『山村美紗サスペンス 金盞花京絵皿殺人事件』は1992年にPCE用として、ナグザットから発売されました。
メーカーが異なるので一概にはシリーズと言えないのですが、一応山村美紗さん原作のADVとしては4作目になる作品でした。
<概要>
ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。
ストーリーを簡単に説明しますと、主人公は女性の雑誌記者で、偶然にも殺人事件の現場に居合わせてしまったことから、取材の名目で事件を調べるって流れになりますね。
<感想>
まずストーリーに関しては、さすがに山村美紗サスペンスということで、基本的にはしっかり纏まっているし、万人向けで楽しめるでしょう。
ただ、あまり派手な盛り上がりとか、ゲーム的な事件の濃さというものはなく、その反面、舞台となった京都の景色や説明は楽しかったわけで(というか地元だったんで懐かしいとなるのだけれど)、よくある2時間ドラマの山村美紗サスペンス的に楽しむってのが、素直な遊び方なのでしょうね。
その肝心の京都の景色を表現してくれるグラフィックなのですが、これはとても綺麗でしたね。
ファミコン時代に一杯あったADVが正常に進化していたら、92年頃にはこうなっていただろうと想像しうる、代表的な作品でした。
当時の主流の機種たるSFCは、ADVが激減してしまいましたし、ノベルゲーとかの登場でグラフィック面はむしろ退化しました。
そのため、この時期って、ゲーム機でのADV的には暗黒期もいいところなのですが、その中にあってナグザットは孤軍奮闘していたように思います。
もちろん背景だけではなく、キャラも目パチ口パクに加え部分アニメーションもあり、ここら辺はいつものナグザット作品でもあるのですが、他社に競合するところが少ないだけに目立っていました。
キャラデザもファミコン時代からの延長上で、それを更に見栄え良くした感じで、良くも悪くも普通な地味な感じではあったんですけどね。
これがかえって落ち着いて見えるわけでして。
PCEのADVは、以後はいわゆるギャルゲー色が強まりますし、ギャルゲー色に苦手意識がある人でもこれなら問題はないでしょう。
一応、本作にも、主人公のシャワー姿というサービスシーンもあるのですけど、これは2時間ドラマのお約束的なものですからね。
っていうか、個人的な感想としては、下手にアニメ風とか可愛くしてないキャラだけに、かえって色っぽく見えたりして何かこうグッとくるものがあったりも。
加えてセリフは音声付でしたので、演出面全般は十分に長所と言えるでしょうね。
問題があるとすればシステム面でしょうか。
基本的にはコマンド選択式のADVになります。
ここは良くも悪くも普通って感じでした。
しかし本作は、一部でADS(アクティブ・ディスカバリー・システム)と呼ばれるものを使用していて、このシステムがネックだったのです。
名称自体は独自のものなのですが、具体的にいうと、主人公の姿が画面に表示されて、カーソルで指示したところに移動したり調べたりするわけで、つまり海外のPCゲーに多いP&C式のシステムなわけですね。
このシステムは、非常に面白いものも多いし、基本的には好きなのですが、面白く作るのは意外と難しいことと、ゲーム機のパッドに向いていないという難点があります。
挑戦しようとした意欲は買いたいところなのですが、本作では、あまり上手く作れておらず、徒にテンポが損なわれただけで、多くの人がプレイにストレスを感じてしまったのではないでしょうか。
ADVも、最近は3Dの空間内を移動するものも増えてきていますが、時折無駄に移動させては移動だり~と叩かれ、その逆に演出としてOKと言い出す人もいるゲームが出てきますからね。
今も昔も気の長い人でかつ初心者ならば、案外楽しめる路線なのかもしれませんけどね。
<評価>
そういうわけで、グラフィック・サウンドの演出面のプラスを、ゲーム部分の操作性のマイナスで打ち消してしまい、総合では良作ってところでしょうか。
もうちょっと快適に遊べたらと思うと、そこだけが勿体無かったです。
基本的には地味な作品なのですが、こういうゲームが今はなくなりましたからね。
ときどき妙に懐かしくなる作品でもあります。
ランク:B-(良作)
Last Updated on 2024-08-26 by katan
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