VISION2

1991

『VISION2』は1991年にPC98用として、M.I.Nから発売されました。

ストーリー重視の三角関係モノであり、映像の使い方が印象的な作品でしたね。

<概要>

はじめに、本作は『VISION』の続きですので、まずはそちらからお読みください。

ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。

本作は『VISION』から直接の続編となっていますが、前作がある意味エロ目的の作品であったのに対し、今作は完全にストーリー重視の作品となっていることから、作風としては全然異なったものになっています。

さて、前作で同級生のアリサと恋人になった主人公。
クラス替えで別々のクラスになってしまったところ、新しいクラスには幼馴染の女の子がいました。
その子は幼稚園時代に一緒だったものの、一度他所に引っ越し、また戻ってきたのです。

ストーリーのジャンルとしては、恋愛モノ、具体的には主人公が恋人と幼馴染との間で揺れ動くというもので、二股とか三角関係モノといえるのでしょう。

<感想>

ストーリージャンルについて補足するとすれば、本作が発売されたのが91年であるということでしょうね。
例えば、90年代後半以降のWIN時代しか知らないような人が書いたエロゲの本とかだと、ストーリー重視の作品は90年代後半に入って出てきたとか、恋愛モノも92年の『同級生』からみたいな表記があります。
しかし、私のこれまでの記事を読んでくれた人ならば、それが完全に誤りであることは理解されていると思います。
ストーリー重視としか言えないような作品も、それこそ80年代後半のPC88時代から何本も発売されているからです。
また、恋愛モノについても、『同級生』以前から何本も発売されているのです。

もっとも、恋愛モノに関しては、80年代や90年代頭の商業ADVにおいては、作品数が少なかったのも事実ではあるのでしょう。
商業ADVは推理モノやSFモノが多かったですし、美少女ゲームにしても、エロとの兼ね合いもあり、ナンパゲーム的な作品が多かったことから、本格的に恋愛モノと呼べる作品は少なかったのです。
じゃあ、純粋なる恋愛モノで、ストーリー重視の作品があるとすれば、一体どこになるのかというと、おそらくその答えは当時の同人ゲームになるのでしょう。

今の同人ゲームも、商業には少ないジャンル、商業ではマニアックとされるジャンルが多く存在しますよね。
つまりは、その時期その時期で、マイナーとされるジャンル、商業で商品化することが難しいと思われるジャンルが、同人では多くみられるのであり、それは今も昔も変わらないということです。
恋愛ゲームは、今でこそアダルトゲームの主流ですが、当時は決して主流ではなく、マイナージャンルでしかありませんでした。
だったら、当時の恋愛ゲーを探すならば、同人を探すべきなのであり、実際に当時の同人作品の中には、エロなしも含めると、本作のような恋愛モノが幾つも発売されていたのです。

少し余談になりますが、90年代後半からエロゲに入り、エロゲの歴史的なものを語る人は、90年代後半以降に関しては、同人もひっくるめて語ることが多いです。
それなのに、それより前の時代については、当時の同人については一切触れることがなく、恋愛モノもストーリー重視(シナリオ重視)も、まるで存在していないみたいに書いているから、私としては、事実と全然違うと言いたくなってしまうわけなんですよね。
まぁ、書く方だけでなく読む方にもそうなんですけどね。
偏った本を読んで、俯瞰的に書かれているだのという書評を見ると、あぁこの人全然見る目ないなと思ってしまうし、そういう人がSNSとかで大々的に間違ったことを広めると、ますます誤解が広がるだけですから、正直迷惑に思ってしまいます。

さて、本作は、ストーリー重視、或いはエロゲユーザー的な表現を用いるならば、シナリオ重視の作品となるのですが、肝心のストーリー自体の出来は、普通と言わざるをえないのでしょう。
全てはクズで優柔不断な主人公のせいですし、一人で勝手にグダグダな関係にしただけの内容ですしね。

もっとも、そういう内容の作品が、後のエロゲでは一部ユーザーに高く支持されているようなので、そういう人たちには受けやすいのかもしれませんけれどね。
私は、あまりある作品がある作品に影響を与えたとか、そういう表現は好きではないので、ほとんど使っていません。
しかし、該当する二作品間に非常に似た部分があり、そのことに対し、先の作品が後の作品に影響を与えたと表現して良いのであれば、本作は『君が望む永遠』とか、WAやWA2とかに影響を与えた作品ということもできるのでしょう。

<グラフィック>

まぁ、影響云々の話は私は嫌いなので、本作に対する私の評価には全く関係していませんけどね。

だからストーリーだけであれば、本作に対する私の印象や評価は良くはならなかったでしょう。
私が本作をプレイしていて非常に惹きつけられたのは、グラフィック、特にその構図や使い方にあったのです。

特に印象的な場面は、下の場面になるでしょうか。
アリサに黙って幼馴染とデートをしていたことがばれた主人公は、弁解しようとアリサに電話をします。
必死な様子で電話をかけるCGが表示され、電話の呼び出し音が鳴り続ける中、画面はアリサの家の中にかわります。
画面手前で鳴り続ける電話の音と、画面奥で無言のまま、家の中にいるのに出ようとしないアリサの姿。

この場面には、テキストは存在しません。
テキストは何もないけれど、二人の心境が、たった2枚のCGと効果音から、痛いほど伝わってきました。

この作品、発売自体は古いです。
しかし私がこの作品をプレイすることができたのは、発売から十数年以上経ってからのことでした。
その間、多くの新作をプレイしてきました。
今のエロゲはノベルゲーが大半ですが、近年のノベルゲーに対しては時々思うことがあります。
ノベルゲーの好きな人にその魅力を聞くと、テキストと絵と音が融合し、小説や漫画にはない魅力があるのだと、表現は多少異なれど、そういう内容の意見を聞くことが多いです。
しかしながら、本当にテキストと絵と音が融合し、一つの作品として昇華している作品はどれだけあるのでしょう。
特にシナリオゲーなどと呼ばれ、シナリオライターの色が濃い作品ほどシナリオばかりが強調され、絵や音がきちんと連動していない作品があったりします。
その場合、確かにテキストは面白いのかもしれませんが、小説や漫画にはないプラスアルファは存在せず、ただの高いだけの読み物となってしまいます。
それではノベルゲーとしての、一つの作品としての完成度としては低いと言わざるをえません。
残念なことに、そのように感じてしまう作品が増えているのも、事実ではあるのでしょう。

そんな中でプレイした本作は、古い作品であるはずなのに、たった一枚のCGの存在により、解像度が高く色数も多くて綺麗なはずの新作をプレイするよりも、よっぽど衝撃を受け、印象深い作品となったのです。

<評価>

少し悩みましたが、総合として名作と判断します。

確かに弱い部分もありますが、一つの作品として必要なはずなのに、近年のシナリオゲーに欠けやすくなっているものがここにはあったと。
この大きな特徴は評価されて然るべきなのでしょう。

まぁ、逆に、ソニアは絵で魅せることにこだわりすぎ、その後、絵以外の部分が疎かになっていくわけでして。
なかなか上手くいかないものですね・・・
私は作るわけでもないので、何も言えないところではありますが、各ブランドが方向性の異なるブランドからも学ぶ姿勢を持って、少しでも良い作品が増えてくれると良いですね。

ランク:A-(名作)

Last Updated on 2024-08-20 by katan

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