMAC用として、KUKIから発売されました。

タイトルからも想像できるように、ザッピングを扱った作品でしたね。

<感想>

この作品、ソフト自体はまだ持っているものの、現在はMAC用のソフトを動かす環境が手元にないため、もう細かいことは思い出せません。
したがって、なんとなく覚えていることをもとに、話をすすめたいと思います。

さて、私は実写のAV業界には詳しくないのですが、KUKIというのはAV業界では有名なところだったみたいでして。
そのKUKIが1993年に、アダルトゲーム業界に参入してきます。
後のWIN95ブームの頃にも、実写のアダルトCD-ROMは多数発売されましたが、AVのダイジェストのようなものが多く、確かにソフトウェアではあるものの、ゲームとはいえないものが多かったです。
しかし、これはアダルトゲーム全般に言えることですが、ゲームは常に全ての面で進化しているわけではなく、ある面では進化していても、ある面では退化することも、よくあることなのです。
二次元のエロゲも、CGの色数やボリュームは増えましたが、ゲーム性やストーリーの多様性は、ゼロ年代以降なくなっていく一方ですしね。
同様に、実写エロゲに関しては、後の作品は高画質で大ボリュームにはなりますが、ゲームとしての独創性などは、実はKUKIなどが参入したての頃の方が優れていたのです。

KUKIは、当時先端だった、インタラクティブムービーを幾つも製作しています。
本作も、広義ではインタラクティブムービーなのでしょうが、他作品がヴァーチャルリアリティを模索したのに対し、この作品では、ザッピングに挑んできました。
具体的には、3人の女優のからみに対し、それぞれ用意され流れている複数の動画を、切り替えてみることができるのです。
これにより、普通のAVでは見ることのできないような、CD-ROMとPCだからこそできる、新たなエロの可能性を追求したのでしょう。
AVでやれないからこそ、PCでやるわけで、そういう姿勢は、私の非常に好むところでもあります。

さらに細かいことを言えば、そもそもザッピングというのは、元々はゲーム用語ではないのでね、その言葉自体には特に意味はないのかもしれません。
ただ、ADVにおけるザッピングシステムって、その構造自体は80年代からあるものの、なかなか言葉が浸透していなかったわけでして。
理由を挙げるとするならば、PCゲーはそもそもPCを持っている人自体が稀で、浸透するも何もあったものじゃないって感じで、ゲーム機のゲームに関しては、ユーザーの大半が子供であり、細かいシステム名まで気にする人が少なかったと、おそらくそういうところなのでしょう。
アダルトゲームにおいても、それこそ95年の『EVE バーストエラー』とか、その辺の作品が出てきたことで、ザッピングとは何ぞやという意識が、ユーザーの中に生まれたように思います。
ただ、『EVE バーストエラー』とかの有名作の多くが、マルチサイトとザッピングを併用した構造であったことから、大分後になっても、両者を混同している人が多かったわけで。
そのようなシステムですから、93年のこの時点でメインに据えて、タイトルもそういう風にしたということが、どれだけ時代を先駆けていたか、容易に想像できるのではないでしょうか。

<評価>

総合では、良作としておきます。

この時期のKUKIは、新時代に向けて、様々な挑戦をしていました。
今のエロゲユーザーの大半は二次元にしか興味がなく、エロゲの歴史に注目する人も、多くは二次元にだけ注目するため、そのために、こういう作品の存在は忘れられる一方ですが、実写エロゲだって、意欲的な作品は存在したのであり、アダルトゲーム史を振り返るうえでは、絶対にかかせない事情といえるように思うのです。

ランク:B(良作)


Last Updated on 2024-09-23 by katan

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